【実銃】スナイパーライフルの魅力【RUGER PRECISION RIFLE “RPR”】

 

 遠距離のターゲットを1発で仕留めることのできるスナイパーライフル。しかしそれなりの精度を持ったボルトアクションライフルと性能の高いスコープを揃えるとなると、最低でも5000ドル以上は覚悟する必要がある。そこで今回ご紹介するのは、ルガー ファイアアームズ社のライフル、RUGERルガー PRECISIONプレシジョン RIFLEライフル “RPR”。

 この高性能かつ画期的なスナイパーライフルを通じて、スナイパーライフルと長距離狙撃についてレポートしていこう。

※このレポートは月刊アームズマガジン2018年9月号に掲載されたものを再編集したものです

 

 


 

スナイパーライフルは高価

 

 ロングレンジ スナイピングの魅力というのは奥が深い。
 何せ、それなりのライフルとスキルさえあれば、1,000m先のターゲットにさえ必殺の一撃をお見舞いすることができるのだから、その醍醐味たるやもはや筆舌に尽くしがたいのである。
 ただし、その醍醐味を味わうにはそれなりの投資も必要になってくる。精度の高いボルトアクションライフルは、ファクトリー製でも2,000ドル、カスタムなら軽く3,000ドルを超えてしまうし、それにあわせた高性能スコープも2000ドルから3000ドルは覚悟しなければならないというのが現実である。それもそうだ。1,000m先のシルエットターゲットに必中弾を送り込むには、最低でも1MOA、もしくはサブMOA(1MOA以下という意味)の精度が必要となってくる。

 

MOAとは

 

 ご存知の方も多いと思うが、改めて説明しよう。

 MミニッツOオブAアングルというのは、ライフルの精度を数値で表す際に使われる単位で、1MOAは100ヤード(91.44m)先のターゲットに1インチ(2.54cm)内で集弾できる精度を持つ、という意味になる。つまり、1,000ヤード(914.4m)なら10インチ(25.4cm)に集弾できるということになる。

 一般的なシルエットターゲットの幅は18インチ(45.7cm)なので、1MOA以内の精度を持っていれば1,000ヤードでのスナイピングでもヒットできる可能性は充分にあるということなのだ。

 現実には、風や気温、湿度、光線の加減、角度、スコープの性能といった数々の要素が複雑に作用するため、ライフルの精度だけが重要ではないが、少なくとも基本中の基本は一定以上の精度を持ったライフルからスタートする必要がある。

 

【実銃】長距離狙撃ライフルの魅力【RUGER PRECISION RIFLE “RPR”】

HOG SADDLEを使ってのスナイピングは、現代スナイパーにとって必須のテクニックとなっている。このまま長い時間の待機も可能だし、ターゲットを見失うこともない。これもいいお値段がするのだが……

 


 

廉価にして高性能なライフル
RUGER PRECISION RIFLE “RPR”

 

【実銃】長距離狙撃ライフルの魅力【RUGER PRECISION RIFLE “RPR”】

  • 口径: 6.5mm Creedmoor
  • バレル長: 24インチ
  • 装弾数: 10+1
  • セーフティ:マニュアル
  • 全長: 43.25インチ/46.75インチ(ストック伸縮時) 
  • 重さ: 10.8ポンド

 

 どんなスナイパーライフルも4,000ドルや5,000ドルの値段。到底、手が届かない……そこに現れたのが、トラディショナルなハンティングライフルや.22口径セミオートライフル、リボルバー、セミオートピストルのメーカーとして手堅い人気を持っているルガーファイアアームズ社がリリースした「RUGERルガー PRECISIONプレシジョン RIFLEライフル“RPR”」である。このモデルがリリースされたのは2015年のこと。その姿は幅広いバイヤーたちの度肝を抜いたといっても過言ではなかった。

 

  • まったくの新設計レシーバー
  • 新機軸が加えられたボルト
  • ARスタイルのハンドガード
  • フルアジャスタブルのフォールディングストック

 

 という新デザインを投入した上に、1MOAを軽く達成できるという精度の高さを備えていたからだ。その上で2015年当時の価格はMSRPで、なんと驚きの1,399ドル。どの口径も1MOA以下の精度を持ったこのライフルは、発売後1年を待たずに長いウェイティングリストを持つ製品となった。

 それではこのライフルの細部を紹介しつつ、スナイパーライフルは何故、長距離を精密に狙撃できるのかを解説していく。

 


 

精密狙撃の秘訣①:バレル

 

 バレルは、ルガー社自慢の5条右回り4140クロモリ鋼の冷間鍛造バレルを採用。口径によってツイストを微妙に調整している。バレルのレシーバーへの固定はARスタイルを踏襲しており、バレルナットを使用してアッパーレシーバーにフリーフローティングで装着されている。フリーフローティングバレルは外力の影響が少ないため、狙撃の精度を上げてくれるのだ。

 さらに、今回のテストモデルには「RPR ハイブリッド マズルブレーキ」が装着されており、効率よくリコイルを抑えつつ、ノイズと発射炎マズルブラストをカットする効果があるとされる。

 

【実銃】長距離狙撃ライフルの魅力【RUGER PRECISION RIFLE “RPR”】

これが「RPR ハイブリッド マズルブレーキ」だ。リコイルを抑えるだけでなく、フラッシュハイダーの機能も持っている。口径が6.5クリードモアということもあるが、そのリコイルはマイルドだ

 


 

精密狙撃の秘訣②:レシーバー

 

 従来のボルトアクションライフルのデザインは、チャンバーからマズルにかけて発生したリコイルのパワーを、バレル/レシーバー/リコイルラグ/固定ベディングシステム/ストックというように、複雑に伝達してしまう。これは精度を下げる一因にもなっていた。

 だが、RPRのアッパーレシーバーは熱処理済の4140クロームモリブデン鋼からのCNC削り出しであり、2ピース構造の7075-T6アルミ材からなるロアレシーバーが2本のボルトで固定されている。この構造により、発生したリコイルがアッパーレシーバーの後部からバットストックまでストレートに直接伝達されるため、バレルの性能やアッパーレシーバーの強度といった、精度に直接影響を及ぼすパーツのポテンシャルを充分に引き出しやすくしたのだ。

 また、“マークスマン トリガー”と呼ばれるアジャスタブルトリガーシステムは、2.25ポンドから5ポンドまでのアジャストが可能。今回のテストライフルでは、2.6ポンド程にアジャストされており、そのクリスプな切れ味は好感の持てるものであった。

 

【実銃】長距離狙撃ライフルの魅力【RUGER PRECISION RIFLE “RPR”】

堅牢に作り込んであるフォールディングシステムと、ARパーツがそのまま使える45°セーフティ、ピストルグリップ。トリガープルは2.25-5ポンドの範囲でアジャストできる

 

【実銃】長距離狙撃ライフルの魅力【RUGER PRECISION RIFLE “RPR”】

誇らしげに入る“RUGER PRECISION”のロゴ。ロアレシーバーはこの2本のボルトでホールドされている2ピース構造(いわゆるモナカ合わせ)だ。そのシンプルな構造は新世代独特のものだ

 


 

精密狙撃の秘訣③:バットストック

 

 RPRのデザインで一番の異彩を放っているのが、このアジャスタブルストックであろう。ただし、アジャストが可能なのは、バットプレートの前後と、頬あてチークピースの前後と上下アジャストである。

 しかし、このRPRデザインが秀逸なのは、リコイルの伝達が1直線になるよう、アッパーレシーバーの後部にARライフルのカービンレングスバッファーチューブを使ってバットストックを固定し、さらには堅牢なフォールディングシステムをビルトインしてしまった点にある。このバレルそのものの精度やそれを支えるレシーバーの性能を発揮できるデザインこそが、RPRの精度の高さをサポートしているのである。

 

【実銃】長距離狙撃ライフルの魅力【RUGER PRECISION RIFLE “RPR”】

重量感溢れるバットストック部。ARスタイルライフルのミルスペックバッファーチューブを採用している。右端のボタンを押すと左側にフォールドでき、このボタンを90度回転させると、フォールドしたストックをロックすることができる

 

【実銃】長距離狙撃ライフルの魅力【RUGER PRECISION RIFLE “RPR”】

ストックを折りたたむと、ここまでコンパクトになる

 


 

狙撃で最適なカートリッジとは?

 

 RPRの完成度が窺い知れたところで、ひとつ疑問が浮かぶ。

 ロングレンジスナイピングに最適な口径とは?

 それが分かれば、RPRの実力をさらに引き出すことができるだろう。だが、この深遠なる質問に答えるには、それこそ1冊の本を著す覚悟が必要になってくる。.338 ラプアマグナム、.300 Win Mag、.50 BMG、.408CheyTacといった強力なカートリッジが思い浮かぶが、価格などの面に阻まれてしまい、我々一般シューターにとっては夢の口径/ライフルたちとなっている。

 そこでクローズアップされるのが、今回のRPRでもチョイスが可能な、6.5mmクリードモアと.308ウィンチェスター(7.62mm×51)というショートストロークボルトアクション口径のカートリッジたちである。

 では、ここでSWATチームのスナイパー、ジェイソン・デイヴィス氏に語っていただこう。彼はさまざまな銃器に対して造詣が深く、以前のレポートで「1911 VS Glock」の比較でも詳しい解説をしてくれた。

 

「1911 VS Glock」のレポートはこちら

 

 今回も、彼に分かりやすく説明していただこう。

 

6.5mm Creedmoor vs. .308 Win

 

「6.5クリードモア口径は、2007年にホーナディ社からリリースされたロングレンジターゲット競技用のカートリッジなんだ。.308Winのケースをネックダウンして、130-140グレインの.264インチ(6.72mm)弾頭を、約2,800-3,000fps(フィート/秒)で飛ばすというのが基本だね。この口径の長所は、ショートアクションのライフルから撃ち出せるにもかかわらず、その弾道はフラットで横風にも強く、リコイルがマイルド、となんだか悪いところがない。.308Winのデータと比べてみると一目瞭然だ」

 

  • 各距離における弾頭の落差(インチ)

※100 ヤードでゼロインした際のデータ

 

  200ヤード 300ヤード 500ヤード 800ヤード 1000ヤード
6.5mm 130gr -3.98 -11.77 -41.62 -134.81 -243.88
.308 Win 175gr -4.93 -15.49 -57.29 -191.76 -352.88

 

「これは100ヤードでゼロインした6.5クリードモアの130グレイン弾頭は、200ヤードでは3.98インチ(10.1cm)下に着弾するというのを表している。.308Winだと4.93インチ(12.5cm)下だ。距離が遠くなれば遠くなるほど、その差は増していく。この落
差をスコープのエレベーションでアジャストするのだが、.308Winのほうは、よりたくさん修正しなければならないことになる。フラットな弾道を持っていたほうが、ロングレンジでのアジャストもより楽というのがわかるね」

 

  • 各距離における弾速(fps)

 

  0ヤード 200ヤード 300ヤード 500ヤード 800ヤード
6.5mm 130gr 2,851 2,688 2,375 2,078 1,663
.308 Win 175gr 2,592 2,461 2,135 1,829 1,420

 

  • :各距離における弾頭の残存エネルギー(ft・lbf)

 

  0ヤード 200ヤード 300ヤード 500ヤード 800ヤード
6.5mm 130gr 2,340 2,080 1,623 1,244 796
.308 Win 175gr 2,601 2,344 1,765 1,294 781

 

「弾頭の持つスピードやエネルギーにも興味深いものがある。ここから分かるのは、6.5mm弾頭は常に.308より200fps以上速いスピードで飛び、弾頭エネルギーでは500ヤードを過ぎたあたりから、6.5mmのほうがエネルギー量で逆転してその幅を広げていくということだ。
 つまり、弾道学上では600ヤード以上の距離なら6.5クリードモアのほうが.308Winより優れた性能を持っている、ということなんだ。これは実際に2つの口径のライフルを並べて撃ってみてもわかる。.308のほうは弾頭が重い分リコイルもキツイ。6.5は弾頭が軽いだけでなく、銃口初速が高い分マズルブレーキの効きもいいので、そのリコイルはマイルドなんだ。それでも800ヤード先の18インチプレートを撃つと、明らかに到達速度が速く感じるし、プレートの揺れも大きいのがわかる。
 昨年のUSミリタリーのテストでも、6.5クリードモアの優秀性が取り上げられたというし、今後どんどんポピュラーになっていくのは間違いないと思う」

 

 カートリッジは数多くあるので、最強は何か、と言われれば何とも言えなくなるが、今この瞬間、RPRに最適なカートリッジは6.5クリードモアであるようだ。

 

【実銃】長距離狙撃ライフルの魅力【RUGER PRECISION RIFLE “RPR”】

このRPRのオーナーは競技目的ではなく、タクティカルスナイパーとしてこのスコープを選んでいる。6.5クリードモア口径の大ファンだ

 


 

まとめ

 

 ルガー社のRPRを通じて、スナイパーライフルの魅力をレポートさせていただいたが、いかがだったであろうか。少なくとも、RPRの魅力は充分伝わったと思う。

 箱出しの状態で1,000ヤード以上を狙えるファクトリーボルトアクションというのはかなりすごい。それも本体は1,000ドルちょっとで買えてしまうのだ。とにかく手に入れて、ロングレンジシューティングの醍醐味を味わうには最適の1挺かもしれない。

 

【実銃】長距離狙撃ライフルの魅力【RUGER PRECISION RIFLE “RPR”】

ジェイソンいわく、「ピストルグリップにストレートのストック、ARを撃っているようでまったく違和感がないな」とのこと

 

【実銃】長距離狙撃ライフルの魅力【RUGER PRECISION RIFLE “RPR”】

100ヤード、PRIME社製130グレインHPBTでのベストグルーピング。0.75MOAだ。驚きの精度が充分に伝わってくる

 

Text & Photos: Hiro Soga

 


 

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この記事は月刊アームズマガジン2018年9月号 P.68~75より抜粋・再編集したものです。

 

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