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想像してみよう。筋骨隆々たる戦士と、強大なる秘術を振るう魔法使い、そして身の毛もよだつ怪物の跋扈する世界を。
想像してみよう。恐れを知らぬ勇者だけが足跡を刻むことができる古の遺跡と、巨大な地下洞窟、そして果てしなき未開の荒野の広がる世界を。
想像してみよう。剣と魔法が支配する世界を、妖精と悪鬼が住まう世界を、巨人と竜が跳梁する世界を。
それがファンタジー・ロールプレイング・ゲームの最高峰『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(D&D)の世界だ。君は武技に長けた戦士であるファイター、勇気ある神官クレリック、敵の隙をつき致命的な攻撃を繰り出す盗賊ローグ、強力な呪文を操る魔法使いウィザードといった、伝説に語られるような1人の英雄を演じる。気心の知れた友人たちと、ほんの少しの想像力。それさえあれば、君は危険な任務や伝説にうたわれるような大冒険に旅立ち、恐ろしい試練と血に飢えた怪物どもに挑むことができる。
さあ、冒険の準備をしよう─この『プレイヤーズ・ハンドブック』には、君が自分だけのヒーローを作るために必要なすべてが詰まっている!
初めてアドベンチャー(冒険)をする君のために以下のトピックについて解説する。
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ロールプレイング・ゲームとは
『ダンジョンズ&ドラゴンズ』は、ロールプレイング・ゲームだ。実をいえばD&Dこそ世界最初のロールプレイング・ゲームにして、このジャンルのゲームを生み出した元祖なのだ。
ロールプレイング・ゲームは物語を創造するゲームである。子供の頃にやった“ごっこ遊び” 的な要素を含んだゲームと思えば解りやすいだろう。しかし、D&Dをはじめとするロールプレイング・ゲームは、形式的にも構造的にも、確固たるゲーム性を有し、無限に遊び続けることのできる拡張性を持つ点で“ごっこ遊び” とは異なる。
D&Dはファンタジーの世界で冒険するゲームである。君は1人のキャラクターを作成し、他の(君の友人たちが作った)キャラクターたちと力を合わせて、世界を探険しモンスターと戦う。D&Dはダイス(サイコロ)とミニチュアを使って遊ぶゲームだが、探険や戦闘はテーブルの上よりもむしろ、君の想像の中で繰り広げられる。その中で、君は想像力の及ぶ限りどんなものでも自由に作り出すことができる。無限の予算とどんなことでも実現するテクノロジーをもって映画を撮るようなものである。
D&Dを他に類を見ない素晴らしいゲームにしている存在がダンジョン・マスター(DM)だ。DMは、主導的役割を果たす語り手にして、ゲームの審判役である。DMはキャラクターたちのためにアドベンチャー(冒険)を作成し、キャラクターのとるアクションについてプレイヤーたちに解説する。DMはD&Dに無限の柔軟性を与えてくれる─DMはどんな状況になろうとも、どんな突飛で無茶苦茶な提案をプレイヤーたちがしようとも対応することができる。それがD&Dの冒険を活気にあふれた、エキサイティングで予想のつかないものにしてくれるのだ。
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D&Dの歴史 ロールプレイング・ゲームも、コンピュータ・ゲームも、トレーディング・カードゲームもまだ存在しなかった時代。ウォーゲームというものがあった。メタル・ミニチュア(金属製の小さな人形)を使って歴史上の有名な戦いを再現するウォーゲームは、いわゆるホビー・ゲームの原点であった。1971年、ゲイリー・ガイギャックスは『Chainmail』を製作した。これは中世ヨーロッパを舞台とした伝統的なウォーゲームだが、おまけとしてファンタジーのクリーチャーと魔法をもりこむことも可能になっているルール・セットであった。1972年、デイヴ・アーネソンはガイギャックスに新しいアプローチを提案した;各プレイヤーが大人数の軍隊を操るのでなく、1人のキャラクターを、1人の英雄をプレイするというのはどうだろう?互いに戦うのでなく、英雄たちが協力して悪者を倒し、報酬を得るというのは。こうして、ルールとミニチュアと想像力を組み合せた、まったく新しいエンターテイメントが誕生した。そして1974年、ガイギャックスとアーニソンはTSR社を設立し、世界発のロールプレイング・ゲーム・ルール・セット─『ダンジョンズ&ドラゴンズ』を出版した。 |
D&Dを遊ぶには何がいる?
『ダンジョンズ&ドラゴンズ』をプレイするには、以下の4つが不可欠である:プレイヤー少なくとも1人(プレイヤーが4人または5人いるのがベスト)、ダンジョン・マスター1人、アドベンチャー1つ、ルールブックとダイス一式。
プレイヤー・キャラクター
プレイヤーである君は1人のキャラクター─英雄的な冒険者を作成する。冒険者とは、ダンジョンに潜り、モンスターと闘い、世界各地の暗黒の荒野を探険するチームの一員である。プレイヤーが作成したキャラクターは、プレイヤー・キャラクター(PC)と呼ばれる。プレイヤー・キャラクターは、小説や映画の主人公のような、ゲームのアクションの中心的存在である。
D&Dのキャラクターをプレイするとき、君はまるで自分がそのキャラクターになったかのように、キャラクターの立場で物事を考え、決断をする。たとえば、君のキャラクターが次にどの扉を開けるかを決めるのは君だ。モンスターと戦うべきか、悪者と交渉すべきか、危険なクエストを遂行するかを決めるのは君なのだ。君はこうした判断を、自分のキャラクターの性格、動機、目的に基づいて下し、望むならキャラクターになりきって話したり演技をしたりしても構わない。君は自分のキャラクターがゲーム内でどんな行動をし、どんなセリフを言うかについて、ほぼ無制限のコントロール権限を持っているのだ。
ダンジョン・マスター
D&Dのプレイには、特別な役割を担う人物がいる:それがダンジョン・マスター(DM)だ。ダンジョン・マスターはプレイヤーたちに対して、彼らが挑む冒険と挑戦を提供する。D&Dをプレイするには、必ずダンジョン・マスターが1人必要になる─DMがいなければゲームをプレイすることはできないのだ。
ダンジョン・マスターは、ゲームにおいて以下のような機能を果たす。
アドベンチャー
冒険者は冒険してこそ冒険者。『ダンジョンズ&ドラゴンズ』用アドベンチャーは、一連のイベントで構成されている。次にどちらに行くべきかをプレイヤーが決定し、そしてその結果生じた遭遇と挑戦にキャラクターとしてどのような対応をとるか。それがアドベンチャーを、そのキャラクターを中心としたエキサイティングなストーリーへと変えるのである。アクション、戦闘、謎解き、魔法、挑戦とたくさんのモンスター! これこそD&Dアドベンチャーの真骨頂なのである。
アドベンチャーの内容は“ダンジョン探険もの” ─モンスターと罠の配置された部屋部屋があり、冒険者がそこを探険する理由を説明する物語はほとんどない─のようなシンプルなものから、殺人事件を解決する推理ものや政治陰謀劇のような複雑なものまで、多種多様なものがありえる。アドベンチャーは1回のゲーム・セッション(ゲームを遊ぶための集まり)で終わることもあれば、数回のセッションをかけてプレイすることもある。たとえば、ある城の廃墟を探険するアドベンチャーが終了までにセッション6回、現実世界の時間で2ヶ月ほどかかるということもある。
同一グループのプレイヤー・キャラクターが、同一のダンジョン・マスターのもとで、継続して複数のアドベンチャーをプレイしていくことを、“キャンペーン” という。英雄たちの物語は1回のアドベンチャーでは終わらない。君が望む限りいくらでも長く続くのだ!
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ルールブックとダイス
ゲーム中のアクションはほぼ君の想像の中で展開されるが、それでもD&Dをプレイするためにはいくつかの“ゲーム用小道具” も必要になる。
どうやって遊ぶ?
『ダンジョンズ&ドラゴンズ』というゲームにおける君の“駒” に相当するのがキャラクターだ。彼または彼女は、ゲーム世界における君の分身なのである。君は自分のキャラクターを通じて、どんな手段を使ってでも、思いのままに、ゲーム世界へ干渉することができる。唯一の限界は、君の想像力─そして往々にして、君がダイスでどれだけ高い目をロールできるかだけである。
基本的に、D&Dというゲームは、プレイヤー・キャラクターのグループがダンジョン・マスターの提示するアドベンチャー(冒険)を遂行するという形式で行なわれる。アドベンチャーは、数回の遭遇(君のキャラクターたちが克服せねばならない挑戦)から成り立っている。
遭遇には2種類ある。
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探険
キャラクターたちが遭遇と遭遇の合間に世界を探索することを探険という。君は自分のキャラクターがどこに向かって旅をするか、あるいは次にどんなことを試みるかを決定する。探険はDMと君との会話のやりとりという形式で行なう。君はDMに対し自分のキャラクターにさせたいことを告げ、DMは君のキャラクターの行動によってどんなことが起きたかを君に告げる。
たとえば、ちょうど今プレイヤー・キャラクターたちが暗い裂け目の底に降り立ったところだとしよう。DMは、裂け目の底から暗闇へと延びている3本のトンネルが君のキャラクターに見えることを説明する。君は他のプレイヤーたちと相談して、どのトンネルに最初に入るかを決め、君のキャラクターたちの行き先をDMに告げる。これが探険である。君は他にどんなことを試みてもいい:モンスターがやってくるようなら隠れ場所を探して待ち伏せを試みてもいいし、目一杯に声を張り上げて「だれかいませんか?」と叫んでみてもいいし、裂け目の底の地面を丹念に調べて、岩塊や苔の合間に何か面白いものが落ちてないか探してみてもいい。これもまたすべて探険なのである。
探険を通じてさまざまな決断を下していくうちに、やがて君たちは遭遇へと辿り着く。たとえば、トンネルのうち1本は、腹をすかせた触手の怪物グリックの巣につながっているかも知れない。もしそちらの方へ進むなら、君のキャラクターたちは戦闘遭遇に向かっていくことになる。もう1つのトンネルは魔法で施錠された扉に続いており、それを突破しなければならなくなる─こちらは非戦闘遭遇である。
ダンジョンやその他の冒険の舞台を探険している間、君は以下のアクションのどれかを試みることになるかも知れない:
君が試みたことが実際にうまく行くかどうかは、ダンジョン・マスターが決定する。アクションには自動的に成功するもの(君は普通、何の問題もなく歩き回ることができる)もあれば、1回ないし複数回のダイス・ロールや指定された判定に成功せねばならないもの(たとえば鍵のかかった扉を叩き壊すなど)もある。中には判定するまでもなく成功不可能と判断されるものもある。君のキャラクターに可能なことというのは、力持ちで、頭の回転が速くて、素速くて、良い武装をした、人間のアクション・ヒーローにできるようなことである。たとえば、君は厚さ3インチ(約7.6cm)の鉄板でできた扉を素手で殴ってぶち破ることはできない─強力な魔法の助けを借りない限り!
君のターン
探険中は通常、ターン単位で物事を解決する必要はない。普通、DMは「どうする?」と君に尋ねて行動をうながし、君が答えると、DMはどんなことが起きたかを説明する。望むなら、君は好きなときに質問を差し挟んだり、他のプレイヤーに助言をしたり、新たなアクションを宣言することができる。ただし、他のプレイヤーたちへの配慮も忘れずに。他のプレイヤーたちも自分のキャラクターにアクションをとらせたいと思っているからだ。
ただし、戦闘遭遇になると話は変わってくる:プレイヤー・キャラクターとモンスターは全員、イニシアチブ順という固定された行動順に従ってターンを行なうようになるのである。
プレイの例 以下は典型的なD&Dのゲーム・セッションの様子である。冒険者たちは遺跡を探険している。そこは古いドワーフの砦で、今はモンスターが棲み着いている。このセッションのプレイヤーは; |
基本システム
君が振るった剣はドラゴンを傷つけることができただろうか、それとも鉄のように堅い鱗に跳ね返されてしまっただろうか? 君はオーガに荒唐無稽なハッタリを信じ込ませることができるだろうか、激流を泳いで向こう岸に辿り着くことができるだろうか?
こうした行動の成否は、非常に基本的かつシンプルなルールを用いて判断する:まず、君は自分のキャラクターにさせたいことを決定し、その内容をダンジョン・マスターに告げる。それを受けDMは君に判定を行なうように告げ、同時に君がどれくらいの確率で成功できるかを(つまり、その判定の目標値を)決定する。
君は20面体ダイス(d20)を1個ロールし(振り)、出た目にいくつかの数値を加算した結果が、DMの決定した目標値以上の値であれば成功となる。以上!
基本システム 1. d20を1個ロールする。できるだけ大きな値が出るように!2. 関連した修正値をすべて加える。 3. 合計を目標値と比較する。 判定の結果が目標値以上であれば、君は成功する。 判定の結果が目標値より低ければ、君は失敗する。 |
判定が成功したなら、それによって何が起きるかを決定する。判定が攻撃であったなら、君はダメージをロールする。判定が落とし穴を飛び越せたかどうかを判断するものであったなら、判定結果で君がどれくらいの距離をジャンプできたかが決まる。隠れようとする試みの判定に成功したなら、モンスターは君に気づかなかったことになる。
実際にはもう少しいろいろとあるが、この基本ルールはゲームのあらゆる物事の解決に使われる。本書にある他のルールはすべて、このシンプルなシステムを拡張・増補したものなのである。