歌術の国の中心地、白銀の都がフェァマインである。"白銀"は当然のことながら、冬季の降雪からつけられた。国土のほぼ半分が高地に乗っているヴァッサァマインの中でも、フェァマインは標高が高い地域であるため、同北緯の地域より寒冷で、雪に閉ざされるというほどではないが、冬場は雪が積もり、春まで溶けない根雪も見られる。
市街地は、一部の場末な通りを除けば整備が行き届いている。歴史の長い建物も多い。
城壁、城、塔などの重要施設は歌術により特に強化されて建築されており、他の都市には見られないほどの高い塔が多く、フェァマイン独自の景観を形作っている。
街の中央にあるフェァマイン城と、その周辺の数本の塔は国か、あるいはポザネオ評議会の出先機関の施設だが、それ以外の塔は、それぞれが別の歌姫による個人所有の建物である。
これらの個人の塔は、力のある歌姫が所有しており、それぞれで徒弟制度に近い形の私塾のような、小規模な組合いのようなものを形成している。力のある歌姫が、歌姫候補や新たに歌姫になった者を弟子とし、この塔、あるいはヴァッサァマイン各地で、修行をさせたりするのである。
ヴァッサァマインはアーカイア東岸貿易の主要国のひとつではあるが、海抜が高く、海にも面してもいないフェァマインは港を持たない。主港は北東すぐにあるヴォレアインカウフェが担っているため、フェァマインとヴォレアインカウフェの間の街道はかなり整備されている。
海抜が高いフェァマインと海と同じ高さの港湾都市を結ぶため、その道は地理的に急勾配となっている。とはいえ、すべて石敷きで、広い部分は貨物用に坂にしてあるが、徒歩の旅人のため、必要な場所には緩やかな階段も備え付けられている。このように物流に関して整備はされているものの、大口の売買はヴォレアインカウフェで成されるため、フェァマインは大規模な取引市場は持たない。
西に目を転じると、クリークバルドへくだっていく緩やかな斜面となっている。
途中にはクリークバルトから出てくる敵を迎え撃つ位置に砦が築かれており、フェァマイン城の見張り塔からは、この砦が置かれた地域までを監視することができる。これは、人がただ見るのではなく、その方角に開いた窓に歌術が施してあり、遠くまでを一望できることによる。
歌姫大戦は奇声蟲との戦いであり、その後に国家間の戦争はなかったとはいえ、トロンメルを対立国としてみていたのは、周知の事実と言える。
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