SPECIAL

  • 『覇界王~ガオガイガー対ベターマン~』米たにヨシトモ監督インタビュー

    小説からコミックも展開し、『覇界王』の物語が前進している手応えを感じます


    ――『覇界王~ガオガイガー対ベターマン~』(以下文中『覇界王』)に端を発した、ドラマCD2本分の制作についてご感想をお聞かせください。

    スタッフも声優さんも忙しい中で『ガオガイガー編』と『ベターマン編』の2本分を録らなければならず、スケジュールを合わせるのが難しかったですね。それでもぶっ続けで8時間ぐらいかけないと終わらず、一番大変だったのは監督と声優陣の間を行ったり来たりして一瞬も休めなかった音響監督だと思います。


    ――檜山修之さんら当時のキャスト陣も再集結し、非常に豪華な内容となりましたね。

    20年経っていても、皆さんそれぞれの役を迷いなく演じられるのがとても嬉しかったです。当時は子供だったのに物語の中で成長したキャラも居て、その演じ分けやこちらから出した様々な指示にも応えてくれました。
     『ガオガイガー』や『ベターマン』の脚本は、当時から短めに書いても、追加したいことや、やりたいこと、「これは入れなきゃ」を詰め込んでしまい、いつも長くなってしまうんです。今回のドラマCDも、当初予定していた収録時間を厳守しなければならなかったのですが、倍近くになってしまいました(笑)。
    最初はもっと色々な展開を考えていましたが、微塵も入りきらなかったので、別の機会にお披露目できたらと思います。ネタはまだまだありますから。またこの2作品、特に『ガオガイガー』は使っている音の種類が物凄く多く、しかも時間が経っているので「このシーンはこの音」の検索もなかなか追いつきませんでした。アナログやデジタルの保管音源も経年劣化して使えなかったりで、サルベージしてもらうのがとても大変でした。ドラマCDは映像が無いから楽と思われがちですが、凄いスタッフが全力で頑張って作っています。


    ――遠藤正明さんが再び歌われた『勇者王誕生!-御伽噺(ジュブナイル)ヴァージョン-』、についてはいかがでしょうか?

    「勇者王誕生!」は今までのヴァージョンアレンジを上手く再構成して不可能を可能にしています。遠藤さんや他の方々の勇気で「これならできる、しかしこれは大変だぞ!」という地点まで進むことができて、結果としては大満足の100点満点です。挑めてよかったですし、これ以上の101点を目指そうものなら死んでしまいます(笑)。田中公平さんにもオープニング、エンディング両方の収録に立ち会ってもらって、歌唱指導もして頂いたので非常に助かりました。
    元は20年前の作品ですが、両方の作品の良さを削がないよう、さらに『覇界王』が新たな作品であることが伝わるようにと意識しました。今回のドラマCDの主題歌は私が作詞し、監督としても満足しています。
    主題歌でも『ガオガイガー』と『ベターマン』の世界が繋がるよう、歌詞には作品の内容も含ませています。
    ゲーム等から入って元のアニメを知らない人や、「勇者王誕生!」の歌だけは知っている人など、新規層の皆さんにも楽しんでもらえれば嬉しいです。TV版からのファンの皆さんには、富士山まででよかったのにエベレストまで全裸で登頂してしまったかのような、バカバカしいまでのヤリスギ感をお贈りします。


    ――小説、ドラマCDと新主題歌、コミカライズなど『覇界王』の世界が続々広がっていますが、監督からはこれらメディアミックス展開はどのように捉えられていますか?

    もともと『覇界王』は20年くらい前に私が作った企画でして、竹田裕一郎さんからそれをベースに小説を書きたい旨を聞いていました。そこで監修を頼まれ、ならばスピンオフではなく正史の物語に……となった流れです。お蔵入りになったエピソードも多いのですが、『覇界王』はもう最後まで構成を考えてあるので、小説だけでもいつかゴールに辿り着ければ、と思っていたら藤沢真行さんによるコミカライズも実現してしまいました。小説ではさらっと済ませている場面も、絵で描くために新たな正式設定が必要となります。もっと早く解っていれば最初から作り込んでいたのですが。コミックの方も、GGG制服の襟が違うとかいつも細かい指摘監修ばかりで申し訳なく思っています(笑)。
     小説からコミックも展開し、『覇界王』の物語が前進している手応えを感じます。小説をベースにしつつ、漫画は絵的に映えるシーンを強調するなどして、ともにきちんと完結を目指したいですね。


    ――『ガオガイガー』『ベターマン』各サイドから描かれたドラマCDの、それぞれのポイントをお聞かせください。

    当初は『覇界王』の一幕を『ガオガイガー』『ベターマン』それぞれ別の視点から描いたら面白いんじゃないかと思っていました。しかしあまりにも準備期間が短く、その中でいかに皆が望むものを提供できるかどうかを考えた時に、竹田さんがファン目線で「この絵が見たい」「あの台詞が聞きたい」というポイントを提案してくれました。それに乗る形で、かつクロスオーバーを楽しめるようにと生まれたのが今回のドラマCDです。
    2枚は単体でももちろん楽しめますが、それぞれを最後まで聞いた時に爽快感が残る構成になっていますので、両方聞いて頂ければより楽しめるはずです。音が付くことによって小説では描かれていなかった箇所が明らかになったり、逆に耳で聞いただけでは解りにくい部分は台詞を補足したりしていますから、ドラマCDで初めて『覇界王』に触れる方でも大丈夫です。『ガオガイガー』『ベターマン』における音声付き最新メディアでもありますので、ぜひお楽しみください。


    ――今後の『覇界王』の展開について、抱負をお聞かせください。

    当時のスタッフも出世して今や気楽に動けない立場ですし、複合的な要素も絡んでいるので、具体的に○○を作るとはまだ言いかねる状況です。そもそも『覇界王』自体が20年間眠っていた企画ですから。作品の実現には、熟成させ「満を持して」と思わせる時間も必要なんですね。


    ――最後に『ガオガイガー』『ベターマン』、そして『覇界王』ファンの皆さんへメッセージをお願いします。

    遠藤正明さんや声優陣の不動の実力に対して、私の分身の※-mai-も加齢で体力も下がり当時のような歌唱なんて絶対無理だと思っていたところ、色々な方が叡智で助けてくれて何とかなりました。そこにファンの皆さんの勇気が加われば、『覇界王』の色々な展望が実現度2%から100%になるのも夢ではありません。皆さんの応援こそが勝利への鍵だと思います。


    【プロフィール】
    よねたに・よしとも
    1963年5月12日生まれ、東京都出身。『鎧伝サムライトルーパー』等でサンライズ作品に参加。シンエイ動画『笑ゥせぇるすまん』(1989)にて初監督を努め、『勇者王ガオガイガー』(1997)、『ベターマン』(1999)、『BRIGADOON まりんとメラン』(2000)等で独自の世界観を構築する。ほか監督作品は『Dororonえん魔くん メ~ラめら』(2011)、劇場版『TIGER & BUNNY』シリーズ(2012~2014)『食戟のソーマ』(2015~)など。

TOP

©SUNRISE

原作/矢立 肇 小説原作・監修/米たにヨシトモ・竹田裕一郎 漫画/藤沢 真行 製作・編集/ホビージャパン

注意:内容および画像の転載はお断りいたします。