弁護人や検事の言うことがわからなかった。『開廷!脳内裁判』


社会の色々なシステムをゲームに落とし込んで体験する……というのはよくあるパターンなのですが、今回紹介する

開廷!脳内裁判

は陪審制の法廷をテーマにしたもので、望む裁判結果を勝ち取ろうとする、3人から6人までプレイできるゲームとなります……が、そこは今までちょっと変わったゲームをリリースしてきたコーリー・コニエツィカ。

ふつうこのようなゲームだと、望む判決のパターンがいくつかあって複数の事物の思惑が対立する構造にするじゃあないですか。
しかし、このゲームでは、プレイヤーが担当するのは「検察」「被告人ガイ」のいずれか……正確にはガイのなかの複数のペルソナ(人格の構成要素)の一つとなって(「検察」以外は)己の中での主導権争いをすることになるのです!

「検察」なら当然有罪を目的としますが、「ガイの身勝手」のペルソナであれば無罪を、「ガイの疑念」のペルソナであれば有罪無罪がそれぞれ2票以下を、「ガイの誠実」のペルソナであれば有罪3票以上であり発話か運動を支配している(ほかのペルソナを遮って「罪を認める行動」をする?)ことをそれぞれ目標とします。

人数に応じて登場するペルソナは変わりますが、検察は常に登場します。
(画像に無い上級ペルソナもあります……「芸人魂」とか。無論、より裁判は混迷を深めます!)
ゲームの開始時にこれをランダムに配ります……だれが何を担当しているのかは、検察官以外は不明です。

各自ポイントが書かれた支配マーカーと配置スティックを受け取ります。
これでプレイヤー「競り」を行います。


ボードの中央には心理プラットフォーム……中央はガイの頭の中で、周りにはガイの行動、「計画」「運動神経」「観察」「本能」「発話」のプラットフォームに分かれています。

競りは、裁判を自分(?)の有利に進めるため、これらの主導権を奪い合うために行います!

そしてストーリーカードをランダムに1枚引いて、初期状態を決めます……

この「開廷!脳内裁判」ですが、単に競りのゲームではなく、ストーリー要素もあり、このストーリーカードで、現在の陪審の状況が決まったりします。

陪審の判断は表向きの有罪/無罪トークン、そしてどちらの決断か不明の影響トークンで示され、今後の裁判でのガイの行動で変化していきます。

こちらはゲーム終了時に影響トークンは公開され、有罪/無罪は相殺となり、残った結果がその陪審員の結審となります。

検察だけはついたてを受け取り、その後ろに裁判カードを置きます。
この裁判カードで、各裁判でのシチュエーションが提供され、それに従ってプレイヤーはそれぞれ判断を行うことになります。

こちらは山札と引いた2枚を準備します。

ゲームはまず検察が2枚の裁判カードから1枚を選択しこれからどの「分野」に関係する行動が行われるかを提示します。
これは結果を予想して、こっそりと検察プレイヤーが決めます。

これは「観察」と「運動神経」がこれから起こるってこと。

そして、スタートプレイヤーから時計回り順に、支配マーカーを1個、脳に置いて配置スティックで押し出します(弾いたりはしないこと)

脳内の各分野に置かれた支配マーカーの合計値が最も大きいペルソナがその領域を支配します!

しかしご察しの通り、このマーカーは数が多くなると押し出されたうえ、このプラットフォームから落ちることになります……マジョリティ争いのゲームなのにアクション要素があるのがポイント!

各自が1枚ずつ支配マーカーを置いたら、各分野の支配プレイヤーが決まります。
(良心の赴くままに話したり、本能の赴くままにやらかしたりするのだ!)

そうしたら、次は解決。
裁判カードの中身を読んで、結果に従います。

例えば……
「私はガイが金銭的問題を抱えていたことを知っています」隣人が証言台に立って言った。
「アパートの壁はかなり薄くて、声が筒抜けなのです……」

わりとどうでもいい情報をぶちまけてくる隣人。始終、ゲームのストーリー部分はこんな展開です。

これを聞いた各プレイヤーは……

検察官は任意の陪審員から無罪トークンを1枚取り除く(証拠ではないけど心証が悪くなったんだろうなぁ)。

「運動神経」を支配したプレイヤーは影響トークンを2枚引いて、1枚を任意の陪審員に、もう1枚を捨て札にする。
「有罪」「無罪」「判断保留」なのですが、きっと何らかの兆候が態度に出た(出した)にちがいない……

行動に選択肢が現れる場合もあります。
思わず足を踏み鳴らしてしまうガイ……静粛にと指示があった。どうする?

A:やめる。
B:両足でタップし始める。より早く。

「運動神経」を支配しているプレイヤーは、自分の望む結果を導き出しやすいのはどちらか推測して結果を選択します!
陪審員は性格が分かれており、行動によって反応が異なりますので、それを予想して選ばなくてはなりません。
(なお、タップをし始めると鋭敏な陪審員は有罪に傾きます……そりゃそうだ)

その後裏面も同様にすすめます(裏面は検察官も知らないのがポイント)。

なお、裁判カードは前半、後半で少し内容が変わりますが(前半は証拠の提示と証人の召喚に関して、後半はガイが証言台に立ったあと)、合計8枚しか使いません。
つまり、8ラウンドで終了。
しかし……どの局面もこのガイという男のしょーもなさと、裁判のカオスさが楽しめます……こいつ、かなりのダメ男です!!
(これは実際にプレイをしてお楽しみください)

裁判が終わったら、各陪審員の影響トークンを公開し、有罪と無罪を相殺して最終的な判断がどちらだったかを確認します。

この結果が、自分の目的に合致していれば勝者となれます!
(複数人が同時に勝者となる場合もある。)

複雑にしたいなら、ちょっとゲーム時間は伸びますが、支配トークンの種類(喜怒哀楽等々)によって、置くときに様々な効果を与えるルールもあります。
(例えば、「怒り」を配置した場合、まだ手番を得ていないほかのプレイヤーの支配マーカーを破壊するなど、いろいろやることが多くなるがより戦略的になる。)

ルールは実のところ簡単であり、ストーリー展開も相まって、ゲームの展開も(ダメ男ガイのしょーもない……いや、まともな登場人物はいないか?)裁判をなぞるとなっているのもポイント。
がっつりとガチガチのマジョリティ争い/競りを楽しむつくりではないのは、アクションゲーム要素や選択肢要素からも分かるように、しかし考え所が無いわけではない、一見バカゲーですし、実際バカ要素が多いのですが、きちんとゲームとしてまとまっているのが何気に凄い点。
ちょっとほかにない、ゆかいなパーティー系のゲームとなっており、コメディタッチの法廷ドラマが好きな人には特にオススメいたします。

しかも教育的な要素は……あまりないかな。

開廷!脳内裁判
プレイ人数:3-6人
対象年齢:12歳以上
プレイ時間:60-120分
製作:Unexpected Games
デザイン:コーリー・コニエツィカ
価格:4,950円+税