ノイエン:はーい!萌黄の歌姫ノイエンです! 司会完全復帰の今回「アーカイアの車窓から」は、シュピルドーゼ最大の港湾都市ノルデハフェンシュタットからお送りします。
ゲストはうた・・・。
カノーネ:シュピルドーゼ軍北沿岸警備所属のカノーネだ。よろしく。
ノイエン:よ、よろしくおねがいしま〜す。
丁度、カノーネさんはシュピルドーゼの北側を中心に活動している部隊の人なんですよね。ノルデハフェンシュタットもなじみの町とか?
カノーネ:そうだ。ノルデハフェンシュタットは海上貿易が盛んなアーカイア北沿岸の沿岸都市でも最大級の施設をもち、多数の船舶の寄航が日夜絶え間なく行われている。
そのため町の中でも、周囲でも事故や犯罪が絶えない。それに対処するのも軍の仕事だ。
ノイエン:なるほど。人と往来が多くなれば、トラブルも増えるんですね。
カノーネ:そのとおりだ。そのため、ノルデハフェンシュタットの町も周囲も詳しい情報はあるし、私もそれなりに詳しい。
ノイエン:じゃ、地元の人としては、ノルデハフェンシュタットのウリはどんなところですか?
カノーネ:特筆すべきなのは、アーカイア随一の大規模港を擁する町だということだ。
ポサネオ島の東の内海に面する巨大港はいつかあるが、貿易の盛んなアーカイア東岸において最大の港であるこの町は、交易量でも交通量でもそれらを凌ぐだろう。
ノイエン:そんなに?
カノーネ:昼夜休まず港は活動しているしな。夜の入港はさすがに行われないが、夕刻に入港、夜間に荷物のやり取りを行い、朝に出港という商船も珍しくない。
ノイエン:それじゃ、そのために働いている人や、その人たちの飲み食いといったお店も夜通しやってるのでは?
カノーネ:そのとおり。で、夜の飲食店ともなれば問題も起こるわけだ。船乗りや海運関係者は気が荒いしな。
ノイエン:シュピルドーゼの船乗りのほか、どこの人が多いんですか?
カノーネ:貿易相手のファゴッツやヴァッサァマインとの行き来が多いので、そちらの人々が多い。ヴァッサァマインの厚手の衣装は着るのに暑いから少ないが、交易品としてもその両国の産物が多いな。
ノイエン:なるほど。町や港の施設などで特別なところってあるんですか?
カノーネ:うむ、歴史ではズェーデリヒハーフェンのものにはかなわないが、アーカイア一の港にふさわしい威容の灯台と、他の港にはない長大な「防波堤」だろうな。
ノイエン:言われてみれば、湾の中とはいえ他の港に比べても波が低いですかね。
カノーネ:大型船舶が入港できる深さの湾だが、沖から2組の大きな防波堤が設けられていて、入港に練度が必要とされるが、港内の波の静かさで比肩する港はないだろう。
ノイエン:確かに船と船の向こうに見える防波堤は、港の水深を考えると低い塔を建てるくらいの高さはありそうですね。
カノーネ:塔とは違って建物内部は気にする必要はないが、水の中で石を崩れないように組んでいくのは骨の折れる作業のはずだからな。建築者たちは尊敬に値する。
ノイエン:その偉業があって、アーカイア最大の貿易港湾都市と言えるんですね。 ということで今回は、船や人が多いだけではなく、港としての施設も整備の行き届いた港湾都市ノルデハフェンシュタットからお送りしました。
ありがとうございました。カノーネさん。
カノーネ:うむ。ごくろうだった、ノイエン。
ノイエン:次回はノルデハフェンシュタットの貿易先でもあるファゴッツのザンドカイズからお送りします。それではそれでは。

§ ノルデハフェンシュタット(シュピルドーゼ)

地図
シュピルドーゼの北に位置する大規模な貿易港。ヴァッサマイン、ファゴッツを主たる貿易先として、交易物量、船舶・人の交通量ともアーカイア最大を誇る。
特にファゴッツのザンドカイズとの間に貿易・旅客の定期航路が設けられており、一日4便が発着するこの定期船は、数多い中小貿易者からファゴッツの大商会であるベーゼンのようなクラスの貿易業者までが利用する、物流の一大動脈となっている。
一部、トロンメル領内の都市ヴェステェンデとの航路もあるが、トロンメルとの交易をしているというよりは、ヴェステェンデにいるヴァッサァマインやファゴッツの商人が相手ということが多い。

港のつくりとしても様々な手法が盛り込まれており、特に2重に設けられた防波堤により、最も内側の桟橋の静かさは他に類が無く、その防波堤の内側を桟橋として利用することで多数の船舶を収容することも出来る。それも港の水深が深いため、大型船を含めた収容能力を誇る。だが、互い違いに設けられた内側と外側の防波堤の出入りルートは、大型船舶でも余裕を持って通過できる広さはあるものの、他の港と異なる難易度が伴うため、評判が良いとはいえない側面もある。

転じて市街地は、24時間稼動しつづける港湾施設に合わせて海に近い地区は不夜城といってもよく、昼夜問わず人口密度も高く気の荒い連中も多い。それに対応して治安維持も含めシュピルドーゼ軍の部隊が常時巡回をしていて、それら両者がいるため、また飲食も昼夜問わず商売となる、という構造が出来上がっている。 町の外周地区は比較的新しい市街地となっており、都のシュピルディムに習い絶対奏甲に対応する設計を採用している。このため港から離れて内陸側の地区へ至ると、ある区画から突如道が広くなり、建物は無骨な頑丈さをもったたたずまいとなる。

一般の貿易関係者には知らされないことであるが、シュピルドーゼは幻糸鉱山の産出物や、それから建造するアークドライブや絶対奏甲のフレームやパーツなどをこの港を通して搬出しており、ファゴッツを通じて黄金の工房へ納品している。この搬送はシュピルドーゼ軍が実施しており、一般人が関わることはない。