CZ75 Tactical Sports Orange リアルガン製品レビュー 【2018年3月号掲載】

CZ75 Tactical Sports Orange

 

この重量級ダストカバーは印象的だ。バレル長は5.23インチと、1911よりもほんの少し長い(実射シーンはこちら!)

 

CZ USA社から一昨年末にリリースされ、IPSC競技のリミテッドクラス用として驚くほどの人気を呼んでいるのが“CZ 75 タクティカル スポーツ オレンジ(TSO)”モデルだ。同じ名前を持つ“タクティカル スポーツ”モデルから、さらなるアップスケールを見せる“TSO”に注目したい。

 

何はともあれ、まずはその鮮やかなオレンジカラーのアルミグリップパネルが目に飛び込んでくる。コンペティション(競技用)ガンならではの色使いだが、その薄くきりっとした姿は、ガン自体の完成度を誇示しているように見える。思わず握ってみたくなる繊細さを纏ったグリップは、極限までシェイプアップされ、ハイグリップを実現するべく削り上げられているのがわかる。トリガーガードも精妙にリシェイプされ、他のモデルに比べると、あくまでも薄くたおやかなラインに仕上がっており好感が持てる。

 

実は以前、同じくCZ社のコンペティションモデルである“シャドウ2”と、TSOのベースモデルともいえる“タクティカル スポーツ(TS)”を撃つ機会があった。箱出しの状態にもかかわらず、精度も充分で撃ちやすく、「あれ、CZ頑張っているなあ」といういい印象を持った記憶がある。ただし“シャドウ2”はダブルアクション/シングルアクションというファイアコントロールそのものが好みではなく、SAO(シングルアクション オンリー)となった“TS”もそのぽってりとした姿や荒いチェッカリング、さらにはそそり立った前後サイトなど、どうも食指が動かずスルーしてしまったという経緯がある。

 

今回借りることのできたTSOのオーナーは、意外なことにあのヴィクター・ロペスなのだ。元海兵隊のスカウトスナイパーにして現役LAPDオフィサー、さらには自身が経営するタクトレスクールのメインインストラクターでもある、いわばリアルガンファイトのプロフェッショナルともいえる猛者が、コンペティションモデルを手に入れた!? 最近は好んでSIG P320をキャリーしているが、もともとバリバリのグロック使いでもある現役オフィサーだ。そんな彼がこのTSOを手に入れたと聞いたときには、はっきりいって面食らっってしまったというのをここで白状しておく。ガンに関しては実用一点張りともいえる彼が、コンペティションガンを買うなど、想像もできなかったのだ。

 

「まあとにかく見てみろよ。お前が古いコンペティションガンを好きなのは知っているからな。どうして私がこれを手に入れたか、実際に撃ってみれば納得できると思うぞ」とまあ、嬉しいオファーがあったのである。ずいぶん前になるが、SA(スプリングフィールド アーモリー)社が出していた“P9”(CZ75のコピー)カスタムを使い倒していた時期がある私としては、お言葉に甘えて早速参上することにしたのであった。

 

当日。まず、TSOを持った瞬間に「ああ、これは別物だ…」と思い知らされた。グリップの握り心地がまるで別世界なのだ。中指の収まり感、ビーバーテールのあたり具合、手のひらに感じるバックストラップのフィット感…すべてが違う。リアサイトから臨むフロントサイトとターゲットのコントラストも上々だし、両親指の収まりも自然で、私にとってはほんの少し近すぎる左親指のサムレストも、自分で少々アジャストすれば心地よくリコイルを押さえ込んでくれそうだ。ここで、ベースモデルである“タクティカル スポーツ”から進化した点をリストしてみよう。

 

・アジャスタブル ロープロファイル リアサイト
・ハンドフィットされた冷間鍛造バレル
・サムレスト(オプションでマイクロドットサイトのフレームマウントも装着可能)
・各部がアップグレードされたフレーム
・マガジンウェル
・オレンジ アルミグリップパネル
・リデザイン フルサイズ ダストカバー
・薄くリシェイプされたトリガーガード
・より深く削り上げられたビーバーテール下とトリガーガード下
・スーパーライト&クリスプなトリガープル

 

しかし何よりも圧巻なのは、そのシングルアクショントリガープルだ。これは確実に2ポンド(約900g)以下だとしか思えない軽さと絶妙な切れ味なのだ。私が使い慣れていた1911カスタムのトリガープルは、軽くても2ポンド、通常は2.5ポンドにセットしてもらっていた。後で計測して見ると、TSOのトリガープルは、10回の平均が1.71ポンド(約775g)とでた。このヴィクターのTSOはまだ1発も撃っていない新品だったので、正真正銘の箱出し状態でこのトリガープルということになる。ファクトリーガンとしては、最軽量の部類に入るだろう。

 

次に感じるのは、その余りある重量だろう。47.5オンスというから、約1.35kgということになる。普通の5インチバレル1911が1kg前後、グロック17なら710gしかないので、この重さ、それもフロントヘビーなTSOのバランスは、コンペティションモデルならではのものだろう。基本的にフロントヘビー=レスフェルトリコイル(反動が軽く感じる)なので、連射2発目以降の撃ちやすさには期待が持てそうだ。

 

Caliber:9mm Luger / Magazine Capacity:20 / Frame:Steel / Grips:Thin Aluminum / Trigger:SA only / Sight:Adjustable Target / Barrel:5.23in cold hammer forged / Weight:47.5oz / Overall Length:8.86in

 

バレルとスライド、スライドとフレームは1挺ずつハンドフィットされているので、ほとんど遊びのない仕上がりを見せる

 

誇らしげに入れられたタクティカル スポーツのロゴ。このサムレストは、少々張り出しすぎではなかろうか。自分でシェイプしてみたくなる

 

マズルはスライドとは別パーツで保持されている。この部分のガタもゼロだ。リコイルスプリングガイドのブッシングは樹脂製だ

 

スライドトップにはセレーションが入れられている。フロントサイトはファイバー入りのものが付いている。エレベーション調整はリアサイトのスクリューを回して行なう

 

このバックストラップの造形は格別だ。自然な位置にサムセーフティがある。リアサイトのウィンデージ調整はロックナットを緩めてドリフトさせる

 

TSO唯一のデザインとなるトリガーガード。優雅なラインを描いている。スライドストップ前のサムレストは、左手親指で支えることにより安定した保持が可能になり、リコイルを押さえ込む効果も高い。これを取り外し、マイクロドットサイトのマウントを装着することもできる

 

実射

 

さて、楽しみなのはTSOの撃ち心地とアキュラシー(精度)、そしてそのリライアビリティー(信頼性)だ。今回は4種類の9㎜弾を用意して実射に臨んだ。マガジンはコンペティションモデル専用の20連が3本付いてくる。スタンダードなCZ75B用マガジンとの互換性はないという割り切り様だ。なにせ箱出し新品なので、まずはファンクションテストから始める。バリケードの陰から腕だけを伸ばして1マガジンを撃つ。安定に欠ける片手撃ちだが、ジャムはないし、どこにも変調は見られないので、両手でのプリンキングに移る。とにかくフルマガジンをいろんな保持方法で撃ってみるのだ。

 

ここで顕著なのは、そのリコイルの軽さだ。20ヤードほどから、スチールターゲットに向けて撃つのだが、かなりのスピードで2連射するダブルタップが楽々と決まるのだ。これはリコイルからの戻りが速いのと、良好なトリガープルの賜物だ。まるで自分が上手くなったかのように錯覚してしまう。ハイグリップが可能で、構造上バレルのセンターがリコイルの支点に近い等、リコイルがマイルドになるデザイン上の効果もあるが、やはり全体の重量、そしてフロントヘビーなバランスが大きく影響していると思われる。

 

ここでアキュラシーテストに入る。TSOのフィット&フィニッシュを見る限り、かなりの精度が期待できそうだ。まず1挺ずつハンドフィットされたというスライドとフレームのフィッティングには、ほとんどガタというか遊びがない。その動きもスムーズで、あちこちポリッシュしてあるのが体感できるのだ。これまた手仕上げだというスライドとバレルのフィッティングもタイトで、これならCZ社自慢のコールドフォージド(冷間鍛造)バレルの性能を発揮できるというものだ。

 

そして結果は予想どおり上々であった。テストは、25ヤード(約22.5m)からレストを使って5発撃ち、そのうち1番離れた1発をフライヤーとしてないものとし、4発の弾痕のセンターからセンターを計測した。 結果は以下の通り。 

 

PMC 115gr FMJ    2.5インチ(約63mm)
Federal HST 147gr JHP    2.25インチ(約57mm)
Speer 124gr FMJ    1.25インチ(約32mm)
PRIME 124gr FMJ    1.20インチ(約30mm)

 

予想したとおりの素晴らしい結果がでた。オープンサイトでの結果が上記なので、ドットサイトを使えばさらなるまとまりの向上も期待できそうだ。その後もリロード弾も交えて2人で400発ほどを消化した。ジャムはゼロで、軽すぎるトリガープルも慣れてしまえば問題ないという結論に達した。この程度の弾数ではそのリライアビリティに言及するのは難しいが、エンプティケースの飛び方や方向等、ポジティブな印象を受けた。

 

ただし、このガンはいくらコンペティション向けとはいえ、ビギナーが入門用に使うには少々ハードルが高そうだ。繊細なトリガープルとフロントヘビーという微妙な要素を兼ね備えており、コントロールが決まればいい結果に結びつくが、その制御はある程度の経験と力量が必要となりそうだ。それにしても、これほどポテンシャルの高いガンが、ファクトリーメイドで1,700ドルほどで買えるというのだから、やはり銃の世界はたまらない。

 

箱出しのシングルアクションプルが、10回の平均で1.71ポンド(約775g)というから恐れ入る。ファクトリーガン中、最軽量ではなかろうか

 

CZ TSOは、この巨大なケースに入ってくる、リコイルスプリングやメインスプリングはそれぞれ2種類の重さのものが付属しており、装弾にあわせてチューンすることができる。マガジンはこのモデルオリジナルのもので、CZ75Bのものは使用できない。そのためかマガジン3本が最初から付いてくる

 

ヴィクターにドロウの軌跡を見せてもらう。ホルスターから抜いた状態からスタートする

 

身体に引き付けた状態でマズルがターゲット方向を向き、サポートハンドがグリップに向かう

 

グリップが決まったら、ガンをターゲットに突きつけるように押し出す

 

完全にトリガーフィンガーがガード内に入り、ファイア!

 

通常分解。スライドのレールやバレルのランプ部分など、それぞれハンドポリッシュされているのがわかる

 

ヴィクターのでかい手で握り締められると、リコイルはぴょこんとパルス並みになってしまう。

 

今回のテストアモ達

 

エンプティケースは毎回ほぼ同じ方向、距離に勢いよく飛ぶ。信頼性が高い要素のひとつだ

 

発射の瞬間。発射炎が少しだけ見える

 

レストを使うとリコイルの支点がマガジンベースになるため、リコイルは大きくなる。しかしコンプなしの9mmなのにこの程度しかない

 

サムレストはこのように使う。左手親指がフレームを下方向に押さえ込むので、リコイルを押さえ込む効果がある

 

「こいつはよくできたコンペティションガンだ。この値段でこの撃ち易さ、精度の高さは、バーゲンだな」

 

25ヤード(約22.5m)からのアキュラシーテスト

 

Speer 124gr FMJの結果。1.25インチ(約32mm)だ

 

PMC 115gr FMJの結果。2.5インチ(約63mm)というのは決して悪い数値ではない

 

Federal HST 147gr JHPは2.25インチ(約57mm)という結果に。ポリスのデューティアモとして人気のある弾薬だ。リコイルは一番きつい

 

今回のベストとなるPRIME 124gr FMJは1.2インチ(約30mm)だ。10発撃ってみたが、弾着は広がってはいない。2発をフライヤーとして除き計測した

 

ハイパフォーマンスを予感させる仕上がりを見せるCZ TSOはアキュラシーテストでもかなりの結果を残してくれた。繊細なカーブを見せるトリガーガードやハイグリップを実現するために削り込まれたトリガーガード下とビーバーテール周り、そしてあくまでも薄く鮮やかなグリップパネル、前後ストラップのチェッカリング等がすべていい結果に結びついている。これで1,700ドルは安い

 

Victor Lopez(ヴィクター・ロペス)

 

元USマリーンのスカウトスナイパー、現役LAPDオフィサー、シエラエレメントというタクトレスクールのオーナーでもある。このCZ75 Tactical Sports Orangeは彼の私物だ

 

By Hiro Soga