ノイエン: はい、はーい、ノイエンです。今回からの「アーカイアの車窓から」は、各国の都をご紹介していきます。
クアリッタ: こんにちは、みなさん。瑠璃の歌姫クアリッタです。最初の6回で、順に都を訪ねておりますが、国の紹介をさせていただいていましたので、あらためてアーカイアの6都を、それぞれ街としてご紹介してまいります。
ノイエン: で、今回はポザネオ島のポザネオ市からお送りします。正しく言うと、ポザネオは国じゃないんだけど、やっぱり私たちアーカイアの住人にとっては、重要な街だし、なんてったって黄金の工房があるから、アーカイアの技術の先端を行く大都市なのです。
クアリッタ: 町並みは姉妹都市とも言える、対岸のエタファに似てはいますが、技術的な面では進んでいます。街路の整備は中心部から街郊外まで行き渡っています。
ノイエン: 建物などの壁は、他国の街に比べると小さい石をつかった石組みだけど、強度や断熱性は変わらないか、ことによっては優れていて、そのおかけで同じ広さでも屋内のスペースは広くできます。
クアリッタ: 一部の区画には街燈も立っています。町の中程にあるポザネオ評議会のアウトリテート議事堂の周辺は、夜になると街燈の優しい明かりに満たされます。
ノイエン: 議事堂という場所なもんで、見回りの人がいたりするけどね。大変だろうな、交代があるとは言っても、夜通しの警備って。
クアリッタ: そうですね。ですけど評議会の議員の方々は、基本的にアウトリテート議事堂にお住まいですから、重要な任務ですよ。
ノイエン: なるほどね。他に大きな造りのものというと、港かな。
クアリッタ: ええ。大桟橋は一本しかないものの、エタファとの間で頻繁に行き来する貨客の船舶は多く、そのおかげで毎日、にぎやかな地区になっています。
ノイエン: 市街地の方は、市場も騒々しい雰囲気の市じゃないから、上品といえば上品だけど、にぎやかさは少ないかも。
クアリッタ: 評議会や、その関連に勤める人が多いため、食べ物などは船便で運びかまれるものが多いです。それもあって、他国の都のように、周囲に田園風景が広がる、という都市ではありません。 また都の中も、街路の整備などだけではなく、治安も良く、清潔で、利便性が高い町になっています。
ノイエン: その中に、アウトリテート議事堂を中心に、白銀の歌姫、闇蒼の歌姫、赤銅の歌姫の三姫の城からの出張所とか、各国から派遣されて常駐している事務官の人たちの仕事場とかが集まってるね。
クアリッタ: そうですね。その方々をお客とする、まかないや商売の方々が、またその周囲に場所を取っているわけです。
ノイエン: うーん、お祭りとかがあるといいんだけどね〜。私には、ちっょと静かすぎるかも。
クアリッタ: 港湾地区を除くと、静かにお仕事をされる方々が住まう街ですから。そうでなければ、アーカイア全国を見ている世界機構の役目は果たせないのですよ。
ノイエン: そーだね。国家間の調整とかもあるし、歌姫たちが所属しているのも、結局は評議会だものね。
クアリッタ: 身近なところですと、全国にある大小の歌術図書館なども管轄していますし、歌姫の首飾りや、歌姫でないとできない仕事の手配や依頼なども、黄金の歌姫を頂点とする機構のご担当ですから、その仕事は多岐にわたります。
ノイエン: 評議会は直轄の軍隊まであるからね。機奏英雄がいないと戦えないとはいえ、絶対奏甲は保有しているし、黄金の工房では、絶対奏甲を含めてアークドライブなどの技術があるし。
クアリッタ: ええ。アーカイアの政治と技術の中心地が、ポザネオ市といえるでしょう。
ノイエン: といったところで、今回はポザネオ島にあるポザネオ市からお送りしました。 それじゃ、また。
クアリッタ: ごきげんよう、みなさん。

§ ポザネオ市(ポザネオ島)

地図
アーカイアにおける政治と技術の中心地。歌姫大戦以来、200年にわたって実質上、アーカイアを管理してきたポザネオ最高評議会が、アウトリテート議事堂という施設の形をとって本拠としている都市である。
この評議会が黄金の工房に対し、これも歌姫大戦以来、各国への幻糸の利用技術、及び人材の流出を禁じていたため、その技術を利用した都市開発が可能なのも、アーカイア世界で唯一、このポザネオ市のみである。

この技術の差は、姉妹都市であるエタファと似せておくという前提の上ではあるが、都市開発、生活のインフラなどに活かされている。建物は少ない材料、薄い建材により、敷地に対しての屋内面積が広い空間を得られ、それに付随する形で市街地には上下水道も備わっている。議事堂とその周辺地域は、保安などの考慮という理由で街燈が設置されており、途切れることなく警備の人員も配置されている。

また、方法は公開されていないが、議事堂の敷地内は、それ以外の場所より幻糸密度が高く維持されており、歌姫としての能力があるものは、さらに便利に生活、行動を行うことができる環境となっている。
反面、議事堂そのものの建築は、様式的にも建材の年代においても、歌姫大戦どころか遺跡と呼ばれるにふさわしいほど古いことがわかっている。
この議事堂を中心に、歌姫大戦中、そして大戦後も様々な建て増しが行われた。周囲も区画としての整備開発も行われ、現在のアウトリテート議事堂を形作っている。この議事堂は市民の自慢の種でもあるが、一方でまことしやかに、議事堂は区画ごと要塞化されているのだと言う噂も絶えない。

市街地は大きくふたつの地域に種別され、エタファとの間を結ぶ海底道の出入り口もある港湾地区と、それ以外の市街地となる。
港湾地区は、船の行き来する行き先は、そのほとんどがエタファという点を除けば、おおかた他の町の港と、それほど変わりはない。場所としては、町の北東の一角がそれで、地区の南は大桟橋から内陸へ向かっている大通りに面し、西はまっすぐな通りが、港湾地区と隣の地区を区切っている。

一方の市街地に住む人々では、評議会に関係した勤め人の割合が高く、農業を営む人は極めて少数となっている。
これに伴い、町に入ってくる物資は、すでにエタファなどで買い付けされたものがほとんどであるため、ポザネオ市には大規模な商人同士の取引所や市場はなく、住人が買い物をする一般向け商店などの、「商店街」という意味での市場が、通りに面して広がっている。
また、旅が多くなる歌姫たちや、恵みの塔を訪ねる年頃の人々を泊り客とする宿屋も多く、宿場町としての機能も担っている。