天才とは、一つの問題に深く没頭した結果、生まれるものなのだ『エンサイクロペディア』


今回紹介するのは

エンサイクロペディア

……大航海時代を経て、欧州の人々にとって発見の時代であった18世紀。
様々なものを収集し、分類する博物学は発展を遂げていました。
そして、フランスの植物学者であり数学者であるビュフォン伯の百科事典、博物誌エンサイクロペディアを編纂するのを手伝うというテーマのボードゲームとなります。

ゲーム自体はダイスプレイスメント(ダイスをワーカーとして配置することで効果を得る)ゲームで、変化する出目と色という変数が存在します。

テーブル配置図。
ちょっと場所は取る。


ゲームは共通のボードと個人ボードがあり、共通ボードはカードなどの置き場であり、ダイスを配置してアクションを行う場所となります。

上にはラウンドトークン……裏返すとそのラウンドのイベントが。

次段は専門家カード。
真ん中の「大学」にダイスを置くことで、専門家を雇うことができるのだ。

左右にもダイスを置く場所があり、右はお金を得ることができる「銀行」で、左は遠征の手助けとなる遠征トークンがもらえる「大使館」です。

その次が動物カード。
「学会」にダイスを置くことで、研究テーマ(手元に置く動物カード)を決めるのだ。

下に書かれているマスがカテゴリー(色は「大陸」)……左から「類」「食性」「生息環境」「気候」と高度な研究になる。

その下には探検のスペース。
研究テーマを決めたら実際に現地に行って、研究を重ねる……動物カードにキューブを置くことができる。
「遠征」は南北アメリカ、アフリカ、アジア、ヨーロッパ、オーストラリアの5地域に分かれています。

一番下が、遠征で研究を重ねた動物を発表する「研究発表」スペースとなっています。

一方個人ボードは、上段にダイス置き場、中央段に名声トラック、下段に獲得した専門家カード置き場(4スペースしかない点に注意……5人目がきたら、どれか1枚の上に重ねるため、その下は効果を失います)となります。


ゲームはワーカープレイスメントの派生であるダイスプレイスメントシステムとなります。
つまり、働く人ワーカーの代わりにダイスを置くのです。

マイラウンド各プレイヤーはまず……
ダイスを4個袋から引いてふる。
ダイスを自分のプレイヤーボードの上に置く。

この後で、あとはスタートプレイヤーから手番順にダイスを1個置いて、1アクションを行います。

この場合は遠征トークン3個の協力を取り付けたことになるのだ!!

「大使館」:遠征に役立つ(ダイス目に修正を与える)遠征トークンを得る…現地政府の協力大事!

ダイスの値により枚数が変わる。色は関係ない。

ダイスは何でもよい=弱いダイスしか取れないならここでスターとプレイヤーをとってしまうのもあり。

「銀行」:5コイン得る。出資ありがたい。加えてこのアクションを最初にしたプレイヤーが次のスタートプレイヤーに。

ダイスは何でもよい。

「大学」:専門家を得る。やはり有識者の意見は大事。

いろいろ効果が異なるので、だれを雇うのかが結構重要だ。
加えて研究発表のうち一番簡単な「大陸」カテゴリーの得点にもかかわる。その大陸の専門家の後ろ盾?

色が同じなら追加で遠征トークンも得る。

「学会」:動物カードを得る。何を研究するかはここで決める。

ダイスとカードは同じ色でなければならず、数字によって貰える名声点が異なる。

「遠征」:研究テーマを決めたら実地で調べるのだ!
ダイスはその大陸の色と同じでなくてはならず、ダイス目が大きければカードにおけるキューブ(調査コマ)も増える……カテゴリーが高度なほどこの「コスト」は多くなる(そしてカテゴリーに等しい数字の点数も入る)。

なお、早く探検に行けばより多く名声が増えるが、遅ければ遅いほどダイス目に修正が追加される……いち早く赴いて名声をとるか、研究が進んだ後から赴き実利をとるか……。

遠征トークンを使うのも有効。ダイス目と後発のポイントでいっぺんにキューブを置いていきたい!

「研究発表」:同じ色の動物カードに置くことで、その動物と同じカテゴリーの動物上のキューブを研究発表に置ける。
置いた動物は「参照動物」と呼ばれ、研究発表のメインの動物ということになります。
この置いたダイスの数字が大きければより、高度なカテゴリーから順に発表ができ、参照動物と手元の動物カード上の参照動物と同じカテゴリーのキューブを対応する研究発表マスに置くことができます(つまり、参照動物のダイス目に対応するキューブを置き、同じ気候、同じ生息環境、同じ食性、同じ類のキューブを置いてもうよい)……といったぐあい。
この例だと、オーストラリアの緑ダイス(2)でカテゴリーIIから発表……雑食のほかの動物と一緒にキューブを置きます。(その次は「類」)

ここは大きな目のダイスで、いっぺんにたくさん置きたいところですので、同じカテゴリーをたくさんそろえておきたい。

そしてキューブはその生物の研究カテゴリーのマスに置かれ、置いたコマ数につき記載の点数を得ます。

一番カテゴリーが低い大陸カテゴリーはキューブがありません……参照動物とキューブを1個でも置いた動物は裏向きにして大陸カテゴリーの研究としてわきによけます(ただし残っていたキューブは発表の場もなく手元に戻しますので、あえて置かないで取っていたほうが良い場面もあるかもしれません)。

加えて、キューブを置いたかどうかにかかわらず、同じ大陸の動物を裏返しにしてわきに置くこともできます(「研究発表」のチャンスが無ければいっそやったほうが良い場面も)。

また、「研究発表」をすることで「王家の封印」トークンがもらえます。

これは使用することで5コインを得るか、ダイス目に+5して色を変更する、もしくはラウンド終了時にもう1アクションを追加で実行することができる強力なもの。使わないで残してもゲーム終了時に4点になりますので、研究発表をたくさん行うという手も考えられます。

以上のアクションを駆使して「研究発表」をすることで点数を得ていくわけです。
つまり流れを要約すると……

研究する動物カードを決め……
探検に行った地域の動物カードにキューブを置き(なるべく1回の遠征で大量に=同じ大陸の動物カードがたくさんあると有利かな?)……
動物カードに載ったキューブを研究発表スペースに配置する(なるべく1回の研究発表で大量に……同じカテゴリーにたくさんキューブがあると有利かな?)ことで点数を得る……

という流れで、これをうまくやりくりするゲーム。

ここで……各アクションに配置するダイスなのですが、自分のダイスだけではなく他のプレイヤーのダイスも置くことが可能です!
ただし、他のプレイヤーのダイスを使った場合、その置かれた場所によってそのプレイヤーに「コイン2枚」「2名声点」「3勝利点」といったちょっとした恩恵があります(何もないスペースもあります)。
自分はいらないがほかの人が欲しいだろうダイスは今欲しい恩恵の場所に置くなどなどちょっとした駆け引きの場になります。

あと、いろいろな局面で得られる名声点は、得るたびに名声トラックを進め、通過したか止まったマスにボーナスが記載されていればそれを得ます……しかも端まで行ったらまた開始地点にもどります!
名声点もうまく使ていきましょう。

ゲームは6ラウンドで終了し、最後に各カテゴリーにあるコマの数/動物+専門家カードの枚数に応じた点数や、王家の封印やコイン数や遠征トークンに応じた点数も得ます。

……といった具合に、ルール自体は最初はちょっと戸惑うかもしれませんが、流れを理解すればそう難しい感じでもありません。
しかしながら、盤面に配置されたダイスとカードを見て……優先順位を考えながらダイスの配置をし、ダイスドラフトをしてダイスを置きアクションを実行していく駆け引きも悩ましいものとなっております。
アートワークも美しく、じっくり遊べる中量級のゲームとして、かなりおススメです。

エンサイクロペディア
プレイ人数:1-4人
対象年齢:14歳以上
プレイ時間:25分/人
製作:Holy Grail Games
デザイン:エリック・ドゥブス、オリヴィエ・メリソン
価格:8,000円+税

なお、こちらのテーマとなった『博物誌』は邦訳版が出ており、いまだその価値は色あせていません。

ビュフォンの博物誌―全自然図譜と進化論の萌芽 『一般と個別の博物誌』ソンニーニ版より
ビュフォン,ジョルジュ・ルイ・ルクレール【著】〈Buffon, Georges Louis Leclerc / ベカエール 直美【訳】 / 荒俣 宏【監修】
工作舎 1991年