トロンメルに次ぐ領土を誇る大国。統治者はデュミナス女王。
領土内に石や金属の豊富な鉱脈を持ち、それにふさわしい加工技術を基盤にもつ産業国で、その国力を軍事力に大きく裂いている。南の対岸にリゾート地でもあるハルフェアを望む湾岸地域は、気候のよさもあって穀倉地帯となっており、広大な国土とそこに住む人々のまかないとなっている。
当然、軍事力では絶対奏甲を除いてもアーカイア随一であり、国民皆兵で質実剛健な国ではあるが、だからといって領土拡張に走っているわけではない。支配者層はそれなりに思うところがあるようだが、最高評議会との関係や、唯一地続きで接するトロンメル領との国境には「蟲の森(インゼクテンバルト)」が横たわっているため地理的にも侵攻がしずらいこと、国民は強くあろうと志していても他国を支配することを志向していないことなどにより、歌姫大戦以前からの国境線は変化していない。
国内で要所というと幻糸鉱山とシュヴァルツ・カップだが、幻糸鉱山は一般に知られた場所ではなく、シュピルドーゼ支配者層と、それを活かす技術をもつ黄金の工房との間で共同の秘所となっている。
幻糸鉱山で産出する幻糸の結晶は、その純度と硬度によってはそのまま絶対奏甲の骨格に組み込んだり、量が満たせればアークドライブのコアに据えたりできるほどのもので、実情としては技術さえあれば自国でアークドライブを含めた絶対奏甲の開発・生産が出来るまでもう一歩という状態にある。
だが、幻糸鉱山の掘り進んだ先に巨大な魔物がいるとの話が何年も言われており、実際に数年に一度くらいの頻度で、鉱員達が何者かに襲われる被害も出ている。被害が出ても捕獲・撃退などはされたことがなく、いなくなったら採掘を再開するという繰り返しである。言うまでもなくその生態はわかっていない。
シュピルドーゼが絶対奏甲の自国建造への「もう一歩」を黄金の工房に求めなかったのは、絶対奏甲を建造しても機奏英雄がいなければ運用できなかったためである。また工房からの依頼で大型製品(アークドライブの外部フレームや絶対奏甲の外装・装備など)を建造することで貿易となっていることもあり、無理を強いて工房から情報を引き出すこともはばかられるということもあった。
一方のシュヴァルツ・カップは、アーカイアで一般的に知られた「南海の美しい岬」である。リゾート地であるハルフェアを訪れる際にルートに組み込む旅行者は数多く、陸路をにしろ蟲の森をさけて海路を来るにしてもわざわざはずすことはしない。だが、この岬の近海に船を乗り入れることは禁止されており、生態を含め環境保護もなされている。
なお、北の海上には翼風諸島があるが、世界の果てとまで言われるこの諸島はシュピルドーゼの統治下にあるわけではない。
地続きな土地がトロンメルとしか接していないため、それを避けるルートとして海上輸送も力が入っている。これはアーカイアで自国と並ぶ大国相手の政治の駆け引きに関わる面と、すでに述べた蟲の森を避けるルート、というふたつの理由による。このことは、いうまでもなく民間・軍事両面のことであり、水軍はトロンメル、ヴァッサァマインなどの他国に引けを取らない規模の艦隊が編成されている。
シュピルドーゼ出身の歌姫にはブリギット、カノーネがおり、その国民皆兵の気風を体現している。共通するマントの前側には意匠として国章が大きく入っている。このマントは国から授与されるもので歌姫だけが身に付ける装束ではないが、歌姫に与えられる色があるため一目でわかるようになっている。
とはいえ、より上位の階位で与えられたマントを身に付けるため、歌姫であっても歌姫のマントを必ず着ているとは限らない。
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