ノイエン:はい、はーい。ノイエンでっす。「アーカイアの車窓から」第10回はトロンメルから国境を越えて武の国シュピルドーゼに入り、海沿い大街道を来たところにある大きな港町、ズェーデリヒハーフェンからお送りします。
ゲストは、シュピルドーゼといえばまずこの人、ブリギットさんです!
ブリギット: また会ったな、ノイエンどの。今回もよろしくお願いする。ただ、前回のような茶々は勘弁してほしい。
ノイエン:そうですか?人気があるのは本当なのに・・・そんなににらまないでよ〜。
さてズェーデリヒハーフェンは、アーカイアの南西側の港として最も便利で発達した港湾都市です。
ブリギット:造船はほとんど行っていないが、トロンメルの都エタファにも劣らぬ規模と船舶の行き来がある。定期船まである北側のノルデハフェンシュタットには及ばぬものの、アーカイア最大級の港と言っていいだろう。
ノイエン:アーカイアの南部を旅する陸路では必ず通過する町で、宿場町に漏れず宿と食事を提供するお店が大通りに軒を連ねています。
その大通りは、北にたどれば都のシュピルディムへ続くし、東にたどれば半島の付け根を横断して内海に面するツィナイグングへ繋がっています。
ブリギット:ツィナイグングとの街道のほうが、圧倒的に往来が激しい。やはりリゾート国家ハルフェアは魅力的なのであろうな。
ノイエン:ですけど交易の行き来はシュピルディムとの間のほうが頻繁ですよ。さすがに交易都市と都といった感じ。東への旅がのんびりしたものであるのに比べて、南北を結ぶ街道はきびきび歩いてる人が多く見えます。
ブリギット:その多くが仕事であろうからな。そういう「勤勉」は美徳である、うむ。
ノイエン:それじゃハルフェアがみんなグウダラみたいじゃないですか。それなりに勤勉ですよ、ハルフェアだって!私をみてわかるでしょ。
ブリギット:「それなり」がどれくらいなのか、貴殿が思っていそうなところと異論があるのだが・・・。
ノイエン:まじめですって。この仕事だってもう10回もやってるんだから。
ブリギット:・・・。
ノイエン:ええっと、えっと、ズェーデリヒハーフェンの見所はとても大きい港であるほかにも、アーカイアで最も古くから建っているといわれている立派な灯台です。
ブリギット:「最も古く」かどうかは専門家の間でも議論百出だが、そこいらのどの灯台よりも歴史があり、かつ壮麗な建物はそうあるまい。
ノイエン:町の名所ですね。長い時に渡ってあまたの船を導き、歴史において重要な役割を果たした人物が乗っていたこともあったんでしょうね。
ブリギット:・・・ノイエン殿は思ったより詩人であるのだな。わたしはそのような思い方はしたことがいなかった。
ノイエン:え?そ・・・そうでしょそうでしょ!港ってロマンチックな場所ですよね。
ブリギット:だが、物騒でもあるぞ。治安が悪いとまでは言わないが、真っ当ではないあきないをしている者が捕縛されることが多いのは、やはり貿易が盛んな港湾都市だからな。
ノイエン:だけど今はブリギットさんが一緒だから安心です。
ブリギット:おや、武闘派ノイエンとも思えない発言だな。アーカイア全域をまたにかけて旅をし、その旅路をさえぎる者はことごとく撃退してきたと聞くぞ。
ノイエン:ええ〜っ!?だれだれっ!そんなこと言ってんのはっ!ひど〜いっ。
ブリギット:いやクアリッタ殿と話したとき「護衛も雇わず長旅は危険ではないか」と問うたら「わたくしたちの前に立ちふさがるような命知らずな方は、ノイエンがばったばったと片付けてくれる」といったことを言っていたのだ。
ノイエン:そんなぁ〜っ。大体、大街道を旅をしていて、そんなにしょっちゅう襲われるわけないじゃない!違う違う!!
ブリギット:そうか、それは失礼した。
ノイエン:ちょっとクアリッタと話す必要があるみたいっ!
ということで時間も来ました。今回はシュピルドーゼの南に位置する大港町、ズェーデリヒハーフェンからお送りしました。ありがとうございます、ブリギットさん。
ブリギット:うむ、おつかれであったノイエン。
ノイエン:いいえ。ではみなさん、また次回。

§ ズェーデリヒハーフェン(シュピルドーゼ)

地図
西からシュピルドーゼに入ってからの街道が接続する最初の大都市。トロンメルとの国境の都市フェアトラークと同じ湾を望むが、こちらは港湾都市である。
陸路でもフェアトラークと同様に東西に行き来するには必ず通る町である。トロンメルからやってくると、大街道はここでシュピルドーゼとツィナイグングへの分かれ道となっている。シュピルドーゼの内陸へ向かうなら北のシュピルディムへ至ることができ、東へ向かえばツィナイグングを経由してハルフェアへ渡航もできる。

海運が盛んなアーカイアの東海に面した貿易都市群と比べれば中規模にとどまるが、アーカイアの南海から西海までを航行する船舶は、そのほとんどが寄航する。
アーカイア西側の港としてはエタファ、トラバンデンシュタットに並ぶ規模を誇り、石組みの壮大な防波堤の内側は数隻の大型船くらいは全く問題なく入港・停泊できる広さを持つ。都のシュピルディムと大街道で繋がっていることも手伝い、シュピルドーゼ南側の一大貿易都市でもある。
一方で武の国であるシュピルドーゼの大都市としては軍事色が薄く、シュピルディムのような絶対奏甲の活動を考慮したというような町並みをもたない。またトロンメルの2大港の灯台が歌姫大戦後に燈されたのに対し、ズェーリヒハーフェンの灯台はその起源が知られていないほど古い。
これと市街地の広さを考慮すると、絶対奏甲が現れる遥か以前から現在の広さに近い町並みを持って繁栄していたと考えられている。反面、歌姫大戦以降に急激な発展をしたり、再開発などが行われた他の都市に比べると高い建物が少なく、3階より高い建物は港の灯台のみである。