30年ぶりに更新された陸上自衛隊の新小銃「HOWA5.56」

 

陸上自衛隊の小銃が30年ぶり、拳銃は37年ぶりに更新されることが昨年末に発表された。ここでは秘密のベールに包まれた新小銃について考察したい。

 

 

はじめに

 

 令和元年12月6日、防衛省陸上幕僚監部は現在装備されている89式5.56mm小銃と9mm拳銃の後継として、新小銃を国産の豊和工業製「HOWA5.56」に、新拳銃をドイツH&Kの「SFP9」に決定したことを発表した。

 

 近年、公開されている入札情報等から研究用としてHK416やSCAR等が購入されていたのを知る事情通も多く、ガンマニアだけでなく本職の自衛官も選定事業の行方を固唾をのんで見守っていたようだ。「国産か? それとも外国製か?」とさまざまな憶測が交差する中、ようやく決着を見ることとなった。

 

 

89式小銃や9mm拳銃はどこが旧(ふる)いのか?

 

 現在、陸上自衛隊の主力小銃として確固たる存在を示している89式小銃は、制式化以来実射性能そのものに不満を持つ自衛官は少なく、概ね優れた軍用ライフルとの定評がある。しかしピカティニーレールを持たないが故に機能発展の余地が少なく、ストックの長さも調整できない。各国軍用銃の進化の中では優秀な89式小銃も旧さを隠せなくなってきたといえる。

 

 ライセンス国産品となる9mm拳銃(SIG P220)も同様に拳銃としての性能や操作性に定評はあるが、ボトムキャッチ式の弾倉止めの使いにくさ、そして装弾数の不足は専守防衛という大義名分だけでは隠しようがない。

 

 国際任務の増加や多国籍間の共同訓練、とりわけ連携を増す米軍との戦術的な不備を埋めるための装備更新だと理解するのが適当だろう。

 

 

新小銃の外観考察

 

新小銃は豊和工業が満を持して開発したHOWA5.56が採用された(PHOTO:防衛省)

新小銃は豊和工業が満を持して開発したHOWA5.56が採用された(PHOTO:防衛省)

 

 

 HOWA5.56は一見するとFNH SCAR-Lとの類似性を見てとれるが、MAGPUL MASADAやHK433にも共通した要素を備える現代的な小銃と解釈できる。

 

 サイズは89式小銃と比べてもコンパクトな印象で、銃身長は米軍M4A1の14.5インチに近く、銃身先端部にシンプルな消炎器(フラッシュハイダー)を装備した点も注目される。64式と89式ではフラッシュハイダーとマズルブレーキの機能を併せ持つ消炎制退器が特徴だったが、新小銃ではついにその伝統を捨てた。

 

 また、新たに採用されたレール式の被筒(ハンドガード)はフラッシュライトやレーザーデバイス等の搭載の拡張性を持たせ、伸縮上下調整式の銃床(ストック)はスコープ等を搭載する銃にとって欠かせない付加機能だと言える。射手の体格に合わせてストック長を調整できる点は好評を得られるはずだ。

 

 国産小銃が継承してきた伝統のひとつに射撃モードを示す刻印があり、64式小銃では「(安全)・(単発)・(連発)」、89式小銃では「3(3バーストショット)・」、そして新小銃では3発制限点射機能を廃して「」に戻り、シンプルな機能へと回帰。切換レバー(セレクター)や弾倉止め(マガジンキャッチ)、スライド止め(ボルトキャッチ)等の操作系は左側面にあるが、右側でも操作可能なアンビタイプであると予想される。

 

 弾倉(マガジン)や握把(グリップ)が外国製品に酷似している点も注目されるが、これらが豊和工業によるオリジナルデザインなのか、それともOEM採用なのか、制式化後の量産品がお目見えする時に確認したい。

 

 

新小銃の名称は?

 

 HOWA5.56は陸上自衛隊にとって第3世代の小銃だが、正式名称はまだ発表されていない。

 

 令和2年中に部隊配備されるのかも現時点では情報はなく「しかるべき時期に発表」されるのだろうが、しばらくの間は制式名称もディテール観察もお預けで、自衛隊ファンやガンマニア諸氏にとっては「果報は寝て待て」ということだ。

 

 

新小銃や新拳銃は陸自を変えるか?

 

 64式小銃や89式小銃の時代は、「セレクターが右側で…」等というハンデもあり専守防衛ドクトリンを反映していたが、新小銃や新拳銃が配備されるようになれば、それも過去のものとなる。今後は多様な射撃支援デバイスを装着しながら、最新の戦技を実践していくことだろう。

 

 

月刊アームズマガジン5月号では、新拳銃についても考察している。写真はほぼ同型のVP9(PHOTO:SHIN)

月刊アームズマガジン5月号では、新拳銃についても考察している。写真はほぼ同型のVP9(PHOTO:SHIN)

 

 

 

TEXT:神崎 大

 

 


この記事は月刊アームズマガジン2020年5月号 P.68より抜粋・再編集したものです。

 

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