世界の終末神話はいくつか存在しますが、中でもゲームや漫画やアニメでも出てくるのが「ラグナロク」……神々の黄昏で、北欧神話での世界の終末。
世界樹ユグドラシルと九つの世界が、あるきっかけで崩壊し始め、滅び、最終的には裏切者のロキ神とその眷属と、神々の間の戦争でお互いに討ち果て、滅び去っていき、たった一つ残った希望により再生を果たす終末と再生の神話なのですが、
ユグドラシル年代記
はその世界観のまま、ユグドラシルを神々が一柱となって駆け巡り、敵の進行を抑え、ラグナロクを回避するのが目的の協力型のボードゲームです。
写真の中央に鎮座するのが世界樹、九つの根を持つトネリコと、九つの世界。
神話の通り立体的で、立体のおかげでテーブルを囲んでも広くなり過ぎ無い感じ。
これを平面で置いていたらかなり広い場所が必要だ……
天上の世界は……
アース神族の国《アスガルド》にはプレイヤーの受け持つ神々コマがいます。
ヴァン神族の国《ヴァナヘイム》には敵である「ロキ」とヴァン神族ダイスがあります。
エルフの世界《アルフハイム》にはエルフコマがあります
そして中央の牢獄には敵である「巨狼フェンリル」が捕えられています。
地上の世界は……
人間たちの世界《ミッドガルド》には虹の橋ビフレストの辺に敵である大蛇「ヨルムンガンド」がいて、死せる英雄の魂(エインヘリャル)のコマと、死せる名もなき者たちのコマがあります。
夜のクリーチャーたちの世界《スヴァルトアルフエイム》には北欧神話に登場する様々な獣や精霊やそのほかの神などをあらわすクリーチャーカードがあります。
ドワーフたちの工房《ニザヴェッリル》にはドワーフの手によるアイテムカードが置かれています。
なお、次のカードは何かわかりますが、北欧神話のママでの表記なので読み方が難しい……
地下の世界には……
死者の世界《ニヴルヘイム》敵である地獄の女神「ヘル」がいます。
霜の巨人と丘の巨人、ヨトゥンの世界《ヨトゥンヘイム》にはルーン石(オーディン神が片目を代償に知を得たミーミルの泉をあらわしている)と、ヨトゥンコマとヨトゥンカードがあります。
ヨトゥンカードはこれまた日本ではマイナーな巨人の固有名詞が……
炎の巨人、ムスペルの世界《ムスペルヘイム》には敵である「スルト」と炎の巨人コマがあります。
サガブックはシナリオのモードに合わせて開きますがここには敵である竜「ニーズヘッグ」がいます。
本来はユグドラシルの根を齧り、腐らせ枯らさんとしていて、ちゃんとボードの裏面にいて根を齧ってる。
ゲームは、以下の条件が満たされたら時点でユグドラシルと九つの世界が滅び、神々は敗北します。
・神々の内1柱でも生命点を失って倒れた場合。
・敵の内1体が起動した時点で効果を解決できなかった場合。
(「スルト」「ヘル」が上層階に移動したあとでさらに移動、もしくは「ヨルムンガンド」がすべての島を渡り切った後で移動、ヨトゥンコマがすべて現れたあとでさらに登場、名もなき者コマが足りなくなったなど)
基本ゲームでは、敵は炎の巨人「スルト」、死者の国の「ヘル」、大蛇「ヨルムンガンド」、巨狼「フェンリル」、神々の裏切者の「ロキ」、悪竜「ニーズヘッグ」がいます。キャンペーンでのシナリオでは、そのほかの敵が出る場合があります。
ゲームの手順は以下の流れになります。
1)各自の敵デッキから1枚引いて裏向きで置く
2)手番順を相談して決める
敵デッキは各敵が1枚ずつあり、全プレイヤー共通となります。
手番順を決める必要があるのは、後述しますが敵の起動にかかわってくるからです。
あと、敵カードは裏向きに置くのが重要で、その内容には触れずに順番だけを相談するようにしたほうが良いでしょう。
相談して順番を決めたらその順番で手番を得て、以下を順に行います;
1)敵を公開する
2)ユグドラシル場を移動する(しなくてもいい)
3)使命を果たす(=その世界の能力を使う/果たさなくてもよい)
1枚目は何も起きませんが、2枚目が置かれたらその敵が起動します。
ヘル、2枚目なので起動!
敵が起動した場合はその敵の効果を解決します。
起動した敵により、何が起きるかは異なります。
例えば、「ヘル」は上界に移動し……
※ここで順番や出ていない敵を覚えておくと、敵の襲撃予測がしやすくなって勝利に近づくでしょう!
※ただし、「フェンリル」は起動したら即座にその神の手番は終わり、起動した神の敵デッキに戻った後シャッフルしなくてはならず、覚えた順番も台無しになってしまいます……
敵が世界を移動した結果、同じ世界に2体以上の敵が存在した場合その世界は滅びますので注意しなくてはなりません。
ミッドガルドにはすでに「ヨルムンガンド」がいるのに、「スルト」が移動してきたので滅んだ。
その場合、対応するフェンリルの檻が破れ、フェンリルの戦力が増大します。
また後で説明する「その世界のアクション」は使えなくなります。
移動は任意で、同じ階層の他の世界に移動するか、上下方向の同じ位置にある世界へ移動できます。
いざというときに肝心な場所に移動できないとキツイし、1柱で何かするより仲間がいたほうが良い場合が多いので、その位置取りや順番も重要。
移動のあとで行えるのは、今いる世界にいる敵1体との戦闘か、その世界の能力を使うことです。
戦闘は必ず勝利し(神なので)、敵はもともとの居場所に退却します(「ロキ」は牢獄に送られる)。
ただし、敵の戦力に等しいリスクを負い、リスクに等しい生命点を失う可能性があります。
リスクはダイスロールによるセーヴィングスローや能力などの使用により軽減・回避できます。
各自のダイスは1個ですが、自分が持っているヴァン神族ダイスをそこに足して判定することもできます(使ったダイスは特定の目で《ヴァナヘイム》に戻る)。
円い記号が成功の目。これで「リスク」を1軽減できるのだ。
そのほかにも、ダイスをふる前にヴァルハラにある英雄1個をミッドガルドに戻すことで、1リスクを軽減できます。
また自分のエルフコマを1個《アルフハイム》に戻すことで、ダイス1個の出目を好きなものに変更することもできます。
世界の能力は各世界で異なります。
例えば、《ミッドガルド》では死者の英霊をヴァルハラ(アスガルド)に送り込むことができます。
《ニッザヴェッリル》ではドワーフの作った道具を獲得できます。
これらの能力を使うとき、リスクがあるものはセーヴィングスローをしなくてはなりません。
また「自分と仲間がいる」ならボーナスが、「自分だけ/自分と仲間と敵がいる」なら通常、「自分と敵がいる」ならペナルティが、その効果についてしまいます。
たとえば《ミッドガルド》で英霊をヴァルハラに送るときは、ペナルティ付きなら1体、通常で2体、ボーナス付きで3体送ることができる!
※ただしミッドガルドには必ず敵「ヨルムンガンド」がいるので注意……
壊滅した世界では世界の使命は果たせませんが、生命点2を支払うことで世界樹の回復アクションも行えます。
(世界の回復はアスガルドの使命として、リスク付きで行うことも可能)
各プレイヤーが手番を終えたらラウンド終了です。
この手順を勝敗が決まるまで続けることになります。
基本のゲーム(イージーとハード)では、ニーズヘッグが起動して最後のマスに到達したらゲーム終了で、それまでに敗北しないようにすると、神々の勝利です。
ハードおよびキャンペーンでは神々にはアビリティと神聖パワーという能力が加わり、神話のエピソードに合わせた活躍が期待できます。
例えばフェンリル絶対殺すマン神、テュールは、フェンリルの能力である「起動したら手番を終える」を無視できるし、自分のダイスの出目の内、成功のほかに1、2の目でも成功になる。
ヘイムダルは《ミッドガルド》にどの世界からでも移動することができ、自分の神ダイスの成功やヴァン神族の成功の出目が、通常の物だけではなく①の目も成功。
またキャンペーンでは、経験点によりサガとサガの合間でアビリティを増やしていくことができます。
キャンペーンは「バルドルの殺害」に始まり、「フィンブルの夜」、「マーナガルム」、「ナグルファルの出航」、「ビフレストの破壊」、「ヴィーグリーズの野にて」の6つのサガで構成されています。
たとえば最初のサガ、「バルドルの殺害」は1つ目のエピソードでは3回「ニーズヘッグ」が起動する前に九つの世界に移動してその世界で特別アクションで「結束トークン」を置き、すべての世界に結束トークンを置かなくてはなりません。
置ききって「ページをめくる条件」を満たしたら、次のエピソードに進み、ゲームを続けます。
各サガではラグナロクは着実に進行し、ベルゲルミルの息子たちが攻め寄せるフィンブルの冬が来て、太陽を喰らう白狼スコルと月を喰らう黒狼ハティが現れ、死者の船ナグルファルはヘルのしもべとともに迫り、巨人たちの侵攻により虹の橋ビフレストは落ち、運命が導くまま最後の決戦の地であるヴィーグリーズの野において、敵の軍勢と神々の最後の大戦が破滅の預言に従い起こるでしょう……
ゲーム自体はオーソドックスな協力型ゲームですが、北欧神話を忠実にゲームとして落とし込み生かしたうえで手ごたえのあるゲームとなっています。
よくある奉行の問題に関しても、「順番の相談」の段階ではだれもが過ちを犯しうるので、相殺されているといえます。
とりあえずイージーモードでシステムになれたら、ハードモードに挑戦してみてください。その後キャンペーンモードをプレイすることで、じっくりラグナロクを追体験できるでしょう。
ユグドラシル年代記
プレイ人数:1-5人
対象年齢:14歳以上
プレイ時間:90分
製作:Ludonaute
デザイン:セドリック・ルフェーヴル
価格:6,500円+税