クアリッタの音楽室 「アーカイアでの機奏英雄とは5 〜 英雄大戦後の英雄たち」
こんにちは、瑠璃の歌姫クアリッタです。今期最後の講義の本日は、アーカイアにおいて機奏英雄がどのような存在であるか、というお話の5回目をお送りします。

三姫や、思想が異なる歌姫やギルドがそれぞれで作る組織や、英雄たちによる集団など、英雄戦争の中、人々が分裂していったことを、前回まででご紹介しました。
その結末はと言いますと、黄金の歌姫と白銀の歌姫、それぞれの究極の織り歌の衝突をもって、英雄大戦は終結します。
アーカイアから幻糸をなくし、奇声蟲と奇声蟲化の脅威を一掃し、機奏英雄との共存を最優先しようとした黄金の歌姫と、さらなる研究によって幻糸の力を有効活用し、同じ2つの脅威を退けようとした白銀の歌姫、それぞれの陣営の衝突という形をとります。そしてポザネオ島において、幻糸を消し去る黄金の歌姫の「ノクターン」と、対抗する白銀の歌姫の「レクイエム」が相互に干渉し、幻糸は失われはしなかったものの、歌術や奏甲には少ない、という世界になってしまったのです。
この影響で、大気中の幻糸は大幅に減少しました。そのため歌術の行使は困難となり、実力で白緑か瑠璃の階位は持つ歌姫でないと、織り歌の効果は発揮されないようになってしまいます。しかしながら、機奏英雄が通常の環境で奇声蟲化することはなくなり、ある水準では、アーカイア人と召喚された人々の長い共存が可能となりました。
当然、絶対奏甲も幻糸減少の影響を大きく受けました。ひとつは歌姫の起動歌の効果が発揮されなくなり、起動そのものができなくなります。奏甲そのものが、アークドライブで得る幻糸のエネルギーの減少のため、幻糸鉄鋼が無秩序に劣化、変形したりという報告もあります。多くの奏甲が、基本的にはそのままでは使えない、ただの塊となってしまうのは避けられないことでした。
こうして、幻糸の減少を迎え、アーカイアは新たな時代を歩き始めます。多くの歌姫が歌術を失い、英雄は奏甲を失いましたが、どちらもその多くは一般人として生きることになります。特に再度の黄金の歌姫の不在により、恵みの塔の役割は果たされなくなり、英雄と歌姫という壁が取り払われた宿縁のカップルが結ばれることと並んで、アーカイアの社会を維持するため、元英雄と元歌姫が結ばれ、子どもを授かることが、各国で推奨されました。
さて、「歌術」は、より有能な歌姫のものとなりましたし、元より歌姫は、歌術だけで能力を示す地位ではありませんでした。「歌姫」という称号は、再び選ばれた人々の敬称となったのです。その中で、新生したポザネオ最高評議会や、各国の女王たちも英雄大戦の痛手から復活しようとします。
一方、奏甲はそのほとんどがエネルギー不足で稼動が困難となっていましたが、小型の奏甲は、英雄大戦直後の幻糸が減少した環境でも、土木作業に転用する程度の動きは可能でした。
このことから、小型で必要幻糸が少ないアークドライブが研究、開発され、年々、奏甲はその自由を回復していきます。英雄大戦終結から10年も経つと、各国が既存の奏甲のアークドライブを換装し、機奏英雄と、歌術を失っていない歌姫を雇い入れ、軍備として配備を本格化させます。シュピルドーゼでは、特に飛行型奏甲の復活に力を入れ、新型機までを開発してみせます。もちろん、これにギルドや他の高位の歌姫がかかわっているなどの噂は絶えません。
そして15年経ち、まるで大戦の時のハルフェアの旗機ミリアルデ・ブリッツや白銀の暁の星芒奏甲クロイツ・ゼクストのように、人か、それ以上の動きをする奏甲が目撃されるようになります。それは赤と金のカラーリングをした派手な奏甲と噂は伝えますが、その正体は、詳しくは知られていません。
この15年の間、英雄たちは一般の男性として、アーカイアになじんでいきました。その程度は、パートナーと結ばれて家族を成し、労働をし、生活していくというものから、英雄の気構えを捨てず、冒険の旅に生きる者、かすかに動く奏甲と歌姫を従えてあくまで機奏英雄として通す、あるいは奏甲で悪さを働く者、いち早く薄幻糸対応の奏甲に出会ったり、各国に雇われて、それを手にする者と様々となったのです。

さて、様々なアーカイアについての講義をさせていただいてきたこの「クアリッタの音楽室」ですが、今回でいったん終講となります。
もちろんアーカイアという世界については、たくさん知っていただきたいこともあるのですが、わたくしも本来の勤めの方で、手を取られがちとなりましたもので。
機会がありましたら、みなさまのご質問へ回答したり、このような講義を持たせていただこうと思っております。
フェァマインでおきました爆発事件などもございます。みなさまも、お気をつけくださいませ。それにわたくしの講義がお役に立てば幸いですわ。
それではまた、この音楽室でお会いしましょう。