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【8月の新シリーズ】かじいたかし先生書き下ろし掌編“Prologue of prologue”【『灼天の竜喰らい』】



ブログメイン更新担当・緑茶です。

最新作『翼の姫と灼天の竜喰らい  ツナガリノソラ』発売記念
かじいたかし先生特別書き下ろし掌編“Prologue of prologue”を公開!

※クリックすると作品紹介ページに飛びます



無料立ち読み公開中の本編プロローグにつながるお話で、主人公の天星大句(あまほしおおく)が、
これから自分を待つ出会いを知らず、荒れ果てた東京の街を歩む姿を描きます。

作品については、紹介ページや紹介ブログその1その2をご覧ください。





 「翼の姫と灼天の竜喰らい ツナガリノソラ」Prologue of prologue  かじいたかし


 一九五〇年代のことだ。
 さかんに世界の終末や破滅を描いたSF物語がつくられたという。
 ドラゴンがあらわれる前、冷戦の時代だ。核兵器による世界の終りが現実視されるようになり、怯えた人々の心理を反映したからだというが――。
(人間の底にある……よくわからない心理が、こうなる未来を予期していたのかもな)
 こうなる未来――。
 満月のした、ひとり歩く天星大句。
 その周囲に広がるのは、荒涼とした廃墟の東京だ。
 朽ちたビル。割れた街路。上半分のない東京タワー。そして、地面に穿たれたクレーター。
 足を止めた大句の数歩先で、アスファルトがすりばち状に陥没していた。直径五十メートルはあるだろうか。赤茶けた土壌が露出しており、底を見ると泥水がたまっている。
《隕石落とし》(メテオ・ストライク)の爪痕である。 
(変わらないまま、だな……)
 五年前のあの日、ドラゴンたちは東京の空を蹂躪した。我が物顔で天を舞い、頭上から人間たちを見下ろし、次々と、魔法の隕石を落とした。
 どうだ、翼なき貴様たちは無力だろう――そうあざ笑っているかのようだった。
「…………」
 大句は押し黙ったまま満月をあおぐ。
 たとえば――人が飛べたなら、空を舞うドラゴンを駆逐できたかもしれない。こんな爪痕を穿たれることはなかったかもしれない。あるいは、あそこに浮かぶ月に、手が届いていたかもしれない――。
(――バカバカしい話だ)
 現実味のかけらもない空想にふけるのは、建設的ではないだろう。
 大句は口元を引き締め、止めていた足を再び動かす。
 自分は空想の世界ではなく、現実の世界を生きなくてはならない。
 そう。
 人が飛べなくなったこの世界で、生きていく。

         ※   

 天星大句はまだ知らない。
 彼はこのすぐあとに、「翼の姫」と巡りあう。
 いまはまだ地にあり輝かない天星(ほし)と、いまはまだ飛べない翼が対になるとき――。

 飛翔の物語がはじまる。




この掌編の続きは、無料で読めるこちらの立ち読みコーナーや、
絶賛発売中!
『翼の姫と灼天の竜喰らい  ツナガリノソラ』 をお買い求めの上、ご確認ください!


(緑茶)