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2020/12/11

【陸上自衛隊】レンジャーを育成する過酷な訓練

 

体力と気力の限界に挑む!

精強なるレンジャー隊員を育成する訓練とは?

 

陸上自衛隊 レンジャー課程

 

 


 

レンジャーR a n g e rとは?

 

 「レンジャー」とは、もともと“歩き回る者、うろつく者”の意味があり、そこから転じて山野を長距離巡り、偵察や警戒、攻撃を行なう兵士を指す言葉となった。日本でも戦後、アメリカ陸軍を手本として陸上自衛隊にレンジャー課程が創設されている。アメリカでは第75レンジャー連隊のように、レンジャー資格を有する隊員による常設部隊が編成されているが、陸上自衛隊では長く個人資格のみに止まり、“レンジャー部隊”と呼べるものは存在してこなかった。

※近年ではレンジャー資格を持つ隊員のみを集めた部隊を編成している例もある。

 

 では、自衛隊におけるレンジャー課程にはどのような意味があるのか。

 取材に応じてくれたレンジャー教官の1人は「困難な状況を克服させ任務を完遂するための能力、強靭な体力及び精神力を付与すること」であると話してくれた。彼の言う通り、その育成課程では学生(訓練に参加する隊員)たちの心身に大きな負担を加える。そうした経験を通して「精強な隊員が育成される」のだそうだ。
 今回は第34普通科連隊(静岡県板妻駐屯地)の協力を得て、同連隊が撮影した訓練中の写真を交えつつ、過酷な陸上自衛隊レンジャー課程についてお伝えしよう。

 


 

3つのレンジャー課程

 

 陸上自衛隊では大きく分けて3つのレンジャー課程がある。まず、陸上自衛隊のレンジャー課程について概説していこう。

 

  • 幹部レンジャー

 

 文字通り幹部を対象としたもので、富士学校で教育が行なわれる。レンジャー教官を育成するための課程であり、指導に関する教育が増えるぶん、曹士より期間が長いという。課程修了者には、通称「金バッジ」と呼ばれる金色のレンジャー徽章が授与される。

 

  • 空挺レンジャー

 

 第1空挺団は任務の特性上、レンジャーの能力が必要とされるため、陸曹以上は必ず修了しなければならない。空挺レンジャーは、様々なレンジャー課程の中でも特に過酷であると言われている。なお、空挺団に所属する幹部は曹士と一緒にこの課程に参加するが、やはり指導法の教育が加わるため、曹士より長期となる。

 

  • 部隊レンジャー

 

 これは曹士に対して行なわれるもので、部隊——師団(旅団)もしくは連隊——ごとに実施される課程だ。教育内容は、教範で定められた科目と時間に従うため、基本的には全国どこでも同じだが、地域による特性も加味される。地域の特色を反映したレンジャー課程なのだ。

 今回はこの課程を紹介するため、第34普通科連隊のレンジャー課程を取材する。

 


 

7週間の基礎訓練

 

 レンジャー課程は、おおよそ11週間程度で実施される。7週間の「基礎訓練」と、実戦的な4週間の「行動訓練」の二段階で構成され、基礎訓練では行動訓練に向けた山岳地踏破や潜入に必要な知識と技能の習得が行なわれる。あわせて身体能力を鍛える「体力調整」と呼ばれる科目が並行して実施される。体力調整は3段階に分かれ、段階的に訓練の強度が高まり、最後には過酷な「10マイル走」が待っている。

 

陸上自衛隊 レンジャー課程

一番最初に行なわれるという「胆力テスト」。高所に張られたロープから、命綱1本を頼りに飛び降りるというもの。文字通り、胆力(度胸)をつける目的もあるが、“ロープに対する信頼感を付与する“という目的がある。険しい山地を踏破するレンジャー隊員にとってロープは重要なツールだからだ

 

陸上自衛隊 レンジャー課程

身体能力を鍛える「体力調整」。駐屯地周辺は起伏が激しく登り坂が多いため、長距離走の負荷は他の部隊レンジャー課程より高い。特に板妻の10マイル走を教官たちは「日本一の10マイル走」だと自負している。また、腕立てや懸垂などの科目が設けられている。懸垂は1人の学生に一人の教官・助教がつき、正しく行なわなければ1回とカウントされない。レンジャーの懸垂は身体を持ち上げた状態で8秒間停止しなければいけないのだそうだ

 

陸上自衛隊 レンジャー課程

レンジャー隊員が敵地に潜入するとき、ボート(水路)やヘリ(空路)を用いる。当然、これらの手段も基礎訓練で教えられる。写真はヘリからのリペリングの訓練。ヘリからの降下方法はリペリングのほか、エキストラクションロープ(ファストロープ)がある

 

 基礎訓練から行動訓練に進むにあたってはいくつかの基準(体力評価)をクリアする必要があり、10マイル走は訓練であると同時に検定でもあるそうだ。10マイル走以外では、20km走歩、腕立て、懸垂、屈み跳躍、そして障害走などに基準が設けられている。この訓練を7週間経た後、実戦的な「行動訓練」に移る。

 次回はその様子をレポートしよう。

 

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TEXT:笹川英夫

PHOTO:陸上自衛隊第34普通科連隊広報班/笹川英夫

特別協力:陸上自衛隊第34普通科連隊広報班

 


 

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この記事は月刊アームズマガジン2019年2月号 P.98~107より抜粋・再編集したものです。