ノイエン:はいはーい、ノイエンです。今回の「アーカイアの車窓から」は、ファゴッツの都、ファゴッツランドからお送りします。
カタリナ:こんにちわ〜。カっタリ〜ナで〜す。ようこそファゴッツランドへ!
ノイエン:ということで、カタリナさんをゲストにお迎えしてお送りします。
今回はファゴッツランドという街を紹介するんだけど、一番の特徴はなんでしょう?
カタリナ:そうね〜、砂漠の国だけど、井戸さえ掘れば水にあまり困らないことかな。だけど地表は乾いてるから、いろんなものがダメにならずに長持ちするよ。乾物や、元から水気が関係ない商品とかはなおさら。
ノイエン:なるほど。世界中から色々なものを集めてきて、保管しておけるってことね。
カタリナ:そうそう。大抵は北から食べ物、南からはいろんな加工製品が多くやってくるね。
ノイエン:船便はザンドカイズだから、その間の道はすごい混んでいるのでは。
カタリナ:そうですよ〜。絶えず行き来があって、道の整備も大変。一部、ヴァッサァマインのヴォレアインカウフェや、船で別の港へ直接に回される荷もなくはないけど、ほとんどは一度ファゴッツランドへ運び込まれてバザールで取引されるし、必要なら「寝かせ」たりもするよ。
ノイエン:「寝かせる」?
カタリナ:そ。高く売れる時期までとっとくの。商売の基本よ、基本。食べ物なら季節によって貴重品になるし、モノでも品薄な場所へ売りに行けば高く売れるでしょ。あんまり高くすると取り引きにならないから、あまり欲張っちゃいけないけどね〜。
ノイエン:なるほどなるほど。さすが豪商の娘。
さて、町並みの方に目を向けてみましょう。中央の主要地区は石造りの建物が多くて、町の周囲では、テントが多いです。
カタリナ:そうそう。これでも女王がおられる都だもの。中央の大通りを中心に、石組みの町並みになってまーす。
ノイエン:郊外のテントは、人が過ごすには随分大きいものも多いけど?
カタリナ:あれはね、倉庫が多いの。テントの方が、保管するものが少なければ畳んでおけばいいし、多くても建て増しとか楽だから。だけど内部の環境維持に、歌術を使ったりしているところもあるから、テントとはいえ建物よりもお金がかかってる場合もあるかも。
ノイエン:中の環境?
カタリナ:そ。涼しくしておくことで、新鮮なまま保管したり、中には植物を栽培するような状態にして新鮮さを保つといったところもあるから。生花とかは、そういう保管方法が多いの。暑い地域の植物とかは、高い気温に維持するとかね。
ノイエン:それでファゴッツランドでのパレードとかでは、綺麗な花吹雪が名物なんだ!
カタリナ:そぅ〜で〜す。砂漠の国の都に舞う歓迎の華麗な花吹雪!
ノイエン:だけど郊外のテントって、無用心じゃない?
カタリナ:そりゃ、ただのテントじゃないし、警備だってしてもらうよ。別に放り出してるわけじゃないもの。
ノイエン:それはそうか。あと、石組みの建物とかは、住居が多い?
カタリナ:そうね。ファゴッツランドに定住している人は、それほど沢山ではないけど、それなりにいるし、商売で旅が多くても、帰ってきたときのための屋敷を所有している商人がほとんどだから。砂嵐がきたりすると、やっぱりテントは苦しいしね。
ノイエン:砂漠の国だけに、それなりの大変さはあるのね。
ということで、今回はカタリナさんと一緒に、ファゴッツの都ファゴッツランドからお送りしました。
カタリナ:またね〜。

§ ファゴッツランド(ファゴッツ)

地図
砂漠、商人といった冠がつくファゴッツの首都。
砂漠の真ん中に位置するが、トロンメルとの国境にある山脈から伸びている地下水脈のため、深めに井戸を掘れば水に困窮はしない。ただし、市街地での井戸の掘削には許可が必要で、それも余程、生活に必要でなければ許可はされない。整えられた町並みに不用意に穴を掘ることは規制されているわけである。
街の中央部は、大通りが貫いていて、その両側は石造りの市街地となつている。広い大通りは大バザールの開催場所ともなる。もっとも大きいバザールが開催された際には、大通りも店舗のテントでほぼ埋まり、大通りの両端から小さい店舗の列が郊外へはみ出すほどになる。
大通りから一本入ると、一般の住民の住居と大通りに面した商店の倉庫が多く、街の外周へ行くにしたがい住居の率が高まるとともに、建物1軒の大きさは大きくなっていく。これは郊外寄りに、豪商が屋敷を構えることが多いためである。
さらに街の外周へ行くと倉庫街となっており、その多くは石造りではなく大型のテントである。このテントにつかわれている布は幻糸が織り込まれて強化されており、単純な刃物などは刃が立たない。また、どの倉庫用テントでも、歌術によって接地面と結び付けられ、一般的なテントのように布をまくって出入りといったことはできない。
倉庫の中に関しても、歌術などによって、機奏英雄が言うところの「低温倉庫」や「温室」といったタイプのテント倉庫も、外見からはわからないが、それほど珍しくはない。
もちろん、倉庫の主によって、これらの監視や警備という人員も配置されている。

また、アーカイアで最も有力な商業ギルドの所在地でもある。各国を旅する人々や、秘境といわれる場所を探索に向かう歌姫や学者などの依頼を受けて、案内人を派遣することも請け負っているため、ファゴッツの商業ギルドは、一般の人々にもよく知られる存在である。そのなかで、歌にうたわれるようなファゴッツ出身のガイドもいる。

別の面として、ファゴッツランドは貿易を基盤とした中立性により、各国の政治劇の舞台ともなっている。歌姫は、基本的には評議会が構成するギルドの一員ではあるが、この度の争乱が起こるまでは縛りが緩く、各国とその女王たち、評議会、有力な上位の歌姫、工房などに組みした歌姫の、それぞれの間で駆け引きが行われた地でもある。
もちろん、争乱が始まったからといって、各国の思惑がなくなったわけではなく、ファゴッツランドを舞台とした暗躍は後を絶たない。