ワルサーが生み出した珠玉の一級品「Q5 MATCH SF」

 

 ドイツが誇る銃器メーカー・ワルサーの最近のピストルラインアップは、ポリマー化の潮流とは逆行するかのような“スチール推し” となりつつある。似たようなピストルが並ぶなかに一石を投じる老舗ワルサーを取材してみた。

 


 

 

 昨今の状況から射撃レポートがままならない筆者のもとに、ある日、ワルサーにいる友人、ピーター・ダルマーから近況を尋ねるメールが届いた。メールをやりとりしているうちに同社が銃器展示会IWAの中止により新製品発表の場を失い困っていて、そのプレス向け写真や資料をもとに記事にしてみたらどうか、という話だった。その提案に早速ワルサーからデータを送ってもらうことにした。

 運がいいことに、昨年ワルサー本社を訪れQ5 MATCH SF(STEEL FRAME)は実射している(月刊アームズマガジン2019年9月号参照)。その時の実際のフィーリングも振り返りながらお伝えしたい。

 

実銃レポート「WALTHER PPQ M2 Q4 TAC Combo」はこちら

 

昨年ワルサーを訪れて射撃したポリマーフレームのQ4 TAC Combo。こちらのリアサイトは固定タイプで、イギリスのSHIELD製RMSc Red Dotが標準装備されている。P99のトリガーフィーリングはイマイチだったが、この銃のトリガーはキレがあり特に印象深い銃だった

 

 伝説のP38やPPKを輩出してきたワルサーが昨年発表したQ5 MATCH SFは、ポリマーフレームでストライカー式のPPQから派生したコンペティション向けのQ5 MATCHを、さらにスチールフレーム化しているのが特徴である。現在主流のストライカー式ではあるのだが、外観を見る限りはいささか保守的なイメージだ。

 また、ワルサーのピストルは民間向けモデルも警察仕様のまま出しているのではと感じるほどトリガープルが重かった。さらにはトリガートラベルも長いので積極的に撃ちたいと思えないのだ。筆者は最新モデルを試射させてもらうたびに、トリガーフィーリングの悪さを彼らに伝えていた。そもそも、ワルサーは競技銃メーカーとしても知られており、極上のフィーリングともいえるキレのあるプロ向けのトリガーを作れるのである。長きにわたって「世界帝国」ファインベルクバウの一人勝ちだった競技用エアライフルの分野で、ワルサーがシェア1位の座を奪いとったのは、そのトリガーフィーリングのよさと無関係ではなかろう。

 その背景を踏まえた上でQ5 MATCH SFを試射してみると、トリガーフィーリングはまさに同社の競技銃を思わせるもので、他の部分も一級品という衝撃的なものだった。

「ついにトータルバランスの取れた銃をリリース! 伝説のワルサーがよみがえった!」

 それほど“撃ちたくなる”銃だったのである。

 

これが、思わず撃ちたくなる銃のQ5 MATCH SF。トリガーとマグウェル、マグバンパーにブルーが配され、アクセントに。トリガーはアジャスタブルタイプでカーブとストレートの2種類が付属し、好みのフィーリングを得られる

 

 ポリマーフレームというピストルのトレンドの中で、堅固でシャープなスチールフレームを復活させたところもいい、と感じた。全体的な重量バランス配分もよく、アキュラシーを得るためにフルサイズである一方、スライドにはスリットを入れて軽量化している。ワルサーは早くからグリップにエルゴノミックデザインを採用しており、しっくりくるグリップと良好なバランスで、射撃時のリコイルをコントロールしやすい。さらに剛性も精度も高いため、あらゆる条件下でアキュラシーを維持できるのである。

 Q5 MATCH SFのフレームは500g程度だが、約4kgのスチール材からの削り出しだという。オートピストルのフレームはスチールからアルミ合金、そしてポリマーへと進化してきたので時代に逆行するかのようにも見えるが、スチールの名銃を生み出してきたワルサーが鉄のよさを知っていたからこそ回帰したとも言えるだろう。

 

ワルサーのピーターがQ5 MATCH SFを撃つ。大きなマグウェルはグリップをしっかりサポートし、非常にコントロールしやすい

 

エアライフルの分野では現在世界シェアナンバー1のワルサーが手がけた最新モデルLG400。こうした競技銃の技術と経験もQ5/Q4シリーズに活かされているのだ

 

 “MATCH(競技)”の名称のとおり、この銃も競技銃を得意とするワルサーの製品らしい特徴を備えている。マッチ用ピストルはLE(法執行機関)や軍向けのピストルのように長時間携行する必要がないので、より射撃におけるパフォーマンスを追求できる。となれば、ポリマーフレームにこだわる必要はない。重量バランス、コントロール性、アキュラシーを追い求めるなら、スチールは最高の素材だったのである。

 本日17時公開の後編レポートでは、ワルサーの手掛けたさまざまな銃を紹介する。ワルサー本社内に設置されたマスターショップで製作された珠玉の作品たちも掲載するので、ぜひご覧いただきたい。

 

Photo&Text:櫻井朋成(Tomonari SAKURAI)

写真協力:Carl Walther GmbH

 


この記事は月刊アームズマガジン2020年8月号 P.134~141よりウェブ用に再編集したものです。

 

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