Fight like a Tiger『デュエル・オブ・ザ・ジャイアント』


Z-MAN GAMESの新作ラッシュが続き、エッセンで新作が続き、当社新作もなぜか9月下旬から10月にかけて山のように新作が続く今日この頃です。

さて今回紹介いたしますのはそんなZ-MAN GAMES新作ラッシュの中でも異色の、
デュエル・オブ・ザ・ジャイアント
~巨人の激突~
(Duel of the Giants)
です。
同ゲーム、ドイツ上空の夜間防空戦闘を扱った傑作として知られる、Duel in the DarkのPilot Games・Friedemann de Pedroの新作で、今度は戦車でやってきたわけです。

さて、ゲームは1943年のクルスクでの攻勢の失敗以降、守勢に転じたのドイツ装甲部隊と攻勢に転じたソ連軍戦車部隊との戦闘がテーマのゲームです。

攻める側のソ連軍はT-34戦車8輌からなる部隊をドイツ軍戦線後方に送り込むとポイントになります。

ファシストの重戦車(ティーガーI)に打撃を与えてもポイントになります。

ファシストの対戦車砲を蹂躙してもポイントになります。

とにかくソ連軍側は数に任せて遮る敵を撃って撃って撃ちまくり、雪崩のごとく戦線後方に突き進めばよいのです!

進め、進め! 西へ、西へ! ベルリンへ! ベルリンへ!

ただし、ただ突き進んでいては各個撃破されるのがオチ。赤軍は頭も使います!
最初は戦車全ては登場しません。最初は16個の戦車マーカーを置き、正確な位置を隠蔽しつつ前進するのです

一方、ここで何とか戦線を建て直したいドイツ軍ですが、重装備は失われ、数少ない装備で迎えうたなくてはなりません。
「前線の陣地」、「対戦車砲」、火消しの「スツーカ」、そして「ティーガーI」重戦車が2輌があなたの担当戦区にある全戦力です。

これらの数は少ないのですが、精鋭の戦力であり、敵の戦車を撃破すればポイントを獲得できるのです。!

戦闘は射界に向けて射撃し、砲と射程で決まる「火力」と「装甲防御力」を比べるもの。
サイコロなどのランダム要素は無く、どうすれば射撃できる位置につくことができ、先に射撃できるかという駆け引きがメインとなります。

そしてルール上特筆すべきはティーガーI戦車ですが、まず機動力がありません
T-34が軽快に進撃して砲塔を軽やかに向けてくるのに対し、ティーガーIは事前にカードで移動計画+砲塔旋回計画をしなくてはなりません
しかし、その8.8cm対戦車砲はゲーム中随一の火力を誇ります。
そして装甲防御力にいたっては、正面からの場合、T-34は隣接したヘクスからでなければ装甲を貫通できません。

そして最も恐ろしい点は、ティーガーIは装甲を貫通されても即撃破ではなく、先にあげた計画の数が減る=行動力が落ちるだけで、決して破壊されることは無いのです!!
(まさに無敵戦車! ……ですが、ソビエト軍は行動力の落ちたティーガーIの脇をすり抜けて後方突破すればいいんですがね。)

このようにこのゲーム、ドイツゲーム以降のルールの手法を取り入れて、大胆にディフォルメを施したゲームなのです!!
(シミュレーションゲームの手法やトレーディングカードゲームの手法が違うジャンルに影響を与えてきたのと同じですなー。)

重要なのは、砂塵を立てて雪崩のごとく突き進むT-34のを群れを、訓練と装備で上回るティーガー小隊を中心とした小数精鋭のドイツ軍部隊が押しとどめるというシチュエーション。

これを8.8cmの戦車砲は500mで○○mmの装甲を貫通できる云々とか、T-34の走行速度は時速○○km/hで云々というカタログデータ的なものではなく(無論、そういった数値上のリサーチも大事ですが)、指揮官たるあなたは勝利のために何を決断すべきなのかという部分で抽象化に勤めてデザインしたところがこのゲームの良い点なのです。
まさに「知恵を巡らせ、頭を使え」です。

肝心のプレイ感覚は火力の向きと距離を考慮しつつムーヴする点がチェスっぽいかもしれません。
戦争テーマのゲームをしたことが無い人も取っ付き易いかと思います。

他にもT-34の戦車長が砲手をかねている問題点や、スツーカの対地攻撃など、シンプルなルールで東部戦線の戦車戦の雰囲気を存分に醸し出しています。

また重要なのはミニチュアの存在が直感的に状況を訴えて来る点。今現在何がどうなっているのかが一目でわかる点はミニチュアに長があります。
ミニチュアのデキが寂しいとか思ったら、スケールは1/144なので食玩戦車を探せばよろしいかと。
最初にお互いに配置する地形タイルもできれば立体化したいですな!

シナリオはふたつ。夏季と冬季でマップもマーカー類も交換します。芸が細かいです。
ちなみに冬のほうが敵の装備や戦術の向上の分だけドイツ軍不利です。
基本的には二人対戦型ゲームですが、お互いチームを組んでのプレイもできるし、複数セットを連結することで、大人数でのプレイも可能です。
しかも通常プレイで30分くらいで終わるお手軽さです。

シミュレーションゲームをお手軽にプレイしたい人、宮崎駿の「泥まみれの虎」が好きな人(アレの状況はかなりそっくり。前線全域でああだったんだなぁ。)、ミニチュアゲーム好きな人にオススメいたします。猛烈に。

デュエル・オブ・ザ・ジャイアント~巨人の激突~(Duel of the Giants)
プレイ人数:2~4人
対象年齢:10歳以上
プレイ時間:約30分
ゲームデザイン:Friedemann de Pedro
発売:Z-MAN GAMES
価格:8,000円+税

ルールブックやボックスは、英語とドイツ語併記となっております。すげー雰囲気がよろしい。
でも戦争テーマにうるさいドイツじゃ玩具流通には乗りません。たぶん。

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