コラム 段位戦の考え方


〇はじめに

『新 科学する麻雀』(以下、本編と記す)では、全テーマについて局収支のデータを、対副露押し引き以外のテーマについては半荘収支のデータを掲載した。その一方、全テーマについて、オンライン対戦麻雀『天鳳』における「段位ポイント期待値」のデータは紙幅の都合上、掲載しなかった。

ここでは、『天鳳』での段位向上を目指すプレイヤー向けに、段位戦では収支戦との違いをどう考えるべきかや、実際のデータの傾向について簡単に解説する。

〇半荘収支と段位ポイント期待値の考え方の違い

半荘終了時の最終的な持ち点を考慮した半荘収支については、本編でテーマごとにいくつかのポイントを挙げた。テーマによって多少違いがあるものの、おおむね以下の4点の傾向があった。


では、段位戦の場合はどうなるだろう。収支で競う場合との違いとして、以下の2点が挙げられる。


よって、段位戦においては、ラスを回避できるような戦略が有利になりやすく、また、持ち点を大きく稼いだトップ(「デカトップ」などと呼ばれることも多い)を目指すよりも、より確実にいい順位を確保する戦略が有利になりやすい。このことから、収支で競う場合と比較して、特に持ち点の多い場合や、平らな点棒状況のときに、ベタオリや高アガリ率低打点といった低リスク戦略の優位性がより高くなるケースが多くある。

収支戦と段位戦におけるリスク管理のイメージを下図に示す。

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局収支での結論と比較して、収支戦と段位戦とでどのように結論が動くかを点棒状況別にまとめる。


ひと言で考え方をざっくりまとめるなら、「半荘収支と比べてやや低リスク寄りの戦略を取るように基準を変える(特に持ち点が多い場合)」といったところだ。

〇段位戦のデータの傾向

ここまでで、段位戦での考え方について、全体像を述べてきた。具体的にどの程度「低リスク寄り」に基準を動かすか、という点については、テーマによって、いくぶん度合いが変わる。点棒状況・ルールによる影響の大きさについて、表にまとめた。

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上の表は、各テーマと点棒状況について、数字が小さい(0に近い)ほど局収支での結論に近く、逆に数字が大きい(3に近い)ほど、点棒状況・ルールによる影響が大きく、局収支での結論から大きく乖離することを表している。

最も強く点棒状況とルールによる影響を受けるケースとして、「相手からリーチがかかっていて、持ち点が多い場合」が挙げられる。このケースは、局収支では押し有利であっても、低リスク戦略となるベタオリを選ぶケースが多い。一方、相手が低打点の副露をしている場合などは、点棒状況・ルールによる影響の影響は小さく、段位ポイント期待値で見ても局収支での結論とほぼ同じになることが多い。

具体的な例を挙げてみる。

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テーマ6「1軒リーチ下で追っかけリーチすべきか(重要度★★★)」から、自分子vsリーチ者子の局収支差と、南1局・4万・トップの点棒状況での半荘収支差を抜粋し、段位ポイント差の表を加えたものだ。
この状況においては、本編でも述べた通り、局収支で見ると両面待ちであればすべて追っかけリーチ有利で、愚形でも2ハン以上あれば追っかけリーチ有利だった。また、収支戦で南1局・4万・トップになると、ややオリ寄りになるところが増える(具体的には愚形2ハン手が微妙な判断となる)が、そこまで局収支での結論から離れているわけではない。

一方、段位戦で南1局・4万・トップになると、特に愚形の場合で状況は一変する。初手に無スジを押す場合で、打点が4ハンあっても、段位ポイント差はマイナスとなり微差オリ寄りとなっている。素点が考慮されない段位戦でトップ目であれば、8000点をさらに加点するよりも、放銃して順位が落ちないことを優先して、ベタオリを選ぶことも十分選択肢となりうる。なお、両面待ちの場合は、段位戦トップ目でも、1300点のリーチのみで追っかけリーチを打っても大きく損するわけではないようだ。

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上の表は、テーマ14「1軒副露仕掛け下、1シャンテンから攻めるべきか(重要度★★)」から同様に、自分子vs副露者子の局収支差の表を抜粋し、南1・4万・トップの半荘収支差と段位ポイント差の表を加えたものだ。
相手がリーチのときとは異なり、段位戦のトップ目であっても、局収支での結論と比較して、大きく乖離することはない。

このように、段位戦で、低リスク戦略に結論が動くかどうかは、テーマによって異なるが、大雑把にでも、「対リーチならオリ寄りにする、それ以外なら通常通り」と覚えておくだけでも、実戦での判断に役立つものと思う。

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