許しは請わない。だが、後悔だけはさせない『キングスジレンマ』(ルール紹介)


先日コンポーネントを紹介いたしました

キングスジレンマ

ですが、今日はゲームの流れをざっくりと紹介したいと思います。

プレイの前に
それぞれ自分の領地を決めたら、これから長く付き合うことになるおのれの家の名前を決め、背景を読み込み、長期的な行動指針を確認して、ルールブックの世界設定を読み込んでおきます……ルールの設定部分はあらかじめコピーして各プレイヤーに渡しておくことをお勧めします。

各プレイヤーの初期状態。
自分の家の衝立と賛成、反対、棄権の投票カード。
パワー8個とコイン10個受け取る……ただし前のゲームまでの結果で増減するかもしれない。

名声が最も高い家が評議会リーダーとなり、最初に手番を得る。また、リーダーのプレイヤーはは1ラウンド中に次々と変わることになるかもしれないのだが、その政策が決まった暁には責任者としてカードや年代記ステッカーなどに署名をする権利を持つことができる。

だいたい、署名によりボーナスが得られるので、名声を上げるような政策では「わしが育てた面」をするために、リーダーの地位を奪い合うことになるかもしれない。
一方、最も名声が低い家は調停者であり、このタイブレイクの決定者となる。
(なおこのリーダーと調停者の決定のタイブレイクは各家に振られたナンバー)

秘密の政策
名声の一番低いプレイヤーが各ゲームでの勝敗に関係する秘密の政策カードのデッキからランダムに1枚抜いて、残りからひそかに1枚選んで次に名声が低いプレイヤーに渡して……というのを繰り返してそれぞれが秘密の製作を1枚持つようにする。

ゲーム終了時にこのカードに記された条件に従い、資源トラックの指定された範囲にマーカーが何個あるのかで得られる政策ポイント(毎ゲームの勝利点)、コイン所持数で得られる政策ポイントが決まります。(あとは「公開の政策」や「パワートークン所持数」でも獲得できる)

そしてゲーム終了時にこの政策ポイント順に順位が決まり、キャンペーンでの勝敗にかかわるであろう、名声ポイントや貪欲ポイントを受け取ります。

では毎回1つのゲームで勝ちやすい秘密の政策があるかというと、前のゲームでの行いにより、ゲーム開始時にこの資源トラックのパラメーターが修正されてしまいますので初期条件自体が変わっていきます。
あとランダムに増減のしやすさもきまっています。

加えて各家には信条というものがあり、順位に関係なくどの政策を選んだかで毎ゲームチェックが付けられ、たまると名声や貪欲が解放されるので、最初のゲームはともかく2回目以降はその辺の選択も重要となるでしょう。

過去からの遺産
2回目以降のゲームであれば、前回までのゲームの結果により資源トラックを修正したり、各プレイヤーの持つパワートークンを調整したりします。

公開された政策
2回目以降のプレイでは、過去の政治的選択により貼られた年代記ステッカーのパラメーターごとネガティブポジティブごとに署名者(つまり政策責任者)を確認し、対応する公開された政策トークンが配られます。

これは各パラメーターにつき、ゲーム終了時に秘密の政策カードの資源トラックの状態とコイン数に加えて、政策ポイントを追加で得られたり失ったりするかもしれないもの。

ポジティブの公開政策トークンの場合は、その種類のパラメーターがどの種類よりも高いと政策ポイントがもらえますので、さらにそのジャンルに特化する動きを見せていくわけです……経済に強いとか、福祉に強いとか。
ネガティブの公開政策トークンの場合は、対応するパラメーターがほかのパラメーターより低い場合、政策ポイントを失いますので、ダメ政策の責任者であった汚名を返上すべく行動したほうが良いことになります。

これらの2回目以降のゲームの要素で、複数回プレイすることで、どんどん物語性を強く持つことになります。

結構準備は大変ですが、2回目以降のパラメーターの修正や、公開政策トークンを受け取る人の確認に関しては、日をまたいでのプレイの場合はいままでの歴史おさらい的に全員で「今まで自分の先祖は何をしてきたのか」を確認するとよい感じです。

ラウンドの進行
ゲームは終了条件が満たされるまで、ラウンドを繰り返して進行していきます。
1:まず、ジレンマデッキ(王国に降りかかる様々な問題のデッキ)を1枚引いてストーリー読み上げる……だいたいあっちをとればこっちが立たず、という問題でみな困ることになる。

2:カードのアイコンを確認し、
(賛成は青の、反対派赤の帯を見る)

賛成と反対の結果なにが変わるのかを示すトークンをリマインダーとしてゲームボードの天秤の上に置く……資源トラックの数値の変動のみならず、年代記ステッカーが貼られるなどの結果がざっくりわかる。

政策に賛成すると、悪い評判が立つけど経済は良くなる。反対だと評判は上がるが経済が悪化する……らしい。

ただし……詳しい結果は採決後にカードを読むまではわからないのでストーリーをよく読み、設定や今までのストーリーなどなどを思い出しつつ予測したほうが良いでしょう。
ここは「数値化されたパラメーター操作のゲーム」ではなく「現実の政治問題を模した選択のゲーム」であるためには重要なポイントです。

あとここにはゲーム開始時に3個のパワートークンが置かれていますがこれは後述。

3:評議会の投票を行う……おのれの家の政治力もしくは財力をかけて!
ここからは「ゲーム的な処理」+「口頭での交渉」の時間となります。

プレイヤーが手番順に、やることは

1)投票する……つまり自分の家の政治力、パワートークンを1つ以上使用して賛成か反対に投票する。
賛成・反対に投じられたパワーの総数が多いとその政策が実行される。

システム的に面白いのは、この投票はリーダートークンを持っているプレイヤーの右隣のプレイヤーが投票した時点で投票を終えてカードの解決をするのですが、自分の手番の終了時に最も多くのパワーを置いているプレイヤーだった場合、リーダートークンを受け取ることになるのです。つまり、投票前の最多パワー数を上回る投票が続く限り、この政治的な競りが続くことになるのです!

2)棄権してパワーを集める……棄権することで、共用のコインを1つ獲得し、この投票後にパワーの分配に参加する権利を得ることもできます。

3)棄権して調停者になる……棄権してパワーを集めるのとは違い、共用のコイン1つを獲得して、パワーの獲得もあきらめるかわりに、タイブレイクを決めれる調停者になれます。

以上のいずれかの選択をしたのち、2回目以降の投票が回ってきた場合はさらにパワートークンをつぎ込むかパスができます(パスしても以降投票できなくなるわけではありませんが、賛成/反対/棄権から乗り換えることはできません)。

このパワートークンの競りですが、パワーやリーダー・調停者トークンなどのやり取りはできませんが、コインを差し出したり、サインの権利を約束する、起こりうるであろう結果を以て説得するなどの交渉は自由にできます

例:

さて、1周して賛成8、反対2(調停者動かず)、棄権2家だが……

さらに4パワーぶち込んで、リーダーとなろうか……


3パワーにとどめて……


調停者にコインを賄賂として渡してリーダーの座をもらおうか?
いや、あいつの邪魔をするためなら、金を渡してでも反対票を増やしてもらう価値はあるか……

投票が終了したら、賛成反対のいずれが採決されたのか、それぞれのパワートークンを数えます。

同点の場合は調停者がどちらにするか決めるんですが、ここでも交渉は可能です。賄賂万歳!
また採決された政策のうち、最もパワーを投入していたプレイヤーがリーダートークンを(持っていなければ)受け取ります。ここのタイブレイクも調停者が行い、交渉可能です。

棄権してパワーを得ることにしたプレイヤー間で、天秤のもとにあるパワートークンを等分します(端数は残します)。ゲーム開始時は最初は3つだけですが……

上記の分配後、採決されなかった政策に投票していたプレイヤーは、投票していたパワートークンを自分のストックへすべて戻します。

そして採決された政策に投票していたプレイヤーのパワートークンは、天秤のもとにすべて置かれます(つまり、次の投票では前回の投票の敗者がより政治力を持ち、また棄権することでパワーを得やすくなるわけです!)。


そしてジレンマカードの結果を確認し、結果を読み上げカード指示にある資源や安定性などの数値変更をおこない(ただ単に上下するだけではなく、いろいろ細かいルールがある)、年代記ステッカーを貼る指示があれば貼ってリーダーが署名し(「この結果はこの家のせい/おかげ」で家のパラメーターに影響が)、新たな封筒の開封指示があれば封筒を空け……ということを以下のいずれかが起きるまで繰り返していきます。

安定性が下がりきる……王は国内状況の責任を負って退位してゲーム終了。

安定性が上がりきる……評議会が力を持ちすぎて王が退位させられゲーム終了。

解決されたジレンマカード7枚目以降に、死亡アイコンがある……王国の政治が安定して進んだが、時間はだれにも公平であり、王が崩御しゲーム終了。

そしてゲームの勝敗を秘密の政策や公開の政策、コイン数、パワー数などで得られる政策ポイントで決定し、その順位ごとに名声ポイントと貪欲ポイントを獲得します(スクリーンに記入します)。

ちなみに、王が崩御したか安定性が最大になった結果退位した場合は順位が上だと名声が多く、順位が低いと貪欲が多い配分ですが、安定性が下がった結果王が退位した場合は逆に順位が高いほうが貪欲が多く、順位が低いほうが名声を多くもらえます。
……がこれら数値と最終的なキャンペーンゲームの勝敗は、どう関係するのかはルールには特に書かれていませんので、一ゲーム一ゲームの勝敗を気にするだけではなく、最終的な結果を予想しながらプレイするのをお勧めします。

ちなみに勝者の家は王家と婚姻関係を結び、次のゲーム(次代)の王の名前を決める権利も与えられます。
(これ、各プレイヤーの家と王家の家系図作っておくと面白いかも……。)

この「ゲームの手法」で行う政治的決定システム自体はものすごくシンプルで淡泊なのですが、交渉に使う材料はパワートークンと地位(リーダートークンや裁定者トークン)以外であれば何を使ってかまわない点、そしてゲーム手法で変化する正確なパラメーターは投票前は読み上げられる物語と世界設定などから推測するしかない点、国家のパラメーターの数字以外にゲームでの選択による物語的・社会的な結果の分岐、たびたびおこなわれるリーダーとしての署名(およびそれに対する報酬とペナルティ)、レガシーシステムによる今までのプレイ=歴史の継承感などは極めてナラティブなゲームとなっています。

システムを見ての通り、3人以上プレイ可能となっていますが、交渉や投票システムを考えると4人以上……できれば5人集めてプレイしたいところです。
ただし、「ルール」的には重いものではないので5人集めるのは容易だとは思います。

問題はレガシーゲームなので、できるだけ同じメンバーで継続してプレイしたほうが良い点ですが、途中少し抜けたりする場合は、臨時のプレイヤーをお願いしてプレイすることも可能です(抜けたプレイヤーの家は一時的に没落した&臨時参加のプレイヤーの家は一瞬隆盛を誇った……といったところでしょうか)。

その場合は、「ゲームでの体験」もゲームの面白さの一つなのですが「連続する物語の歴史性とその共有」もこのゲームの面白さの一つなので、参加した(すべての)プレイヤー間で、自分たちのアンキスト王国史を共有できるようにしておくと良いかもしれません。

一部コンポーネントを
個別プレイヤー用に代用品で
用意しないとなりませんが……
『ド○○ニオン』の点数とコイントークンが
代用品にぴったりなのを発見したので
こっそり追記します。

人を集めるのが大変……という人は、今現在疫病禍ということもありますので遠隔プレイというのもよいかもしれません。

上記のざっくりとした説明を見ての通り、各プレイヤーの手元に必要なオリジナルのコンポーネントは限られています……
シールド(=記入を伴うキャラクターシートなので個人管理が良いと思います)と投票カードくらい?

あとは歴史・政治設定や地理確認のために地図などが共有できると嬉しい情報……

ゲームボード上にある情報は、毎ゲーム、あらかじめプレイ前に確認することで何とかなりそうです。

このようにお話の重さに比べると、ルールはそんなに重くはないので、ストーリー展開と交渉と長期的な予想と推測に全力を注いで十数回のプレイはそれほど難しくはないと思います。
なにより、各ストーリーラインの思わぬ展開は十数回のプレイを経て、共通体験とする価値は十分にある物となっており、「人と場所と時間がない」……と悩んでいる人は、「プレイのために人と場所と時間を用意する(+αで結果の共有などもしちゃう)」といういう気持ちでぜひ挑戦してほしいところです。

特に……あのファンタジー大河小説の実写版が好きだという人や、ナラティブなRPGが好きという人、宮廷政治劇が好きな人、そして実際に自分でそれらを決断し体験したいと夢想したことがある人に、他のゲームでは得られないゲーム体験が得られるという一点で強くオススメいたします。

キングスジレンマ
プレイ人数:3-5人
対象年齢:14歳以上
プレイ時間:60分×平均15回
製作:Horrible Guild
デザイン:ロレンツォ・シルバ、ヒャルマー・ハッハ
価格:9,000円+税

5人プレイで15回遊べたとすると……1人当たり1ゲーム130円くらいのコスパ。