カラシニコフの新型ハンドガン「PL-15」を実射!【2019年1月号掲載】

 

ARMY2018レポート第2弾

 

ARMY2018レポート第2弾
Kalashnikov & Russian Small Arms

 

 

先月号に引き続き、モスクワ郊外で行われた巨大軍事博覧会「ARMY2018」および、その直前に開かれたカラシニコフ社による新型銃器の試射会の模様をレポートする。「AK-12」ほか新たなライフルを多数発表した一方、ハンドガンにも新作が見られた。それが「PL-15」である。

 

■ひさびさのロシア製新型ハンドガン

 

 新型小銃「AK-12」と並び、カラシニコフ社の試射会で注目を集めていたのが、この「LEBEDEV PL-15」ピストルである。
 PL-15は、2年前の「ARMY2016」で発表されたのち、開発が進められ今回は完成版の披露となった。旧イズマッシュ社の倒産後、マカロフなどを生産していたイジェメック社(バイカル社)と合併するかたちで誕生した新生カラシニコフ社にとっては、初めてとなる独自開発のハンドガンである。銃器設計者Dmitry Lebedev氏のもとで2014年より開発がスタートし、軍や法執行機関用途のハンドガンとして充分な性能と耐久性が考慮されている。また機能面では西側のハンドガンを強く意識した機能拡張性を持たせようとする意図が見て取れる。長らく新モデルの登場を見なかったなかで、待望の新型ロシア製ハンドガンと言えるだろう。この“完成版”PL-15を、さっそく筆者も試射した。

 

ARMY2018レポート第2弾

 

■思いのほか握りやすくコントローラブル

 

 まず、PL-15を手にして感じたことはグリップの握りやすさ、そしてスライドの低さからくるサイティングの容易さだろう。握り心地はCz75やシュタイヤー(ステア—)M9のようであり、スライドの低さはH&K P7にも通じる。どちらも筆者が好むモデルであり、PL-15は、その“良いとこどり”のように感じられた。

 

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 フレームは完全新規設計のアルミ合金製で、リアまで覆う立体的なグリップとあわせて構成されている。フレームはまた、用途に応じてポリマーモデルも用意されているとの話だが、今回試射・展示に用いられたのはアルミ製モデルのみであった。
 トリガーアクションはダブルアクションのみでコンシールドハンマー(内蔵ハンマー)方式を採用している。トリガープルは、やや重く感じられた。後日インターネットで調べたところ4kgとあり、トリガー・トラベリングは7mm。軍や法執行機関での使用を前提とした安全面での配慮なのかもしれない。トリガーのフィーリングについては、カラシニコフ社に招聘されPL-15を試射した元デルタ隊員ラリー・ヴィッカース氏が絶賛したようだが、筆者も同感である(試射の模様はカラシニコフ社YouTubeチャンネルで公開されている)。過去にドイツ、オーベンドルフでH&K社のSOCOM MK23を試したときに感じた、“凄み”とも言うべき印象を久々に受けたハンドガンであった。

 

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フルサイズのPL-15を試射する筆者

 

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PL-15のコンパクトモデルであるPL-15K。野暮ったさのある銃口まわりのデザインがすっきりとカットされており、フルサイズモデルより洗練された印象を受ける。装弾数は13+1発

 

■モダンハンドガンへの第一歩

 

 PL-15の重量は800g(装弾時990g)。全長は207mm。弾丸は西側標準の9mm×19パラベラム弾を使用(現在、ロシア軍でも9mmパラベラム弾が普及している)。マガジンは15発装弾だが、18発装弾のロングマガジンも用意されている。
 PL-15はブローニングタイプのコンベンショナルなロッキング機構をバレル下部に持つディレイド・ブローバック機構を採用している。スライドの前後にはセレーションが刻まれているが、これは特殊部隊員がスライド前部から全体を包み込むように握り、コッキングすることが多いためだと言う。
 ロシア的武骨さを残しつつも、モダンハンドガンを目指して卒なく仕上げたモデル──といった印象を受ける一挺である。

 

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軍や法執行機関向けを意図して開発されたPL-15はフレームにピカティニータイプのレールを備える。また、サプレッサーを装着するため銃口部にネジ切りされたスレッデッドバレルも用意されている。なお、サプレッサーを装着するとアイアンサイトの視界を覆ってしまうため、ハイプロファイルなサイトに交換することもできる

 


 

カラシニコフ社の現在

 

■複数のブランドを内包する

 

 「カラシニコフ」社の前身は、多くの読者がご存知のように「イズマッシュ(イジェフスク機械製作工場)」である。旧ソ連時代の国営造兵廠にはじまり、連邦崩壊後に民営化された同社は、カラシニコフ小銃シリーズを中心とした小火器メーカーとしてロシア軍事産業の一翼を担ってきたが、2012年に経営破綻を迎えている。一度は破綻したものの、ピストルメーカーとして知られる「バイカル(イジェメック)」社などと合併し、小火器やさまざまな機械産業を内包する総合兵器企業「カラシニコフ」となった。現在、その傘下には小火器ブランドである「カラシニコフ」、「バイカル」、「イズマッシュ」に加え、ドローン開発の「ZALA AERO」、船舶部門の「リビンスク造船所」、「Vimpel」などが含まれる。
 名前こそAKの生みの親、カラシニコフ氏の名を冠しているものの、現在では単なる銃器メーカーに止まらない。それは『ARMY2018』カラシニコフ・パビリオンの展示からも理解することができるだろう。

 

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カラシニコフ社パビリオンの前に置かれた二足歩行ロボット「IGOREK」。軍事用として“開発中”と同社は謳っているが真相は不明

 

■多角化するカラシニコフ社

 

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 試射会のあと、パビリオンに招かれた招待客を前に派手な演出で発表されたのは、銃器ではなくEV(電気自動車)や電動バイクだった。イズマッシュ時代より自動車製造は行われていたが、今回のEV事業はより大規模に民間用および軍・法執行機関用への展開が謳われ、あわせてUAE(アラブ首長国連邦)への供給も発表された。
 パビリオンは銃器を中心としてはいるものの、グループ内の各ブランドによるさまざまな製品が並び、多様化する同社のさまざまな側面を伺うことができた。このページでは、こうしたカラシニコフ・グループの製品から特に軍・法執行機関向けを中心にピックアップして紹介したい。

 

■タクティカルギアに参入

 

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 パビリオン内で大きなスペースが割かれていたのがカラシニコフ社によるタクティカル・アウトドア アパレル&ギアブランド「グループ99(Gruppe 99)」の展示である。
 広い国土で多様な自然環境を持つロシアの特性にあわせて、レイヤードシステムにより温暖地域から寒冷地までをカバーするウェア、モデュラー式に組み替えることができるバックパックシステム、そしてPALS対応のプレートキャリアやポーチなどがリリースされている。

 

■先進技術分野でも商品を展開

 

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 航空ドローンを製造する「ZALA AERO」では対ドローン兵器も開発している。それが対ドローンライフル「REX-1」だ。重量は約4kgで、コンパクトにまとまったデザインは携行性を高めている。ライフルと言っても弾丸や投射物を発射するものではなく、ジャミングによりドローンの衛星ナビゲーションシステムを寸断し、機体を強制的に着陸させる。

 

■装甲車両・戦闘車輌を開発

 

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 軍や法執行機関に向けた大型の車輌や船舶事業もカラシニコフ社は展開している。パビリオン屋外のエリアには、こうした大型の展示物が陳列されていた。写真の巨大な“壁”のようなものは暴動鎮圧用車輌「SHCHIT(SHIELD)」。カマズ社製の6輪トラックを改造し、幅7.3mの大型シールドを備える。シールドは折り畳み式で、移動時は車体後部に格納される。

 

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 また、無人戦闘車の開発にもカラシニコフ社は取り組んでいる。「ソラトニク(戦友)」と名付けられた車輌は、砲塔に7.62mm~12.7mmの機銃や「コルネット」携行式対戦車ミサイルを搭載可能。歩兵の火力支援、警備やパトロール、地雷処理などの任務に投入される。ロシア連邦軍特殊作戦軍のもと、シリアで試験配備が行なわれているようだ。

 

■本誌ではロシア新興のガンメーカーについても紹介

 

 ロシアのガンメーカーと言えば、アサルトライフルから狙撃銃まで軍・法執行機関向けとして幅広い分野をカバーするカラシニコフ社の存在感が圧倒的だが、近年では新興のガンメーカーもこの分野での存在感を高めている。本誌では今回の『ARMY2018』に出展した2つの新興メーカーを紹介した。こちらもぜひあわせてご覧いただきたい。

 

Report:笹川 英夫(Hideo Sasagawa)
Special Thanks:
Kalashnikov Concern
Mr.Andrey Vishnyakov
Mr Mark Razenkov

 


この記事は2019年1月号 P.98~105より抜粋・再編集したものです。

 

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