トップを走り続けるSIG SAUER、その歴史

 

現代を代表する銃器メーカーの一つであるSIG SAUER。世界的にみても有数の歴史を誇り、また現代においてもトップを走り続けるその歴史にスポットを当ててみよう。

 

2つのガンメーカー

SIG SAUERの源流は18世紀にさかのぼる。Lorenz Sauer(ロレンツ・ザウアー)がSuhl(ズール)でガンスミス業を創めたのは1751年のことだ。以後、この事業はザウアー一族に引き継がれ、1873年には屋号をJ.P.Sauer & Sohn(J.P.ザウアー&ゾーン)とした。ハンティング用ライフルとショットガンを製造し、19世紀にはズール地方では最大規模の銃器製造事業となっていた。

 

しかし、第二次大戦後、ズール地方はソ連占領地域に組み込まれ、1947年、同社は再編されて同地区の銃砲メーカーといっしょになってしまった。1949年にドイツ連邦共和国(西ドイツ)とドイツ民主共和国(東ドイツ)に分断されたが、ザウアー一族の末裔だったRolf Sauerは西ドイツに逃れて、ザウアー&ゾーンの商標権を1950年に売却している。これにより、その歴史ある社名は辛うじて引き継がれた形となった。

 

スイスのSIGは1853年に、鉄道車輌製造会社としてスタートしている。1860年に、ライフルの製造に乗り出し、1863年、社名を“スイス工業会社”を意味するシュバイツイッシュ・インデュストリー・ゲゼルシャフト(Schweizerische Industrie-Gesellschaft:SIG)と改めた。

 

SIGは部品製造を請け負うなど、どちらかといえば下請け的な仕事が多かった。しかし、1930年代後半から自社オリジナルハンドガンの開発を開始している。そして完成したのが、1949年にスイス軍用として採用されたSelbstladepistole 49(P49:SIG P210)だ。

 

SIG P210

SIGがスイス軍用に開発したミリタリーピストルP49での市販名はSP47/8だが、のちにP210と改められた。スイスらしさに満ちた高品質高精度加工の製品だが、製造コストも高い。

 

SIGはこれに続き、第一世代のアサルトライフル開発を行ない、ベルン(Bern)の政府造兵廠と競い合った。1957年、スイス軍はSIG SG510をStgw57として採用を決定した。これがSIGの銃器メーカーとしての国際的地位を大きく高めることになる。

 

Stgw57

スイス軍用第一世代アサルトライフルで、1957年から1990年まで使用された。スイス独自の7.5mm×55 GP11を使用し、遠距離射撃における精度の高さでは定評があった。市販名はSIG SG510。

 

しかし、時代の変化はSIGが単独で銃器製造を継続することを困難とした。永世中立国であるスイスは、諸外国との軍事的同盟関係はない。しかし、スイスで武器を生産し、それを諸外国に輸出するということは、軍事的支援を行なっていると解釈することが政治的にはできてしまう。そのためSIGは海外に提携メーカーを作る必要に迫られた。海外の提携メーカーと一緒に開発したものを、その提携メーカーから輸出すれば、スイスから輸出したことにはならない。1970年代前半、SIGが提携先に選んだのが、ドイツのザウアー&ゾーンだ。お話にならないほどの弱小メーカーであった西ドイツのザウアー&ゾーンは、1975年頃からSIG SAUERというブランドネームの元、SIGの資本と技術が投入された。

 

そんなSIG SAUERの存在感を一気に高めたのはアメリカ軍サービスハンドガンを選定するXM9トライアルだ。1970年代後半から始まったトライアルにSIG SAUERは当初エントリーしていなかったが、1981年にP220を発展させたP226で参入、それまで圧倒的な強さをみせていたベレッタ92に肉薄、やがてP226が採用されるという予測が多数を占めるまでになった。1985年、結局ベレッタ92Fがアメリカ軍サービスハンドガンM9に採用されたが、SIG SAUER P226は高く評価され、これ以降、SIG SAUERは世界のトップブランドとなっていく。アメリカにも1984年末に現地法人SIGアームズが設立され、世界最大の市場に向けての製品開発が活発化した。

 

SIG SAUER P220

スイス軍がP49の後継モデルP75として採用した。市販名はP220で、プレス加工スライドの採用など、新技術が数多く盛り込まれている。マニュアルセーフティを排した即応性の高さも革新的だった。

 

2007年10月1日、アメリカのSIGアームズは社名をSIG SAUERに変更、この名前で全世界の市場に向けた製品展開が図られるようになった。2017年のモジュラーハンドガンシステムコンペティションでSIG P320が勝利し、アメリカ軍サービスピストルM17、M18として選定されたことは、ここで改めて述べる必要はないだろう。

 

SIG SAUERはおそらく、世界で最もR&D(研究開発)に多くの予算を投じている銃器メーカーだろう。常に最先端を走り続ける。その姿勢が現在のSIG SAUERを形作っているのだ。

 

SIG SAUER P250

2007年に発売されたSIG SAUERポリマーフレームハンドガンの第二世代。ファイ

アコントロールユニットを内蔵するハンマー形式のモジュラーハンドガンとして登場したが、市場の評価は芳しくなかった。これを発展させ、ストライカー形式に改めたP320が大ヒットし、現在に至る。

 

【アームズマガジンウェブ編集部レビュー】

スイスとドイツのブランドが融合して生まれたSIG SAUER。その背景には政治的な駆け引きや当時の世相など、様々な要素が浮き彫りになる。そんな時代を生き抜いて、現代では最先端を行くイメージを見事に構築したSIG SAUER。このブランドが紡ぎ出す未来には、注目せざるを得ないであろう。

 

 

Text:Gun Professionals副編集長 Satoshi Matsuo

Photo:床井雅美/神保照史

編集部レビュー:アームズマガジンウェブ編集部

 

 


この記事は月刊アームズマガジン2020年1月号 P.36-37より抜粋・再編集したものです。

 

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