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2021/04/09

現代のアメリカ軍も影響を受けた19世紀生まれの“戦争必勝法”とは!?【後編】

 

現代のアメリカ軍も影響を受けた19世紀生まれの“戦争必勝法”とは!?【後編】

 

 19世紀に“戦争必勝法”を考え出した軍人がいた。しかも、彼の考え方は現代のアメリカ軍にも大きな影響を与えている!? 彼――アントワーヌ=アンリ・ジョミニが生み出した思想と、現代の軍隊への影響をコミックとテキストで解説!

 

 

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アメリカ陸軍の「戦いの9原則」

 

 アメリカ陸軍の「戦いの9原則」は、1921年に訓練規則TR10-5(Training Regulation No.10-5)で初めて文書化されて概要が固まったとされている。その後、同軍は、2008年に野戦教範FM3-0『オペレーションズ』で新たな3つの原則を追加するまで、この「戦いの9原則」をドクトリン文書に掲載し続けた。その「戦いの9原則」を、この改訂直前のFM3-0『オペレーションズ』(2001年版)から抜粋してみよう。

 

◆戦いの9原則

 

  • 目標の原則(OBJECTIVE)
  • 攻勢の原則(OFFENSIVE)
  • 集中の原則(MASS)
  • 兵力節用の原則(ECONOMY OF FORCE)
  • 機動の原則(MANEUVER)
  • 指揮統一の原則(UNITY OF COMMAND)
  • 警戒の原則(SECURITY)
  • 奇襲の原則(SURPRISE)
  • 簡明性の原則(SIMPLICITY)

 

 「目標の原則」とは、すべての軍事作戦を“明確に定義された決定的で達成可能な目標”に向けることを意味している。逆にいうと、目標が不明確だったり達成しても大した意味がなかったり、そもそも達成が不可能な目標を設定してはいけない、ということだ。

 「攻勢の原則」とは、攻勢に出て主導権を握り、それを維持し、活用することをいう。たとえ今は防勢を余儀なくされていても、いずれは攻勢に転じて主導権を奪取することを目指すのだ。

 「集中の原則」とは、戦闘力やその効果を決定的な場所と時間に集中することをいう。その補足といえるのが、次の原則だ。

 「兵力節用の原則」とは、兵力の経済的な運用のことであり、より具体的には決定的ではない場所と時間に割り当てる戦闘力を必要最小限にとどめることを指す。

 「機動の原則」とは、戦闘力を柔軟に用いることによって、敵を不利な立場に追い込むことを指す(この中の「機動」という言葉に関しては、例えばアメリカ海兵隊はかなり広い意味で使っている)。

 「指揮統一の原則」とは、あらゆる目標に関して責任を持つ指揮官を1人にしぼって、その取り組みに一貫性をもたせることをいう。指揮系統を一本化しないと混乱のもとになるからだ。

 「警戒の原則」とは、敵の奇襲など、こちらが予期していないことで敵が優位を得ることがないように、十分に警戒することを求めている。

 「奇襲の原則」は、その裏返しで、敵の準備ができていない時や場所、方法などで敵を攻撃せよ、ということだ。

 「簡明性の原則」とは、明確で分かりやすい計画と簡潔な命令を作成し、完全な理解を確実にすることをいう。逆に、複雑な計画や抽象的で長ったらしい命令は、誤解や混乱のもとだ。

 

ジョミニが与えた影響

 

 戦争には「不変の原則」がある――と主張したジョミニは、幕僚レベルの事柄は教育できる、と考えていた。こうした考え方は、その後の主要各国軍の将校教育に大きな影響を与え、現代でもなお生き続けているのだ。

 


 

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 本記事は、現在好評発売中の『イラストでまなぶ! 用兵思想入門 近世・近代編』より冒頭を抜粋した。現代の軍隊にも引き継がれている、ジョミニ、クラウゼヴィッツ、モルトケなど歴史上の偉大な用兵思想家を振り返り、近代的な用兵思想の誕生と現代への繋がりについて解説している!