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【3月の新シリーズ】石蕗一朗は愉快に暮らしたい【『カネの力』準備号】

ブログメイン更新担当・緑茶です。 3月1日(土)発売となるHJ文庫新シリーズ 才能と課金でオンラインゲームの世界を暴れまわる、圧倒的バトルアクション! 『VRMMOをカネの力で無双する』の 鰤/牙先生描き下ろしショートストーリーを大公開! 今回のショートストーリーでは、本作の主人公であり、 ツワブキコンツェルンの御曹司・石蕗一朗(つわぶきいちろう)が普段、現実世界で 住み込みのメイド・扇 桜子(おうぎさくらこ)とどういう風に過ごしているかを切り取ったものになります。 『VRMMOをカネの力で無双する』のキャラクターたちの一端に、このショートストーリーで触れてみてください! さらに、最後には桑島黎音先生による、 石蕗一朗と、扇 桜子の素晴らしいキャラデザも公開! 最後までたっぷり楽しんでくださいね! ——————————————————————  ツワブキコンツェルンの御曹司、石蕗一朗は、すごいお金持ちである。  十二歳の頃には経済的に親元から独り立ちし、十八歳の頃にはポケットマネーで世田谷区三軒茶屋にマンションをおっ建て、その最上階フロアのすべてを自らの住居とする一朗の生活はセレブそのものだ。メイドも雇っている。ひとりだけだが。 「一朗さま、お茶が入りました」 「ん、そこに置いといて」  そのメイド、すなわち扇桜子が、アルモニア製高級センターテーブルの上に、ティーカップを置く。当の一朗は、ソファに腰掛けたまま膝など組み、優雅な午後を過ごしていた。 普段は川のせせらぎや鳥のさえずり、あるいは気分によってはクラシックコンサートなどの音楽をBGMに流している一朗だが、この時はテレビから流れる下世話なワイドショーを、それらの代わりとして楽しんでいた。 「一朗さま、今日のおゆはんなんですが」 「ん、」  ソファの後ろ、一朗の肩ごしに、桜子はじっとテレビの液晶を眺めている。 「外に、食べに行きませんか」  一朗はそこで初めて、手元の書籍から顔をあげた。なるほど、テレビの中ではグルメリポートが始まっていた。都内のどこそこにある隠れた名店にカメラが潜入し、あまりこういった仕事には慣れていないであろう女性アナウンサーが、精一杯の感情表現手段を用いて『美味しい』アピールをしている。  そのまま、ちらりと背後に視線をやると、桜子はその大きい目をきらきらと輝かせていた。さもありなん。彼女は作るのが好きだが、食べるのも好きだ。 だが一朗は答えた。 「ナンセンス」 「そ、そうですか……」  毎回毎回図々しい提案をしてはくるが、こちらがきっぱりと却下すれば原則としてそれ以上踏み込んでは来ない。一朗と桜子が、互いに無意識のうちにひいた、主人と従者の境界線である。 「でも僕は桜子さんの作るカレーは好きだよ」 「そうですか! では腕によりをかけましょう」 「ん、結構」  強いて言えば、食卓にカレーの並ぶ頻度が三日に一回から十日に一回くらいになってくれれば言うことはなしなのだが。東南アジア系のスパイシーな料理は彼女のソウルフードなので、まぁ必要以上にツッコミは入れまい。 「でも一朗さま、私も楽をしたいというわけじゃないんですけど、たまにはいろんなものを食べたくありませんか? 私のレパートリーにも限界がありますし。これは別に、やっぱり食べに行きたいって要望じゃなくてですね?」 「どうだろう。でもどうせ外食に行くなら、なるべく桜子さんのレパートリーを広げる一助になるところがいいし、僕は具体的に『なにを食べたい』って思ってから外食に行くかどうかを決めるし」 「ああ、まぁ、そうですね……」  桜子は、途端に遠い目を作った。 「夜中にいきなりイカが食べたくなったとたたき起こされたのは、去年のことでしたね……」 「桜子さんを起こすのは迷ったんだけど、朝起きた時に僕がいないと困惑するだろうと思って」  それも冬の寒い日のことであった。アニメ特撮のDVDがずらりと並び、萌えから燃えまで数多くのフィギュア・プラモデルを網羅した自室にて、ぐっすりと寝息を立てる桜子に、一朗は奇襲を仕掛けたのである。彼は寝ぼけ眼をこする桜子に、『一時間で外出の支度をして欲しい』と告げると、そのまま部屋を出て行ってしまった。『四〇秒で支度しな』とは言わず、一時間の猶予をくれるあたりが、石蕗一朗の優しさであった。  目を覚まし、シャワーを浴び、いつものナチュラルメイクを施し、従者としての外出スタイル、すなわちいつものメイド衣装に着替えた桜子を連れ、一朗はヘリポートに向かった。そのまま彼らは北海道を目指し、イカの夜釣りに挑戦し、函館湾が生んだ冬の味覚にたいそう舌鼓を打って、満足してから帰宅した。 「一朗さまって、何かを決意すると途端におカネ遣いが荒くなる傾向にありますね?」 「ナンセンス。自分がこれと決めたものには投資を惜しまないだけだよ。お金ってもともとそういうものだし、たとえ僕の総資産が五〇〇〇円だったとしても、たぶん同じことをする」 「まぁ、いいんですけどね」  一朗の目の前に置かれたティーカップはいつの間にか空になっていた。桜子がポットに手をかけると、一朗は本に視線を落としたまま、片手をあげて制止した。『もういいよ』の合図である。  桜子はソファの背後から恭しく一礼をすると、トレーの上にポットと空のティーカップを載せた。 「ひとまず、今日のおゆはんはご期待に沿ってカレーにしますね」 「ん、結構」

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—————————————————————— さて、『VRMMOをカネの力で無双する』のショートストーリーとキャラデザはいかがでしたでしょうか! 彼らがどういう風にネットゲームの世界で無双するのか!? 次回の紹介記事では、一朗や桜子などメインキャラクターたち、 また一朗が暴れまわるVRMMOとはどういったものなのか、など 世界観について詳しくご紹介いたしますのでお楽しみに! (緑茶)