実銃レポート B&T APC9 Pro

 

米陸軍が選んだスイス生れの最新型サブマシンガン

 

実銃レポート B&T APC9 Pro

 

 

B&T AG

 

 B&T AGは1991年にスイスで創立された銃器メーカーである。設立当初はサプレッサーやレールハンドガード、スコープマウントの製造を行なっていた。ドイツのヘッケラー&コックやスウェーデンのエイムポイント、米国のシュアファイア等の代理店としても活動し、多くの小火器及び関連アクセサリーを販売している。

 

実銃レポート B&T APC9 Pro

 

 ステア―のサブマシンガンTMPのライセンス生産品であるMP9の製造を2004年にスタートしてから銃器メーカーとして急成長し、現在もっとも注目されている銃器メーカーである。ボルトアクションのスナイパーライフルや40mmグレネードランチャーにはじまり、5.5mm×45 NATO弾を使用するアサルトライフルAPC556、7.62mm×51 NATO弾を使用するバトルライフルAPC762、そして今回紹介する9mmパラベラム弾を使用するサブマシンガンAPC9が同社のウェポンシステムとして提供されている。

 

 

APC9 Pro

 

 APC9シリーズは共通の構造、操作性を誇る同社のウェポンシステムの中でも、9mmパラべラム弾と.45ACP弾仕様が用意されたサブマシンガンである。ストレートブローバックによる作動を持つシンプルな構造だが、アルミ引き抜きによるレシーバーとポリマー製ロア、M4カービンに準じた操作性を持つモダンなサブマシンガンである。

 

実銃レポート B&T APC9 Pro

 

 2019年に発表されたAPC9 Proは、独立したアンビチャージングハンドル、交換可能なグリップ、そしてロアの交換によってそれまでのB&T製専用マガジンのほかに、グロック用マガジンが使えるロア、SIG P320用マガジンが使えるロアが用意されており、そのショートモデルがAPC9 Pro K.である。そして今年、APC9 Pro K.が他のライバルを押さえて少数ながらも米陸軍に採用されたことにより大きな注目を集めている。

 

 

サブマシンガン(SMG)

 

 今回紹介しているAPC9 Proの短縮バージョンであるAPC9 Pro K.が、今年米陸軍に採用された。
 SCW(サブ・コンパクト・ウェポン)プログラムと呼ばれたコントラクトは、警備任務や個人防衛の際に必要となる小型の銃器を求めた内容であり、H&KのMP5や、SIGのMPXなどが参加し、50,000発の発射耐久テストを含め、サプレッサーとの適合やMHSプログラムとともに新規に採用されたXM1153ホローポイント弾を使用した際の作動性などがテストされた。

 

 

実銃レポート B&T APC9 Pro

APC9 Pro
米国の銃規制に合わせてセミオート化され、SB製ピストルブレイスを付けた状態

 

実銃レポート B&T APC9 Pro

ピストルブレイスを展開した状態

 

 

 関係者の間ではMPXの採用が予想されており、APC9 Pro K.の採用は多くの驚きを持って迎えられた。MPXを抑えて採用されたAPC9 Pro K.は優れた耐久性と汎用性を持っていると判断されての採用であり、米陸軍は350挺をはじめ、今後1,000挺のAPC9 Pro K.及び周辺アクセサリーを購入する予定となっている。米陸軍が最後に採用したサブマシンガンは1943年採用のM3グリースガンであり、実に76年ぶりのサブマシンガンの新規採用である。

 

 

実銃レポート B&T APC9 Pro

MP5と同様の3ラグデザインのマズル部分。サプレッサーはこのラグを介して取り付けられる

 

実銃レポート B&T APC9 Pro

アンビタイプのチャージングハンドルはボルトと独立した構造となっておりボルトの前後動とは連動していない

 

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ハンドガードと一体となったレシーバーはフラットなトップレールを備え、アイアンサイトやオプティクスの取り付けができる

 

実銃レポート B&T APC9 Pro

SBタクティカルのピストルブレイスは左側のロックを解除することで折りたたみできる

 

 

 過去のUZIやイングラム、スターリングやトンプソンなどに代表されるサブマシンガンは基本的に小型で威力の限定的な拳銃弾をフルオートでバラまくための安価な銃器として開発されてきた。それに対してモダンなサブマシンガンは、セミオートを中心に高い精度で射撃ができるピストル口径のカービンというカテゴリーで運用されている。この代表がMP5であり、近代的なSIG MPXや、CZのスコーピオンEVO3等、新たに開発されているサブマシンガンも同様の特徴を持っている。

 

実銃レポート B&T APC9 Pro

 

 近年生まれたサブマシンガンの特徴として、ポリマーやアルミ等を多用し、軽量化が推し進められており、セミオートでの命中精度を向上させるためにクローズドボルトからの発射となりトリガーやセーフティ、マガジンキャッチ等のコントロールレバー類もM4カービンと同様の運用ができるように考慮されている。90年代以降、コンパクトなアサルトライフルの台頭によりサブマシンガンは無視されてきたカテゴリーであったが、ホローポイント弾の研究によって高威力化した9mmパラベラム弾と高い消音性能を持つサプレッサーとの組み合わせによりサブマシンガンが再注目されているのである。

 

 

実銃レポート B&T APC9 Pro

マガジンキャッチ、ボルトストップ、セレクターレバーのコントロールレバー類はすべてアンビとなっている

 

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ストレートタイプのマガジンは半透明のポリマー製

 

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フィールドストリップしたところ。シンプルでメンテナンス性に優れていることがわかる

 

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シューティングインプレッション。作動不良の予兆をまったく感じさせない確実な作動。特にカスタムパーツとして用意されたガイズリートリガーとハイドロリックバッファーの組み合わせで素早い速射が可能だ

 

実銃レポート B&T APC9 Pro

マガジンを装着する。マグウェルは広げられており、装着は素早く行なえる

 

実銃レポート B&T APC9 Pro

ボルトキャッチ、マガジンキャッチはグリップを握った人差し指、およびサポートハンドの親指を使って操作できる

 

実銃レポート B&T APC9 Pro

サイレンサーコーのオメガ9Kサプレッサーを取り付ける。3ラグアダプターを追加することでワンタッチでの取り付けが可能

 

実銃レポート B&T APC9 Pro

サプレッサーとホローポイント弾を組み合わせても作動は快調。B&Tはサプレッサーメーカーとしてスタートしており、近代的な戦術に欠かせないサプレッサーとの併用は設計段階から盛り込まれているのだろう

 

 

 近代的なサブマシンガンの代表であるMP5の老朽化によって買い替え需要が高まる中、B&TのAPC9 Proシリーズは米軍採用によって一歩リードした状態にあるといえるだろう。MP5が開発された時代には要求されていなかったアクセサリー取り付けのためのピカティニーレールの装備、軽量なアルミレシーバーとポリマー製パーツの多用による軽量化、サプレッサーとの併用を前提とした作動調整、ホローポイント弾を確実に装填できるマガジンデザインなど、近代的なAPC9 Proの持つ魅力は大きい。B&Tは今後も優れた銃器とアクセサリーを生み出すメーカーとして注目され続けるだろう。

 

 

TEXT&PHOTO:SHIN

 

 


この記事は月刊アームズマガジン2019年8月号 P.102~109より抜粋・再編集したものです。

 

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