ハイリハイリフレハイリホー『エンシャント・ワールド』


さて、もう当社も期末……ゲーム的に言えば2014年ラウンドの得点フェイズなわけです。
もうね、為替レートは乱高下するわ、中国の人件費はぐいぐい上がるわ、ヨーロッパの物価はじわじわ上がるわという凄いラウンドだった訳ですよ……部署的にはワーカーが足りない気がするし。

と、いうわけで今回紹介しますのは、そんな期末に入荷した、『八分帝国』の作者によるワーカープレイスメントゲーム、
エンシャント・ワールド
です。
昨今流行のカードやタイルの多様な能力を、アイコンだけではなくテキストで補足説明するワーカープレイスメント。これはドイツだけではなく、アメリカ市場を意識している出版社なんかは採用してきている手法。たとえば、『ムラーノ島』なんかもアイコンだけで済むものを、テキストも捕捉で入れている感じ。
今後この「アイコンの説明を簡単なテキストで説明」スタイルは増えるんじゃないかな……とくにアメリカ市場の要求のようだし。

さておき。
プレイヤーは巨神(「タイタン」と読む……巨人でジャイアンツではない)が跋扈するファンタジー世界で、人類の敵である巨神を退きつつ都市の発展を競います。

ゲームボードは地図ではなく、アクションを実行するためのスペースや、カードの置き場が描かれています。

帝国カード置き場。
色々な建築物や施設などのカード。



点数になるだけではなく様々な能力を持つのだ。
左下はコスト。

軍隊カード置き場。
巨神を退ける人類の刃!

左上は地域カード置き場で、自分の都市国家に組み込む領土を現しています。
右上には人類の敵である巨神たちが置かれます。

ゲームではこの「発展の度合い」はカードに記されており、この世界の五部族をあらわす旗印を集めることで勝利点が決まります。

プレイヤーが最初に持っているのは首都を含むプレイヤーシートと、領土として《釣り場》と《小麦畑》、軍隊として《都市衛兵》と《民兵》、住民トークン1~3の3個、6金です。

ルール自体はものすごくオーソドックスなワーカープレイスメントで、様々なアクションスペースに住民トークンを置くことでアクションを実行していくもの。

労務>お金獲得
建築>お金を払って並んでいる帝国カード(建物)獲得
拡大>お金や知識を払って地域カード(領土)を獲得
……などなど。

リソースはいくつかありますが、お金知識はフレキシブルなリソース。

そのほか領土や軍隊上限を獲得しないと、保持できるカード枚数に限界があったりします。

基本はワーカープレイスメントですので、他のプレイヤーに邪魔されつつも、労働者コマだけあるアクションを変換していかに点数を得ていくかというゲームですが、点数となるカードや領土などはランダムに配置されますし、その建物や領土は特殊な能力を持つものが大多数なため、展開は毎回微妙に異なっていくわけです。

また、点数はバナーの種類ごとにたくさん集めると点数が増えていく形。このバナーの記された帝国カードや領土カードは毎回ランダムにカードは配置されるので、どのバナーを重視するかはゲームの度に変化していきます。
このバナーは種類ごとに、1つで1点、2つで2点、3つで4点、4つで6点、5つで8点、6つ以上で11点……バナーは5種類なので、最大点数は理論上は55点ですが、そのほかボーナスを得るカードもあるのでそのようなカードにも要注意。

こんな感じで集まると11点。
巨神の重要さがわかっていただけるだろうか……

ここまでは普通のワーカープレイスメントのゲームでよく見られる感じのものですが、チョット特徴的な部分として……

1)ワーカーの配置制限
アクションスペースに住人トークンを配置する時、何もないときにはどんなものでも配置できますが、先に他のトークンが置かれていた場合、そのトークンの数字よりも大きな数字の住人トークンでなければ置けないという制限があります。
早い者勝ちでカツカツなタイプのものよりは緩やかですが、アクションスペースの置ける数が1マスだけではないタイプよりはちょっと展開が流動的になる感じで面白いアイディア。

こんな感じでどれをどこに置くのかちょっと考えどころ。

なお、ワーカーには毎ラウンド食糧と言う維持費が必要だ。

オーソドックス。

2)巨神
巨神は建物とは別の得点源だと思えばわかりやすいのですが、巨神への攻撃は住人をアクションスペースに置く必要は無く、毎ターン1度だけ攻撃できるもの。金はかかるけど。
ただし、倒すためには必要な軍事力とタイプがあり、反撃によって自国の帝国カードにダメージが与えられる可能性もあります。ダメージが入った帝国カードは回復するまで裏返しになってしまいます。

4戦力で倒せるけど、反撃も怖い……巨人の目で帝国カード1枚破壊、金貨の目で金を失うの結果……帝国カードはアクションで修理も可能だ。

そのほかにも、、ラウンドが過ぎていくごとに、大航海時代が来て領土をサーチできるようになったり、人口爆発期がきてアクションで住民が増やせるようになったり、いろいろと技術や社会が進歩した結果か、帝国カード(建築物)はデッキAからデッキBに変わったりしていき、時代の変化を演出します。

ラウンドトラックですが……


航海を解禁したり……


拡大期が来たり……



建築物が進歩したりするのだ。

また、軍隊が時代を経るごとに過去の精鋭たちの伝承の技術により強くなっていったりと、世界観再現部分のルールはシンプルながら、この世界の叙事伝説ゲームの側面をうまく演出している感じ。

ルールはシンプルで直観的なので、説明を受ければ難しい点はさほどなく、初心者でもとっつきやすい感じの、プレイのしやすい大型ゲームとなっています。
特に巨神を倒しつつ都市文明を育てるという設定部分にぐっとくる人、RPG畑出身で世界設定からゲームに入る人、アートワークを見て世界観が気に入った人にお勧めいたします。

エンシャント・ワールド(Ancient World)
プレイ人数:2-4人
対象年齢:13歳以上
プレイ時間:90分
製作:Red Raven Games
デザイン・イラスト:ライアン・ローカット
価格:7,600円+税