みんな混沌なんだ!『ウォーハンマー・クエスト:カードゲーム』


日本においてはファンタジーテーマのゲームは人気が根強く、いろいろと出版されてもいますが、その元祖をたどると『War of the Ring(SPI)』『バーバリアン・キングス/Barbarian Kings(SPI)』や『White Bear Red Moon(CHA)』、『魔法の島の戦い/Wizard’s Quest(AH)』、『タイタンの掟/TITAN(AH)』、『エルリック/Elric(CHA)』などなどいろいろ思い当るのですが、その流れはシミュレーションゲームからのもので、大体が国家間の抗争をテーマにしたシミュレーションゲームだったりマルチプレイヤーズゲームだったりします(日本でも輸入販売されてたものがありました)。

しかし、D&Dのヒット以降、その流れは『剣と魔法の国/Magic Realm(AH)』や『死の迷宮/Death Maze(SPI)』、『ヒーロー・クエスト/Hero Quest(MB)』などのRPG的な(ダンジョン探検モノも含む)ボードゲームの出版の流れを生み出し、一大ジャンルとなります。

ウォーハンマー・クエスト(GW)』は、そんな時代の流れをくむ、ダンジョン探検ミニチュアゲームだったのですが……

今その幻のゲームがカードゲームとなって復活したのです!

ウォーハンマー・クエスト:カードゲーム

として!

さて。

タイトルに「カードゲーム」とある通り、昨今のカードゲーム(特にTCG)のデザイン手法が取り入れられたものとなっており、TCG慣れしている人であれば割とさくっと感覚がつかめると思います……が。
ボードゲームしか経験がない、という人はちょっととっつきにくいかと思うのでざくっとその辺を中心に解説をします。

各プレイヤーはキャラクターを受け持ちます。

シグマー教徒、ドワーフ、魔法使い、エルフの4人。
非常にオールドワールドっぽい。

各キャラクターは、4つのアクションができ、各アクションはカード化されています。

この辺りはTCGのノウハウっぽい。それぞれのキャラで得意不得意、特別にできることなどあるのでその把握が重要。

攻撃は、相手にダメージを与えるアクション。

キャラクターごとにアクションの基本的な部分以外は全く異なっています。

休息は、自分のダメージを回復するアクション。

援護は、他のキャラクターに消費すると1成功になる成功トークンを与えるアクション。

探索は、今いる地形を調べて前進したことをあらわす探索トークンを乗せるアクション。

それぞれキャラクターによってオマケ的な能力が異なるので、この能力がまずプレイの上でも壁になりますが、逆に言えばその能力差の取り回しをどうするのかがゲームのキモでもあります。

アクションは使うとタップ……じゃなくて横にしてやります。

待機状態から消耗状態に。これは、モンスターも同じ。

その後、上から下へと記述順にカードの効果を効果を解決します。

面白いのは、再びアンタっ……立てて使えるようにするためには、このマークがあるアクションを使う必要があること。

カードの最後の効果で全部のアクションが待機状態に。
因みにこのアイコンがついてるアクション、キャラによって全く違います。

探索するダンジョンは、抽象的に「今いる場所」を表現しています。

このカードから離れるには、探索アクションで、右下の探索値以上の探索トークンを乗せなければなりません。

で、左の数字がこの地形に入った時に登場するモンスターの数。

モンスターはシナリオに従ってあらかじめデッキを作っておくのですが、新しい地形に侵入したら、ターンプレイヤーから時計回りに上の数だけ自分の“交戦状態(接敵状態)”エリアに置き、下の数だけ裏向きで“隠蔽状態(この地形の奥でまだ表れていない遠距離の敵/ポップ待ち)”エリアに置きます。

敵はこんな感じ。




ミニチュアゲームやRPGでも見慣れた方々がおられる。

とりあえずジャイアントバット。

で、左の青いマスの数字がダメージ、

右が耐久力(ダメージ軽減力)と体力。

中央段には敵フェイズに起動したときに、左から解決する特殊能力。

他には、探索したら発生する、イベントなどを表したダンジョンカードと……

イベントによっては見つかるかもしれない落ちていたアイテムをあらわす装備カード。

後はマーカー類とシナリオカード、ダイスなど。

……が基本のコンポーネント。
カードゲームと言うだけあって当たり前だけどカードがメイン。
ミニチュア者は残念だが……ペイントの参考にとどめるのだ。

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ゲームはまずシナリオを選んで……

シナリオシートの裏面に従って地形のデッキと敵のデッキとイベントのデッキとアイテムのデッキをつくります。ちょっとだけめんどう。

シナリオのシートには、脅威度(ターンが進むにつれイベントが起きたりする)トラックがあります。

その他シナリオ特別ルールも記載されているので全員確認を。

因みに今回のボスはこいつ。

勝利条件はここに。全員倒れてしまう前に、条件をクリアしよう!

各プレイヤーは、人数に応じたキャラクターカードと、アクションカードを受け取ります。

最初の地形に踏み込んだよ(準備で)!

リーダー(そのラウンドのスタートプレイヤー)から出現モンスターを配置する。

3体交戦状態、1体隠蔽状態なので、ドワーフ→エルフ→ドワーフ→隠蔽状態の順に現われた。

これで準備完了。

ゲームの手順は
・キャラクターをリーダーから、時計回り順で1アクション実行
・敵をリーダーから順に、起動していない敵が出るまで起動する
・地形の効果を解決する(探索しきってたら次の地形に移ってもよい)
・脅威度が上がる(そしてある一定ラインに達するとイベントが起きる)
・リーダーが左隣に移る

を繰り返すだけ。
ちょっと一般的なシークエンスではないのでわかりにくい。

アクションの時は、交戦状態の敵の数だけ黒ダイスを受け取り……
アクションカードの分だけ白ダイスを取る。

カードの効果によって、色々できることが違うわけで……
ドワーフの攻撃アクションは、いずれかの敵を2体まで選んで接敵状態にし(他のキャラクターの交戦状態にいるキャラクターも選べる……敵を引き受けるわけです!)、ダメージ対象を2体選べる。
そして成功数だけ対象にした敵にダメージを与える

エルフの援護アクション成功数だけ成功トークンを与えつつ、消耗してしまったアクションを回復させてあげ、おまけに援護した味方の交戦状態にいる敵にダメージをちまちま与えたりする……弓で援護しているイメージ!
成功数だけ対象の味方にあげる成功トークンは、1つのアクションには2個までしか置いて用意しておけないけど、使う1枚につき成功数を1追加してくれるのだ!

ドワーフの休息アクションは、自分を回復しつつ交戦状態の敵を消耗させる……消耗した敵の分は敵ダイスを振らなくて済むし、次の敵のステップでは起動できない。
しかも守りを固めるので殴られにくくなるぞ! 成功数だけダメージが回復する!

エルフの探索アクションは、探索で敵を振り切るために地形カードに成功数だけ探索トークンを置くうえに、隠蔽状態にいる敵は消耗状態になる!
地形カードは新たに引かれると、前の地形の隠蔽状態にいたモンスターは基本捨て札になるので、敵を振り切るのも有効な手法。

しかし、イベントも起きる。

いいこともあれば悪いことも。あと、アイテムが落ちているかも。

落ちてた。

装備は最初は1つしか持てない。

耐久値(ダメージを軽減する能力)は厄介なので、持っておこうか?

なおこれが成功の目。

あと、楯の目があればその数だけ敵からのダメージは減ります。

クリティカルの目が出たら、成功1を確保したうえでそのダイスをもう1回ふります。
出続ける限り何度でもふるよ!

なお、黒い敵ダイスで攻撃の目が出ると、交戦中の敵がダメージを出してきます。

交戦中の敵で、攻撃値がデカいほうがその値のダメージを出してくる。

ボスの目が出たら、待機しているボスの効果が発動します。

前のラウンドで消耗状態になったアクションは、自動的には待機状態にならないので、次のラウンドに何が起きてどんな状況になるのか、をかんがみてのコンビネーションが重要となってきます。

これらのアクションを、各キャラが1アクションずつ(2人プレイなら2回ずつ)実行したら敵のフェイズ。

リーダーから順に、1枚ずつ敵を指定して起動していくのですが優先度があって、自分の交戦状態にいる待機状態の敵→隠蔽状態にいる待機状態の敵となります。
つまり、次の敵フェイズに何が起こるのかは一応計算可能なわけです。

で、起動したらこの真ん中の段

の能力を左から解決します。例えば……

進撃は、起動したプレイヤーの交戦状態に移動してきます。
加撃は、起動したプレイヤーのキャラクターにダメージを出します。

ネズミ、近づいてきて殴る。シンプル。
因みに、キャラクターは最大3対までしか交戦状態にできません。
敵でいっぱい、そんな時に上のネズミ進撃してきたら、交戦状態に入れないのでダメージをだして隠蔽状態に逃げ、その後加撃でダメージを出してきます。
交戦状態の数に要チューイ!

退却は、中央の隠蔽状態に移動します。

グリーンスキン、交戦状態にして殴ろうとしても、殺しきれなかったら隠蔽状態に逃げて(遠距離攻撃を持っていないと攻撃できない)、加撃で弓矢を2回撃ってくる。

このように、今いる敵の挙動も考えて、アクションを練ったほうがいい感じなのがわかります。
特に、消耗状態にするアクションもあるので起動させたくない敵は消耗状態にしていくといいよ。

そして、ダンジョンカードの効果を適用し……

脅威度が上がる。
だいたいろくなことが起きない。

ここまでで1ラウンド。
リーダーが左隣に移って、次のラウンドへ。

クリア条件はシナリオごとに異なりますが、敵を排除して前進することもできますが、体力と言うリソースがだんだんきつくなる感じ。
キャンペーンで遊ぶと、シナリオとシナリオの間で成長要素があり、所有できるアイテム数や、途中見つけた伝説の武器が次回も出るなどします。

まぁ、敵も恐ろしく強くなっていくんですが。

ダンジョンハックものとしてみると、もともとミニチュアを使ってマップをうろついて……というRPGでもおなじみの要素をうまく抽象化してカード化させた感じ。
特に、ダンジョンカードを探索で更新したら、隠蔽状態にいる敵が捨て札になる辺りは「敵をまいた」感がすごく出るのです。なので、素直にぶんなぐるだけではなく、キャラクターによっては持っている、敵を消耗状態にする能力や、隠蔽状態に移動させる能力が生きてきます。

協力ゲームとして見て見ると、連携が取れないと全員のリソースがどんどん減っていくけど、カードコンボ的な(カードゲームなんで当たり前だけど)連携が決まると気持ちがいいつくり。特に後半の敵はダメ―ジの軽減能力がハンパ無く、細かいダメージを多数入れるより、デカい一撃を入れなければならないのだけど、その下準備を一致団結してするとか。
「オレが雑魚を引き受ける!(他のキャラクターの交戦状態にいるモンスターを引き受けて、敵の起動時にダメージを引き受ける)」
「私が援護を!(援護トークンを与えつつダメージを出す)」
「私は次に備える!(アクションをすべて待機状態にする……)」

みたいな感じでそれっぽくなるのです。かなり。
序盤であっても得意なことと得意でないことはあるので、必然防衛キャラは防衛キャラらしく、援護キャラは援護キャラらしくふるまうことが大事で、非常にRPGっぽくできています。協力ゲームにありがちな、奉行問題も運の要素やこのあたりの要素でかなり和らいでる感じです。

あと、テキスト満載なので、最初はそのテキストの効果を活用することやコンボに気が付かないかもしれませんが、慣れると連携が取れてきて、プレイ速度も上がっていく辺りも非常に楽しい所。

シナリオで垣間見える世界感は、みんな大好きオールドワールドのママなので、ウォーハンマーRPGが好きな方、純粋に敵の頭蓋に鉄塊を叩き込みたい方、シグマー信徒、ウェイウォッチャーは浪漫、ドワーフはモヒカンだという方はもちろんそっち方面からオススメですし、ダンジョン探検もののカードゲームやファンタジーものの協力型ゲームをお探しの方や、ソロプレイできるゲームをお探しの方、カードコンボが好きだというかたにもオススメできる内容となっております。

ウォーハンマー・クエスト:カードゲーム
プレイ人数:1-4人
対象年齢:14歳以上
プレイ時間:30-60分
製作:Fantasy Flight Games
デザイン:アダム・サドラー、ブラディ・サドラー
価格:6,000円+税

ニコ生配信のアーカイブはこちら。

あと、混乱している人がいると思うので、系譜を整理すると……
・ウォーハンマー(FB)
 軍隊同士の集団戦闘を扱ったミニチュアゲーム

・ウォーハンマー・クエスト
 ミニチュアを使ったダンジョンアタックボードゲーム。

・ウォーハンマー・クエスト:カードゲーム
 上記のゲームをカードゲーム化したもの。今回紹介するゲーム。

・ウォーハンマークエスト シルバータワ
 上記のウォーハンマー・クエストの新版。世界設定は最新のものになってる。

という流れ。
ややこしいぞ。