舞台は秋革命で恐怖が支配することとなったウィンタータウンで、プレイヤーは恐怖政治を敷く冬陣営と、圧政を打ち破らんとする張る陣営に分かれて、この『物語』を作り上げていくことになります。
……というわけで今回紹介しますのは
ウィンターテイルズ:冬物語
です。
タイトルは玄冬記とかも候補に入りましたが谷村新司になってしまうし、冬物語だけだと焼き鳥とか恋しくなっちまうのでいろいろ悩んでこんなタイトルです。
ゲーム自体は冬の陣営と春の陣営に分かれ、順番にお話を語っていく形で進行します。
<<破>>
物語を作る上で重要なのは何か。
小池先生は言ったね、キャラクターだと!
冬陣営のキャラクターは;
マンジャフォーコ将軍やキャンドルウィック、キツネネコ(ネネで一文字になっております)、以上は「ピノッキオの冒険」より。さすがはイタリアメーカー。
このマンジャフォーコ将軍が秋革命により冬陣営の圧政を敷いてる指導者です。
キャンドルウィックはピノッキオとおもちゃの国にいたときに知り合っていますが、ロバに変えられた恨みつらみから、今や冬体制の密告者。
ピノッキをだましたキツネとネコは日本では絵本回収騒ぎを巻き起こした存在でしたが、いまや本当にお互い二人で一人の状態のキツネネコに。
白雪姫は「白雪姫」より。
白雪姫は継母を追い出して後、今やすっかり自分もかつての継母同様に永遠の美に取りつかれ、永遠の冬を望む冬体制の看板になっています。
白ウサギとくるい帽子屋は「不思議の国のアリス」より。
白ウサギは武器商人として成功をおさめており、冬体制のスポンサー。
くるい帽子屋は、本当におかしくなられて、今では診療所の院長として、「市民は幸せでなくてはならない」よろしく「冬体制に反対するのは何処かがおかしいんだ」として電気ショック療法などで冬体制の支配を確固たるものにする毎日。
狼は『腹を裂かれて瀕死の状態で発見』されたとのことなので「赤ずきん」か「7匹の仔山羊」とおもわれます。治療と同時に冬体制に対する忠誠心を「注がれ」たため、今や恐るべき実働部隊。
春陣営のキャラクターは;
ピノッキオが当然「ピノッキオ」から。
ピノッキオは当然父親譲りの技術と経験から人形遣いとなったのですが、今や革命の戦士。時計の同人誌とか売ってやいまいな……
アリスは「不思議の国のアリス」からで、彼女の語る冒険譚が夢と希望を与えることを危惧した冬陣営によってくるい帽子屋の施設に監禁されて、電気ショック療法を受け記憶喪失になるも逃げだした模様。
ドロシーとブリキマンと案山子は「オズの魔法使い」から。
ドロシーはカンザスに帰った後すっかり年老いてウィンタータウンに居を構えており、冬革命の被害者をその邸宅にかくまうセーフハウス状態。
ブリキマンは秋革命を共に戦ったライオンを亡くし、すっかり希望を失っている状態。
案山子はオズの支配者となったけど、冬勢力によって人心は荒廃し己の知恵と助言を人々に与えながらの旅暮らし。
マッチ売りの少女は「マッチ売りの少女」からですが、亡霊となって冬に復讐をせんと彷徨っています。
クランキーは「白雪姫」に出てきた7人のこびと(ドワーフ)の一人で、冬によって仲間が次々に死んで仕事場であった鉱山も閉鎖され、今や飲んだくれている毎日。名前がナニなのは、版権的にアレだからだ。
彼らが、この物語で大きな役割を担う登場人物です。
ゲームでは、プレイヤーはそれぞれ自陣営の中から何人かのキャラクターを受け持ち、物語を作っていきます。
また、ゲームボードはウィンタータウンを表しており、様々な場所が設定されています。
重要な場所はボックスに、途中の広場はサークルであらわされています。
これらの場所などに、「クエスト」が初期準備で配置され、ゲームはそれを巡ってのおはなしが展開されていきます。
これらの設定は、これから協力して作り上げる物語を語る際に、どのような話にするのかの指針となるでしょう。
また、これらの設定以外にも、原作での人間関係や出来事なども当然知っているところはお互いの共通認識となるの重要な点だと思われます。
<<急>>
ゲームのシステムの根幹はこちらのカード。
9歳児と5歳児によるイラストが描かれており、プレイヤーはこれを使って物語を語ることになります。
このカードは冬の面で使って暗い解釈と、春の面で使って明るい解釈と、陣営によって全く同じ絵で解釈を変えるのがポイント。
例えば、こんな絵があったら、
「どんよりとした空に切れ間ができ、きらきらとした、しかし力強い陽の光が……」
とやってもいいし、
「冬の兵士たちがマンジャフォーコ将軍の命令で、一斉に銃を放つと、将軍の像の前で集まっていた反政府主義者たちはバタバタと倒れていきます。」
とやってもいいわけ。
具体的なゲームの進行は、春→冬→春→冬と言う順番で並び、時計回りに進行します。
プレイヤーは自分の手番に……
・キャラクターを一人選んで活躍させることにする
活躍したキャラは、活動済みになり、次に手番が来ても活躍させることができません。
なお、全員活躍済みになったら、リセットです。
・物語カードを3枚補充する
・移動(この移動の時には『移動の物語』を語る必要あり)
このキャラクターの移動に対して、その通過場所にいるキャラクターは
冬側は戦闘を仕掛ける
春側はわなを仕掛ける
ことで邪魔ができます。
この戦闘や罠も「戦闘の物語」や「罠の物語」を語る必要があります。
・その後アクションを1回実行します
アクションは場に新たなクエストを配置する『クエストの発見』
物語をエピローグへと近づける『クエストの解決』
があります
クエストは、その場所にあるクエストの種類に従った「クエストの物語」を作っていくものです。
手順としては以下のように勧めます。
・クエストの宣言をして、そのシチュエーションを語る
・時計回り順に、「クエストの物語」に参加させるために活躍・移動の機会が与えられる
通常通りにキャラクターを活躍させて、クエスト後にはせ参じさせます。
後述しますが、物語カードがどちら側で使われたのか、その枚数がクエストの成否には重要なのですが、カードが無くてダメだ、とかお話的には絡まないほうがおもしろいとか思うのであれば駆けつけないということもあるでしょう。
・クエストを進める
まず最初に進行プレイヤーがクエストの状況を任意の枚数の物語カードを使って語ります
そのシチュエーションからその場にキャラクターのいるプレイヤーから時計回り順に、任意のカードを使ってお話を作っていきます。
最後に、もう1回だけ手番プレイヤーが物語を語る機会が与えられます。
クエストは、その使用されたカードの枚数が多い派閥に有利な結末で終わります。
このクエストが既定回数こなされたら、今度はエピローグとなります。
エピローグとなったら、順番に手札の物語カードを使って物語の結末を、解決したクエストに絡めて語っていきます。このエピローグの時にはキャラクターがどこにいるのかは関係がなく、物語を語ります。
こうして、自分たちの側で解決されたクエスト1つにつき3点、エピローグでプレイされた自分側の物語カード1枚につき1点でどちらの側が物語の結末を語れるか決めて、買った陣営がエピローグを語ります。
さて、プレイの端々で必要な「物語」は、常にカードを使って話を作る必要があり、プレイヤーのイマジネーションや発想を試される部分ですが、キャラクターや世界の設定とカードの絵がその補助となってくれるので、それなりに悩みどころはありますが、無理というほどでもありません。
寧ろ、手札を見て自分の考えている展開やシチュエーションなどがあるなら積極的に介入したいところですし、どの場所にいたらお話にうまく登場できるのかも考えどころです。
極論すると、クエストの成否にこだわる必要もないですし、お話として面白いものにすることが大事。
ボードゲーム寄りの人は「勝ち負けがない」部分や「物語を語る」部分で躊躇するかもしれませんが、RPG寄りの人なら「お話を作る」と言うより「できちゃった」という感覚はよくわかると思います。
むずかしいという人はいるでしょう……が、別に完全なお話を自分の番に語る必要はありませんし、そもそもルールに完全にそっている必要はありません。
完全なお話を作ることより、正しいルールでプレイするより、あなたが物語を楽しみ、一緒に遊んでいる人を楽しませるだけでいいのです。
あくまで、ゲームは『ツール』なのですから!
たぶんルールにうるさいボードゲーマーや、照れが出てしまう人などは向いていないのかもしれませんが、物語を作るのが楽しい、その場のシチュエーションを作り上げ積み上げていくのが楽しい、二次創作でマンガ描いています、むしろ一次創作者だ、RPGっぽいゲームが好き、などと言う人には強く強くお勧めいたします。
ウィンターテイルズ:冬物語
プレイ人数:3-7人
対象年齢:14歳以上
プレイ時間:90分
製作:RAVEN /FFG
デザイン:ジョクラリス・サントゥス、マッテオ・サントゥス
価格:5,800円+税