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【6月の新シリーズ】書き下ろし短編付きキャラ紹介/3.フィナの場合【『邪神攻略者の戦技教導』】



5月31日(土)発売となるHJ文庫新シリーズにして、
落ちこぼれ部隊を最強へと導く次世代育成型バトルエンタテイメント
『邪神攻略者の戦技教導 部隊結成篇』



※ストーリーについての紹介記事はこちらから

本日はその中から、主人公・司が隊長に就任した部隊の問題児のひとりこと
フィナ=クルストルをご紹介いたします!



一応メンバー内では最年長でありながら、一番頼りなさ気なフィナ。
とある事件をきっかけに能力が上手く使えなくなってしまった彼女ですが、
何もかもがイレギュラーな司との出会いによって、
変わっていくきっかけを得ることになります!


かなり特殊な能力ですが、使いこなせば超強力!


そんなフィナの能力は、広範囲に展開させた領域内でフェアリーを操り、
防御や拘束に使用できる檻を生み出すことが出来るという【ティングリー・ガーデン】
かなり特殊な能力ですが、敵をかく乱させたり、味方の盾になったりと応用力の高さが魅力です!

さて、では司に出会う前のフィナの様子はどうだったのでしょうか?
それは以下の短編でお楽しみくださいませ。

※こちらの【ちょこっと立ち読み】を先に読むと、よりいっそう短編が楽しめます!


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 今日もまた転んだ。
 バナナの皮を踏んで滑るなんて、今時、コント番組だって見ない。
 おまけにひっくり返りかけた場所が雨でぬかるんだ地面で、危ないと思って無理矢理に体を方向転換させたら、そこは水たまりだった。
 全身が泥まみれだ。

「今日もいいことなさそう……」

 円卓の騎士団東京支部。
 今日もフィナは基地内の隅で膝を抱えて世を儚んでいた。

「いや、今までいいことなんてあったことないけど……」

 この前はこの前で非番だったし観たい映画があったので映画館に行ったら、ちょうど自分の前で満席になった。
 おまけに二時間ばかり待ってやっと楽しむことが出来ると思ったら、機材トラブルで更に一時間かかった上に結局修復不可能で帰らされる。
 散々だ。

「まあ、そもそも非番とかなんとか言って、あたし、ここに居てもやれることないけど」

 だからその気になればいつでも映画くらい観ることが出来るのだ。くじけることなどない。前向きに行けばいい。

「そう。あたしは何でも出来る。自由なの!」

 拳を握って立ち上がる。全身から振り絞るように叫んだ。

「つまりは、誰にも頼られていないってことっ!」

 直後に叫ぶのではなかったと後悔する。余計に落ち込んだ。

「……どうしてこうなるかなあ」

 思えば以前に起こった事件。あれ以来、ずっとこんな調子だ。
 何かの歯車が合わなくなってしまったとしか思えなかった。
 だがそれは、誰のせいでもない。全て自分の責任だ。
 だからこそ、どこにも逃げ場などなく、ただこうしていじけるしかない。

「仕方ないんだよね……あたしは駄目な子なんだし……」

 どうしようもなくドジでバカで役立たずだから、こんな立場がお似合いなのだ。
 広い基地内の、狭くてじめじめしたここで、うじうじとしているしかないのだ。

「はあ……」

 ため息をついてはいけない。その数だけ幸せが逃げる。
 昔、誰かがそう言っていた。
 だとすればもう、自分の中にある幸せは、欠片も残ってはいないだろう。
 こうして日に何度も嫌な想いに捉われ、ため息をつき続けているのだから。
 後ろ向きな考えをやめたいと思うことは何度もあった。
 だが、自分のやってきたことを思うと、どうしてもそこから逃れることが出来ない。
 まるで四方を壁に囲まれた『檻』に閉じ込められてしまっているかのようだった。

「……うう。暗い気持ちに押し潰されそう」

 フィナはなんとか少しでも気分転換しようと、携帯電話を取り出した。
 スリープ状態になっていた画面を起動し、現在の時刻を確認する。

「あ……いけない」

 そこで慌てたように立ち上がった。

「そろそろ新しい部隊の隊長さんと会う時間だ。その前に、本番で上手くいくように待ち合わせ場所で練習しておかないと」

 だが、歩き出しながら、肩を落とす。

「……まあ、多分、無駄だと思うけど」

 どうせ、醜態をさらした上で終わってしまうだけだ。
 自分の人生なんて、そんな程度のものである。
 いいことなど、何一つ起こるわけがなかった。

「ん……?」

 と――そこでフィナは、足元に生えていたあるものに目を止める。
 クローバーだった。
 それも、珍しいことに四葉がついたものだ。

「……嘘」

 こんなこと、初めだ。感動して、しゃがみこむと、まずは頭を下げる。

「ごめんね。ちょっとだけ、力を貸してね」

 地面から抜くと、それを愛おしく手で包み込み、息を吸い込んだ。

「――よし。頑張ってみよう」

 気合を入れるように、そう口にしてから、再び足を進める。
 こんなことくらいで、と笑われるかもしれない。
 だが、それでも、フィナは思った。

「……いいこと、あるといいなあ」

 微笑みを浮かべて仰いだ空は、何処までも澄んだ蒼を宿していた。


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明日は問題児な部下のひとり【ユリアス=ロットフィルト】をピックアップしてお贈りいたします。
どうぞお楽しみに!

(緑茶)