ノイエン:はーい!「萌黄の歌姫」ノイエンでーす!「アーカイアの車窓から」17回は、ヴァッサァマインの北、海岸に面したノルディキュステの町から、瑠璃の歌姫クアリッタと一緒にお送りしまぁす。
クアリッタ:こんにちは、みなさん。瑠璃の歌姫クアリッタです。
ノイエン:虹諸島を北の海にのぞむ町で、ヴァッサァマイン北部地方の時有用な町です。
クアリッタ:この地方はフラッカと呼ばれ、ヴァッサァマインの酪農業が広く展開されています。その収穫期や出荷期になると、このノルディキュステの港から、ヴォレアインカウフェへ運び出され、ヴァッサァマイン全国や、一部は東海貿易で輸出されたりします。
ノイエン:都のフェアマインがある高地まで陸路で行こうとすると、大変だもんね。海岸沿いの街道でヴォレアインカウフェに運ぶというなら、海路で大量に運んだ方が便利だし。
クアリッタ:船便は少々高価ですけれど、この地方で収穫される、寒さで身が締まった作物は、南でよい価格がつきますから。
ノイエン:収穫したばかりだと、おいしいのかな?
クアリッタ:港から輸送するものは、持っていった先で丁度よいように早めに収穫しますから、きっとまだ渋かったり、酸っぱかったりすると思いますよ。
ノイエン:じゃあ、丁度おいしいのは、この町じゃなくて作ってる人たちのところに行ったほうがいいのね。
クアリッタ:「アーカイアの車窓から」はそういうものではないでしょう。
輸送のほかにも、虹諸島への玄関口でもあります。虹諸島はさらに北の海上にあるにもかかわらず、気候がフェアマインあたりと似ているという不思議な諸島です。
ノイエン:ノルディキュステの港なんて、真冬には氷が浮くくらい冷たくて寒いのに、虹諸島ではそんなことはないし、ノルディキュステが吹雪いてても、虹諸島では天気がいいとかね。逆もあるらしいけど。
クアリッタ:だからといって、人は住んでますし、行き来もありますから、虹諸島に在住の方たちにとっても大事な港町です。
ノイエン:海岸に沿って西へ行くと、ドンナーベルクに到達します。雷が年がら年中、鳴っては落ち、鳴っては落ちしているそうです。こっちも不思議ね。
クアリッタ:ヴァッサァマインで歌姫になろうとする人たちの中では、霊山とか呼ばれてもいて、修行をするお山なのだそうです。
ノイエン:雷って、おヘソを取っちゃうらしいよ。知ってた?
クアリッタ:いいえ。だれから聞いたんですか?
ノイエン:機奏英雄の誰か。雷を司るえらいなにかがいて、雷がなるときにおヘソを出していると、取られてしまうんだって。
クアリッタ:それは、機奏英雄の方々の世界のことでしょう。それに子どもに言い聞かせるための、「お話」のように思えます。だいたい、おヘソを出しているのは貴方でしょう、ノイエン。ヴィオレッタにあれほど言われたのに、まだコートも買ってない。
それこそ、おヘソを取られますよ。
ノイエン:そうね、肌寒いし、気をつけます。
クアリッタ:というところで、都市としてはアーカイア最北にあるノルディキュステからお送りしました。
ノイエン:それでは。


§ ノルディキュステ(ヴァッサァマイン)

地図
この規模の都市としては、アーカイア最北に位置する都市。この地域では唯一、大型の船舶が入港・停泊できる港を備えており、アーカイア東岸4大貿易港と直接の行き来はないものの、そこで取引される農作物の出荷港となっている。
これは、周辺がフラッカ地方と呼ばれる地域で農園地帯となっており、その収穫物の集積と、さらに大きい市場を供えたヴォレアインカウフェへの搬出港となっているためである。
町自体は、港はあまり大きくはないが郊外には大きな建物が多く、ほとんどが倉庫である。人口は多くないが、出荷期にはフラッカ地方全般から人が集まってくるため、かなりの人口密集が起きる。
北には、海をまたいで虹諸島がある。近海であるにもかかわらず、ノルディキュステと天候が異なる不思議な土地であることで知られている。この島にも住民はいて、ほぼ自給自足ができる人々ではあるが、それでも本島との窓口となるこの町は重要な位置を占めている。
西に旅すると、雷の山、ドンナーベルクがある。雷のことだけでも不思議なこの山は、ヌシがいるとか、神隠しにあうなどの噂が絶えないが、ヴァッサァマインで歌姫になろうとする人の中には、修行の場として考える者もいる。