ノイエン:みなさん、こんにちは。瑠璃の歌姫クアリッタです。本日の「アーカイアの車窓から」は、ハルフェアの都であるルリルラからお送りします。
ノイエン:はいはーい。ノイエンですっ。この「アーカイアの車窓から」も、なんと25回。各国の都も回って紹介も一区切りと言うことで、一旦、お休みを頂くことになりました〜。
クアリッタ:それにあたり、場所もルリルラと言うことで、わたくしが司会で、ノイエンをゲストにお送りいたします。
ノイエン:ルリルラはなんといってもアーカイアいちのリゾート!泳ぐことができる砂浜があって、いくつも温泉があって、街中にも噴水や公園がいくつも設けられていることで、とっても快適にすごすことができる町になってます。
クアリッタ:温泉が多いことから、すこしでも気温が低くなると、あちこちで湯気が真っ白になって、あがるのが見えます。霧が出やすい地域にもなっていますね。
ノイエン:おかげでアーカイアで一番、虹が見られる街でもあるよ。快適さと美しさで勝る街は、ちょっとないでしょ。
クアリッタ:町の中でも、建物か密集しているという印象を抱かせる場所がないのが素晴らしいです。
ノイエン:市内は勝手に建物を建ててはいけなくて、届け出る必要があります。それで町の中の余裕が減ったり、狭くなった印象を与えそうだと許可がでません。
クアリッタ:その点では、シュピルディムやエタファより厳しいかもしれませんね。
ノイエン:ルリルラでの建築は、歌姫大戦以前から残っている建物の保存や、市内の公園や、植物などの保全も含めて判断されます。間違えば、レジャー都市としての評価を下げかねないと考えられるわけ。
クアリッタ:なるほど。美しい建物の外観、贅沢な空間、水と植物がもたらす自然を、町の中に維持する努力がなされているのですね。 ほかにルリルラの見所というと、どのようなところなんでしょうか。
ノイエン:食べ物が美味しい!ほかの国ほど大漁を目指さないけど、ルリルラの南や、ベグヴェーム側の内海など、それぞれの違った海産物があるし、それも近いから新鮮なまま食べられる。他では生が無理なものも、ここでならお刺身で食べられるよ。
クアリッタ:明け方に水揚げされたものを、お昼や夕食に食べられるのですもの。それは新鮮でおいしいでしょう。
ノイエン:とはいっても、他の国の街に比べると、収穫物を貿易に出したり、町を拡張していこう、というわけじゃないんだよね。
クアリッタ:ハルフェア全体で増やそうとして努めれば、作物の収穫量は、おそらく住んでらっしゃる人々を養っても、かなり余裕が出るほどの良い土地です。ですけど人々の気質か、あまり開墾などを進めている様子ではありませんし、その関係のトレーダーも少ないのかもしれませんね。
ノイエン:あんまり商売に力をいれてない、というのが本当かな。食べるものは海でも獲れるし、作物ならほっといても実がついて食料になるものもあるから。のんびりやってるのよ。
クアリッタ:ほんとうに、「のんびり」という言葉があいますね。
ノイエン:ソルジェリッタ様は、ちゃんとハルフェアが観光地であることをおわかりの上で、厳しい決まりを作ったり監督したりしてる。だけど問題になりそうもないことがらは、あまりうるさく言わないの。
クアリッタ:優れた統治者なのですね。
ノイエン:アーカイアの端っこの島だけど、良いところ!
クアリッタ:遺跡が多いところでもありますよね。
ノイエン:市内の温泉なんかには、古代から浮いたままといわれる石の浮き天井があったりするし、それらと同じ彫刻がされた壁の建物や建築が、ルリルラだけでなく、ハルフェアのあちこちで見られます。
クアリッタ:歌姫大戦どころか、どのくらい昔なのか、専門家も特定できないほどの歴史を示しています。ルリルラという名前さえ、議論の的なのですもの。
ノイエン:失われた織り歌のタイトルだというのが、もっぱらの話だよね。
クアリッタ:ルリルラという都市も、歌が失われるほど昔からあった街なのかもしれません。
ノイエン:そそ、長い歴史の末を、のんびり暮らしているわけですよ。
クアリッタ:ノイエンはそれでは落ち着かなくて、あちこち飛び回っているのですね。
ノイエン:「落ち着かない」っていうのは人ぎき悪いよぉ。見聞を広げている、くらいは言ってくれてもいいじゃない。クアリッタだって一緒に飛び回ってるわけだし。
クアリッタ:そうとも言えますね。
ノイエン:さて、お楽しみいただいた「アーカイアの車窓から」も一旦終了となります。
続けて紹介していく話題があったら、また会えるかもしれません。
クアリッタ:紹介しました街も、時間が経てば変わっていくものですし、大都市以外にもお住まいの人はおられます。それらに、それぞれ風物がございますから、機会がございましたら紹介いたしたいと思います。
ノイエン:だけど今度は、絶対、なにか移動が楽な方法を確保してからだからねっ!
クアリッタ:まあまあ、それはご覧になっている皆さんではなく、わたくしたちの課題ですから、ノイエン。
ノイエン:そっか。そうだね。じゃ、また機会があったらね〜、バイバイ。
クアリッタ:それではみなさん、またお会いしましょう。

§ ルリルラ(ハルフェア)

地図
南方の農業国と目されているハルフェアの都。"癒しの都"の名の通り、温泉を主とした湯治場として高名で、ハルフェアという国全体もそうだが、特にルリルラは観光地であることに重きを置いている。市内の規則などが厳しいことでも有名で、街路を汚したり、建物を傷つけたりといったことでも、数年の収監は避けられない。
住民に対しても、建築物に関する規制に始まり、観光客に振舞う名物料理の味の審査があったり、通りや区域によって洗濯物を公道に干してはならないと決まっている場所があったりする。
市街地は空間的にも余裕があり、それに加え計画的に公園が設けられることによって、保養地としての魅力を保持している。町並みの統一感や、古代の彫刻による美しさは、ほかの都市では見られない景観である。

建築とはいっても、遺跡と言えるほどの古い建物を保全しつつ、それらを復元などして、実際に生活場所としているため、他の町のように基礎から造るということは、極めて珍しい。
ルリルラにあるこの手の歴史建築は、そのほとんどが、市内の温泉に見られる保全対象と指定された造り物や、郊外の遺跡などと同様に、歌姫大戦よりはるかに過去に造られたものと考えられている。
このような建築物保全に関する専門家も多く、ハルフェア国内にとどまらず、アーカイア各地の遺跡や、古い建築の調査、補修といった依頼も多い。

大通りは、海に対して斜めに走る道が交差する形となっており、物流などを考慮していないこともあって、再開発といったことはなされていない。逆に、通りを歩いていくと建物で見えない中から、海沿いの道の端へ到達したときに海への展望がいっきに開くため、観光客へ強い印象を与える。

上記のような街であることは、女王ソルジェリッタを頂点とする国が船頭となって実行しており、その妥当性は否定のしようがなく、同時に厳しい。だが、それ以外の点に関しては規律は穏やかで、レジャー国家の印象を覆すほどの厳格さや取締りはない。

だが別の面では、軍事や他国との駆け引きで王家はすばらしい手腕を発揮してきた。 王家直轄地にある「殿堂」と俗称される、会堂として使われる建物は、実は絶対奏甲を一度に複数、転送可能な転送機械であるし、ファゴッツを本拠とする、とあるギルドに出資し、経済を通してトロンメル、ヴァッサァマイン、シュピルドーゼ3国間の政治的、軍事的バランスを取るようはからったり、歌姫大戦直後に黄金の工房が一機と残さず接収したはずの絶対奏甲を秘匿していたり、ポザネオ評議会ではなく、本心からアーカイアのため、黄金の歌姫のために働ける歌姫を支援したり、とその手は非常に多彩である。

遺跡の存在による古い歴史による価値、歌姫大戦以後の歴史における裏方での活躍、アーカイアの保養地であるという魅力という点においては、アーカイアに肩を並べる都市はないであろう。