実銃レポート「STI2011 MARAUDER」

 

プラクティカルからタクティカルへ
レースガンテクノロジーを秘めたファイティング2011

 

 STIインターナショナル(以下STI)は1980年に設立された1911ガバメントスタイルのカスタムハンドガンを製造しているガンメーカーである。中でもUSPSA/IPSCを中心としたアクションシューティングシーンでもっとも使用されているハイキャパシティ(多弾装)フレーム「2011」シリーズは同社を代表する製品である。

 

実銃レポート「STI2011 MARAUDER」

 

 2011は1911ガバメントをベースとしたハイキャパシティマガジンが使用できるようにポリマー製グリップと金属製フレーム(アッパー)をモジュール化したユニークなフレームである。開発は1993年頃、STIの前身であるTripp Research ,Inc.の創設者であるVirgil TrippとSandy Strayerによって行なわれた(社名のSTIはStrayer-Tripp,Inc.からきている)。

 

実銃レポート「STI2011 MARAUDER」

 

 開発当時すでにカナダのパラオーディナンスによってハイキャパシティマガジンを使用する1911は生まれていたが、STIでは2つの異なる素材を組み合わせることによる軽量化と、異なるフレーム&グリップデザインを組み合わせることができるモジュラリティを実現した。現在では1911をベースとしたハイキャパシティバリエーションの中でもっとも成功したデザインとなっている。

 

実銃レポート「STI2011 MARAUDER」

 

 STIでは2011フレームのみの発売も当初から行なっており、これまでに様々なカスタムガンメーカーによって2011フレームを使ったカスタムガンが作られており、またSTI自身も2011フレームを使用したコンプリートモデルのバリエーションを販売している。今回はSTIによるコンプリート2011の中でもタクティカル向けファイティングガンとして開発されたMARAUDER(マローダー)を紹介しよう。

 

 

実銃レポート「STI2011 MARAUDER」

 

 MARAUDER(マローダー)とは英語で略奪者、襲撃者を意味する。STIが作るコンプリート2011シリーズの中でも法執行機関及びセルフディフェンス用として作られたモデルである。ブッシングバレルとショートダストカバーを組み合わせた軽量なモデルで、コルト製M1911A1の1,113gに対して1,105gとほぼ同じ重量を実現している。$2,200程度の市場価格とSTI製2011ハンドガンのシリーズとしては中間的な価格帯に位置している。口径のバリエーションとして9mm×19、.45ACPが用意されれている。今回紹介しているのは9mmバージョンだ。

 

 

実銃レポート「STI2011 MARAUDER」

コルト製M1911A1(写真下)と2011フレームを装備したSTI製MARAUDER。基本構造は同じだがモジュラーフレームをはじめ100年分のアップデートが施されている

 

 

 STIの2011フレームの特徴は、スライド&バレルとイグニッションパーツを支える金属製のフレームと、樹脂製のグリップ&トリガーガード部分からなる2ピース構造にある。フレームにはダストカバーの長さ、厚さのバリエーションが用意されており、グリップ&トリガーガード部分にはグリップの長さ、色のバリエーションがあり、最近ではアルミ、ステンレススチールといった金属素材を使ったバリエーションも用意されている。

 

 

実銃レポート「STI2011 MARAUDER」

2011モジュラーフレームの特徴的なダストカバー部分。スライド前部まで伸びるフルレングスと、ノーマルに準じたショートがそれぞれ用意されている。さらに厚さはスライドの幅よりやや狭いナローフレームと、スライドと同じ幅まで広げたワイドフレームがある。MARAUDERではショートダストカバーにウェポンライトマウント用のレールが刻まれたバリエーションが使用されている

 

実銃レポート「STI2011 MARAUDER」

グリップはトリガーガード下のハイグリップカット加工の追加とともに、滑り止めのスティップリング加工を施した。中指が当たる部分はドローの際に滑り込みやすくするためスムーズのままとしている。この辺もシューターそれぞれの好みに合わせて加工できる

 

 

 STI 2011は価格からもハイエンド1911の部類に分類され、組み立てはSTIのガンスミスによって行なわれておりセミカスタムビルドに位置する製品である。スライドを引いた時に感じられるタイトさとスムーズさ、4ポンド程度に調整されたトリガーとともに高品質なハンドガンであることが実射を通じて感じられる。

 

 

実銃レポート「STI2011 MARAUDER」

2011フレーム最大の特徴がハイキャパシティマガジンを使用していることだ。今回のレポートで登場している140mm長のマガジンで9mmパラベラム弾や.38スーパーが20~22発装填できる。一方で弱点は強度が低く、頻繁なメンテナンスが必要であった。STIは昨年より装弾数を1発減らしつつ、より厚いステンレス材を使用し、デザインを大幅に見直した新型のバージョン2マガジンの販売を開始(写真右側、左側が旧型マガジン)。信頼性が著しく向上している

 

実銃レポート「STI2011 MARAUDER」

大型のマグウェルによってマガジンのインサートは楽に行なえる

 

実銃レポート「STI2011 MARAUDER」

MARAUDERの撃ち味は実にスムーズ。競技射撃の場で磨かれたテクノロジーと、新しいバージョン2マガジンの組み合わせで高い信頼性とパフォーマンスを合わせ持つコンバットハンドガンとなった

 

実銃レポート「STI2011 MARAUDER」

マガジンが空になるとスライドストップによってスライドは後退状態で固定される。バージョン2マガジンは確実に作動し、マガジンキャッチを押すと勢いよく飛び出してくる

 

実銃レポート「STI2011 MARAUDER」

ウィルソンコンバットのブレットプルーフエクステンデットスライドリリースによって操作性が向上している

 

 

 カルフォルニア州ロサンゼルス市警(LAPD)ではシングルアクションを持つ1911ガバメントタイプの銃を使用する場合、特別な検定をパスする必要があるが、2011の場合にも同様の規定が設けられている。3年ごとに行なわれるハンドガンの選別において2011シリーズは、これまで繊細なマガジンへの不安から認可されていなかった。2018年に行なわれたバージョン2マガジンを使った5,000発の耐久テストをパスしたことで、LAPDでは2011シリーズのハンドガンの職務中での使用を認可した。

 

 

実銃レポート「STI2011 MARAUDER」

写真はLAPDのポリスアカデミーの教官が使用しているMARAUDER。口径は9mm×19。写真のホルスターはレンジでのテスト使用のみであり、実際の職務ではリテンション付きのデューティーホルスターを使用する

 

 

 STIのMARAUDERの9mm口径モデルは、数多くある9mmオートピストルの中でもっとも撃ちやすく、撃っていて楽しいモデルである。1911ガバメントの操作性の良さをそのままに、多弾装マガジン、狙いやすいサイト、引きやすいトリガーを備えたバランスのいいハンドガンだ。2011モジュラーフレームは非常に頑丈であり、豊富な1911ガバメント用パーツとカスタムパーツ、メンテナンスノウハウを共有できるため、カスタムとメンテナンスが非常に楽に行なえる。
 これまで、アクションシューティング競技のスタンダードとして知られていた2011モジュラーフレームを使用したカスタムガバメントだったが、今後はその高い信頼性を生かしてタクティカルの場でも活躍するようになっていくだろう。

 

 

実銃レポート「STI2011 MARAUDER」

STIのMARAUDERでデモンストレーションを行なう筆者。筆者がもっとも多く撃つのがSTI2011モジュラーフレームを使ったカスタムモデルである。その多くがフルカスタムの競技用モデルだが、今回のMARAUDERもセミカスタムながら非常に高いクオリティを持っておりタクティカルな目的で使える頼もしいハンドガンである

 

 

TEXT&PHOTO:SHIN

 

 


この記事は月刊アームズマガジン2019年9月号 P.120~127より抜粋・再編集したものです。

 

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