踊る言葉のその楽しさに『宵と暁の呪文書』


いろいろと各社趣向を凝らした新作が出てくる季節となりましたが、今回ご紹介する
宵と暁の呪文書

も『宝石の煌き』『アンロック!』シリーズなどの名作・新機軸のゲームを開発したSpace Cowboysと、『クマ牧場』などのフィル・ウォーカー=ハーディングによる、満を持しての新作となります。

さて、ゲームではプレイヤーは魔法使いとなり、他の魔法使いと魔法の技術を競うことになります。

各プレイヤーは同じ呪文書を用意します……赤、紫、緑、黒、白、青、黄の7色の魔法には、それぞれ効果が異なる3つのレベルのカードがあります。
最初のゲームでは★のカードを使用するとことになります……慣れたら★★や★★★レベルの呪文を使用します。
さらには、自由に組み合わせたり、ドラフトしたりすることで毎ゲーム異なった展開が楽しめることになります。

袋の中には錬金術が示す所の、根源たる物質である質料(マテリア)が入っています……これまた7色で、溶岩の赤、毒の紫、植物の緑、石炭の黒、蒸気の白、水銀の青、黄金の黄となっており、それぞれの色は3種類のルーン×5個の構成となっています。

これがアクリル製でずしっと豪華!
袋も専用でかなりご機嫌な仕様です。

※なお、アクリル製品なので、表面にビニルの保護層があります。この層が剥がれかけていても不良ではありません……全部剥がしてしまいましょう。

各プレイヤーは最初に2個、質料トークンを引いておきます。
これは「プール」」と呼ばれますが、9個までしかプールには保持できません。

中央の祭壇には、袋から引かれた質料トークンが5個置かれています。

プレイヤーはこの質料トークンを、自分の使い魔ボード上に配置(「込める」)ことで得点を得たり、質料トークンを使って呪文を習得することで得点を得ていくことになります。また、ゲーム終了条件はいずれかのプレイヤーが使い魔ボードを全て埋めきるか、7つの呪文全てを習得することなので、他のプレイヤーよりも効率的に質料トークンを獲得し、使い魔ボードにより早く込めていったり、よりよい呪文をより早く獲得していく必要があります。


プレイヤーは時計回り順に手番を得ることになり、各手番はの3ステップに分かれいます。

「朝」には「質料トークンを祭壇から1つ取るか袋から2つ引く」、または「朝の呪文カードを使用する」ことになります(呪文の効果は主に質料トークン獲得の効果)。

「昼」には「質料トークン1つを使い魔ボードに込める」、または「昼の呪文カードを使用する」ことになります
(呪文の効果は主に質料トークンを込める効果)。

「夜」には「呪文を1つ学ぶ」、または「昼の呪文カードを使用する」ことになります
(呪文の効果は主に呪文を学ぶ際の効果)。

呪文を学ぶ場合、学ぶ呪文の色の質料トークンを、学びたいレベルに応じた個数だけ支払うのですが、合致する色1個の代わりに同じルーンの3個で任意の色1個として支払っても構いません。

支払う個数は下のレベルから3/4/5個支払う必要があるため「朝」にある程度色をそろえて獲得していく必要があります(1個は学んだ呪文の上に置いて習得したことをあらわす)。

呪文は単に得点になるだけではなく、学んだ呪文は様々な効果を持ち、通常指定された「朝」「昼」「夜」のステップに使用して、通常よりも多くの個数のトークンを獲得したり、祭壇とプールのトークンを交換したり、指定のルーンの質料を獲得したり、通常1つのところより多い個数の質料トークンを使い魔ボードに込めたり、呪文の獲得に必要な質料トークンの支払いを軽減してくれたり……と、得点の為のアクションが強化されていくことになります。

もちろん、みんな大好き相乗効果がうれしいコンボ要素も!

例)
この状況で……

「祭壇から1個取るか袋から2個引く」の代わりに「手元の〇ルーン1個を捨てて4個引く」呪文の効果を使う……

青3個になった!

昼に通常の「質料トークン1個を使い魔に込める」代わりに、呪文の効果で青3個を込めることでほかのプレイヤーより早く得点化できる!

速攻戦略で終了条件を満たして逃げ切れるか?!

呪文は一度覚えると、上のレベルを再度学ぶことはできないため、どのレベルで学ぶかも重要となっています。
早期に点数や効果は低いけど、低レベルで覚えて序盤からアドバンテージを取るのか、それとも時間はかかっても高レベル呪文として覚えて点数と強効果を得るのか……ここも大きな考えどころ。

さてそのためには、確実に欲しい色を祭壇ボードから1個だけ取るのか、袋からランダムに2個引くのか……ルールはシンプルですが、ここが判断のしどころ。
呪文だけではありません。使い魔ボードには通常1手番に1個しか質料トークンを込めることができないため、使い魔ボードにおいてよい(つまり呪文の獲得などに使用しない)質料トークンも計画的に得ていく必要があるでしょう(1手番込めるのをサボると、その分まじめに質料トークンを込めていた他のプレイヤーに差がついてしまうので……何せ最終的に全部置ければ18点、呪文カード4~5枚分の得点になる!)

それに、使い魔ボードに込めたり、呪文のカード上に置かれる質料トークンがある以上、ゲームは進行するにつれ出現することが無いトークンの色やルーンが増えていくことになります……インタラクションは質料トークンドラフト部分だけなのでそこまで強くはありませんが、欲しい色がカットされるとそれはそれで予定が狂いますし、使い魔に込められたり呪文の取得で置かれたトークンにより、プールが意識できる程度に偏っていくことになり、真綿で首を絞められるような間接的なインタラクションがじわじわ効いてくる感じ。

なお、手番の最後には、祭壇には残り質料トークンが4個以下なら5個まで補充、9個までは1個補充、10個あるなら全部捨てて5個補充……となっているのでそこも若干運でぶれる感じの作りになっています。


ゲームは淡々と進むと思いきや、最初に配られた質料トークンの色と呪文の書の能力を鑑みて、どのようなルートで勝利まで質料トークンを集めて行くのか……そして、途中呪文を覚えたとたん、その能力によりがぜんゲームは加速していきます!
加えて、他のプレイヤーの得点状況を見て置かなければ、いつの間にか勝利条件をそろえられて逃げ勝ちを許してしまうかもしれませんので油断できません。
最初は運の要素が強いのですが、そろえた質料トークン、他のプレイヤーの状況、学んだ呪文などでだんだん勝利方向へ確率を収束させていく作りは、アイディアのもととなったラミイっぽいところが確かに感じられます。

さすがはいろいろ名作を手がけてきたフィル・ウォーカー=ハーディングとスペースカウボーイといった造りで、ゲームシステムだけではなくコンポーネントも豪華!
しかもカードの組み合わせは変更できるから、リプレイ性も高い!
ルールも覚えやすく(何より教えやすい)、能力コンボとリソース管理が好きな方には強くオススメいたします!

宵と暁の呪文書
プレイ人数:1-4人
対象年齢:12歳以上
プレイ時間:45分
製作:Space Cowboys
デザイン:フィル・ウォーカー=ハーディング
イラスト:シリル・バーティン
価格:6,000円+税