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ドラゴンを鱗の色で判断してはならぬ――『ドラコノミコン:メタリック・ドラゴン』 3月5日(金)発売!

第1章:ドラゴンについて

 だれかが英雄になろうとするなら、前もって蛇が竜になっていなくてはならぬ、さもないと彼には好敵手が欠けていることになる。

――フリードリヒ・ニーチェ(池尾健一訳)


 ドラゴンの力と威厳に比肩しうるクリーチャーなどほとんどいない。完全に成長したドラゴンは恐ろしい敵だ。鋼鉄さえも引き裂くことができる爪と牙を武器とし、鉄のように硬い鱗を鎧い、鷲よりも速く飛翔し、城門すら粉砕できる。たとえドラゴンが愚かなありふれた野獣だったとしても、極めて危険なクリーチャーだったろう。なぜならドラゴンはでかくて強いから。だがドラゴンは単にでかくて強いだけではない。冷徹で抜け目のない理性があるとともに、その体内に渦巻く元素エネルギーを使用して恐ろしいブレス攻撃を行なうこともできるのだ。
 ある時代では、ドラゴンは伝説以外のなにものでもない。あまりにも稀少で謎めいたクリーチャーであるため、まったく目撃されずに何世紀も経ったりする。別の時代では、ドラゴンは世界を支配している。大空を埋め尽くして飛翔し、下級の存在を滅ぼしたり飼い慣らしたりしているのだ。現在の時代はこれらの両極端の間のどこかに位置している。この世界にいくつかある文明の中心地では、ドラゴンは滅多に目撃されない。典型的な農民や商人がその生涯にドラゴンを目撃するのはせいぜい一度か二度かもしれない。だがそのような領域を囲んでいる辺境や広大な原野では、ドラゴンはもっとずっと頻繁に目撃されている。
 この章ではメタリック・ドラゴンの性質と、この世界における彼らの位置付けを解説する。主な話題を以下に掲げる。


起源

 ドラゴンは天地創造の最初期の時代から、この世界の大空を飛翔し、この宇宙の遥か彼方をさまよい歩いて来た。彼らは定命のクリーチャーのなかで最も卓越した存在であるが、無数に存在するゴブリンやオークの群れや人類の軍勢に比べれば、その数は少ない。定命の世界における神話や伝説的な歴史の中で数十体の、もしかしたら数百体のドラゴンが記憶されているが、この世界の最初のドラゴンにまつわる物語を知っている賢者は僅かしかいない。


最初のドラゴン
 この世界が誕生した時、プライモーディアルが創ったこの世界の生の物質に、神々が生命を与えた。天地創造の時代に、神々は定命の存在を無数に創った。後にこの世界に住まうことになるすべての種族、野獣、植物を生み出したのだ。だがイオ神は元素の世界に暮らすのみならず、元素そのものに生命と魂を与えるような定命の存在を創るのに没頭した。生命を与えられた元素が有する恐ろしい力に負けないようにするために、イオは物凄い力と頑健さを有する定命の存在を創らねばならなかった。そのため彼はすべての定命のクリーチャーのなかで最も強力な存在を創った。そう、ドラゴンである。
 学識あるメタリック・ドラゴンはこう信じている。イオが新しいドラゴンを創るたびに、彼の気分は異なっていたのだと。その時のイオ神の振る舞いによって、それらのドラゴンの中に種が撒かれた。そしてそれらのドラゴンが最終的に何になるかは、それらの種によって決定された。他者を助けたいという欲求や同情にイオが満たされた時に彼が創ったドラゴンは、彼の死後メタリック・ドラゴンになった。イオが破壊的な衝動や貪欲な衝動を満たすために生み出したドラゴンは最終的に、イオ神の邪悪な感情によって、最初のクロマティック・ドラゴンとカタストロフィック・ドラゴンにねじ曲げられた。イオの死に続く長い歳月の間に、これらの種によってドラゴン族はさまざまな種類に変化していった。
 言うまでもないが、カタストロフィック・ドラゴンとクロマティック・ドラゴンは、イオにまつわる物語のこのバージョンを認めていない。スカージ・ドラゴンはもっとずっと嫌っている。この伝説によれば、スカージ・ドラゴンはトゥルー・ドラゴンの惨めな紛い物でしかない。すなわち、定命の肉体や魂と元素エネルギーを融合させる秘法をイオは有していたが、そのような秘法を有しない、嫉妬深い小神によって、スカージ・ドラゴンは創られたというのである。スカージ・ドラゴンはこのいにしえの“誹謗中傷”をひどく嫌っている。そしてこの物語を喧伝している賢者や学者を見つけたら、それが誰であれ厳しく対処している。


イオの子供たち
 その勇気と身体能力において神々の頂点に位置していたイオは、“暁戦争”においてたくさんのプライモーディアルと戦い、やっつけた。同様に彼の強力な子供たちも、怒れるプライモーディアルが解き放った元素の軍勢から森羅万象を守るための戦いにおいて、すべての定命の存在の先頭に立った。だが最終的に、イオは自身に匹敵する敵と遭遇した。“恐怖の王”イーレックハースという名前のプライモーディアルである。“恐怖の王”はイオを殺害した。そしてプライモーディアル軍が勝利したかに見えた。その時、ばらばらになったイオの肉体から、2柱の新しい神が立ち上がった。“プラティナム・ドラゴン”バハムートと“多彩なる竜”ティアマトである。
 バハムートとティアマトは力を合わせて“恐怖の王” をやっつけたが、次いでティアマトが気高いバハムートに襲いかかり、すべてのドラゴンを支配しようと試みた。イオは仁義と激情の両方を兼ね備えた神だった。野心と鋼の意志を兼ね備えていた。美を愛し、それを所有したいと欲していた。ティアマトはイオの比較的邪悪な性質をたくさん継承した。そのため彼女は自身と対等な存在を容認できなかった。自身以外のクリーチャーがドラゴン族を統治するのを許すことができなかった。バハムートはイオの気高い性質をたくさん継承するとともに、イオの力の大部分を手に入れた。“プラティナム・ドラゴン”はティアマトをやっつけた。彼女はタイテリオンの暗い深みに撤退し、その後はプライモーディアルとの戦争にほとんど関与しなかった。やがてバハムートは神々の擁護者になった。かつてのイオとほとんど同じくらい気高く強力な擁護者に。


ドラゴン戦争
 イオの後継者間の骨肉の争いはすべてのドラゴン族に引き継がれた。この世界において長い歳月に渡り、クロマティック・ドラゴンはがむしゃらに戦った。バハムートを打倒し、ティアマトを“すべてのドラゴンを統べる女王” の座につけるために。メタリック・ドラゴンは一度ならず、この世界にいる下級の定命の存在のために王国を創建し、公正に賢明に統治したが、最後にはクロマティック・ドラゴンの編隊が率いる怒り狂った群れに、自分たちの領域が滅ぼされるのを眺める羽目になってしまった。だがやがて、ドラゴン同士の戦いは減少し、最後には、いにしえの挑戦や復讐を覚えている者すらほとんどいなくなった。ドラゴンの数は減少した。そうして時が経つにつれ、残った者たちはいよいよ頑固になり、いよいよ懐疑的になり、いよいよ自分のことに夢中になっていった。イオはドラゴン族をあまりにも強く、あまりにも尊大に創り過ぎたため、ドラゴン族はいかなる大義に対しても、長きに渡ってそれを支持することができなかったし、他者による支配を認めることもできなかった。たとえ同族による支配であっても。
 いかなる大義に対しても、ドラゴンが団結することは滅多になかった。バハムートとティアマトの戦争の最初期にまで遡るいにしえの対立や疑念により、ドラゴン族の諸種族は修復不能なまでにばらばらになっている。最も激しい争いはクロマティック・ドラゴンとメタリック・ドラゴンの間で行なわれているが、それぞれの種族の内部にさえ、異なる種類間の疑念がたくさん存在している。シルヴァー・ドラゴンはレッド・ドラゴンを憎んでいるが、それだけではない。彼らはまた、ゴールド・ドラゴンの傲慢な野心も疑っているし、カッパー・ドラゴンの強欲も嫌っている。ホワイト・ドラゴンは自分たちより遥かに強いシルヴァー・ドラゴンを憎んでおり、恐れている。シルヴァー・ドラゴンはホワイト・ドラゴンを、自身が選んだ縄張りからしばしば追い払うから。だがそれだけではない。ホワイト・ドラゴンはレッド・ドラゴンがそばにいる時も同様に警戒するのだ。なにしろレッド・ドラゴンは貢ぎ物を要求したり、彼らを殺害したりするかもしれないから。それどころか、大部分のドラゴンにとって最悪の敵とは、自分と同じ色や種類の他のドラゴンなのである。


イオの命令
 ドラゴン族を支配したいというティアマトの衝動だけが、さまざまな種類のドラゴン間の争いの原因というわけではない。この世界とその中における自分たちの居場所をメタリック・ドラゴンがどう見ているかと、親戚であるクロマティック・ドラゴンやカタストロフィック・ドラゴンがそれらをどう見ているかは、異なっている。メタリック・ドラゴンはイオの言葉と彼の行ないに関する物語を覚えており、ドラゴン族に与えられた崇高な目的をそれらの中に読み取っている。この世界にいるすべての下級の定命の存在を鼓舞して守るために、イオは恐ろしい筋力、知力、魔法の力をドラゴンに与えたのだと、メタリック・ドラゴンは信じている。ドラゴン族はプライモーディアルの軍勢からこの世界を守り、定命の存在の文明を導き、この世界の物事を形作る責任を負っていると彼らは信じている。遥か昔にイオが命じた世界をいつの日か構築するために。メタリック・ドラゴンはこの気高い目的を“イオの命令”と呼んでいる。太古の預言と啓示によって形成された崇高な実存哲学だ。
 すべてのメタリック・ドラゴンが“イオの命令”を知っているわけではない。また知っていて無視する者もいる。アイアン・ドラゴン、アダマンティン・ドラゴン、コバルト・ドラゴンは隠遁して野蛮な生活を送っているため、自分たちの太古の歴史に関する知識をほとんど有しない。これらのドラゴンは自分自身の機知、力、見識を用いて、この世界の中で自活している。要するに、手に入れることができる縄張りや財宝はそれがなんであれ手に入れるとともに、可能な限り長期に渡ってそれを保持することによって。あるいは、“イオの命令” は子供が見る天真爛漫な夢であるとみなしているメタリック・ドラゴンもいる。ティアマトの強欲と野心によって遥か昔に駄目にされ、ドラゴン族が分裂した時に永遠に失われてしまったものであると。冷笑的なメタリック・ドラゴンは“イオの命令”を完全に無視している。別のクリーチャー(それがなんであれ)のために自分たちが一所懸命努力しなければならない理由などまったく存在しないと考えているのだ。しかしながら、それを忘れてしまったドラゴンや放棄したドラゴンがいるにもかかわらず、“イオの命令” は、この世界で最も強力なメタリック・ドラゴンの大部分の行動を今も導いている。ゴールド、シルヴァー、ミスラル、オーリアム・ドラゴンは“イオの命令”を尊重し、その太古の知恵に自身の行動を委ねる可能性が極めて高い。
 “イオの命令”を受け入れたドラゴン同士においても、それが正確には何を意味しているか、そしてそれはどのようにして実現されるべきかについては、その見解が大いに(そして時には猛烈に)異なっている。ゴールド・ドラゴンは“イオの命令”を、公正な君主として下級クリーチャーを支配せよという命令であるとしばしば解釈している。スチール・ドラゴンはこう信じる傾向がある。すなわち“イオの命令” を最もうまく実現する方法は、自分自身の道を見つけようと頑張っている下級の定命の存在の自由を守ることであると。あるいは、自身がいかがわしいとみなした種族、社会、団体に対して無慈悲な聖戦を行なうよう、“イオの命令”は自身に要求していると考えているドラゴンもいる。あるいは、“イオの命令”を最もうまく実現するには、この世界にいるその他の種族に導きを与えて範を垂れれば良いと信じている者もいる。
 その他のドラゴン族は“イオの命令” について異なる見解を有している。カタストロフィック・ドラゴンは“イオの命令”という概念全体を純粋な空想とみなしており(そもそもその概念を耳にしたことがあるとすればの話だが)、ドラゴン族を導く崇高な哲学などイオはまったく残さなかったと信じている。これに対してクロマティック・ドラゴンとスカージ・ドラゴンはこう信じている。すなわちドラゴンの崇高な目的とは、この世界とそこに住まう人々に対して好き勝手なことを行なうことであると。彼らの価値観においては、力こそが正義だ。そしてイオは彼らをこの世界において最も強力なクリーチャーに創り給うたため、彼らは自身の心の赴くままに支配したり、略奪したり、破壊したりできる。クロマティック・ドラゴンが哲学について議論する時(滅多にないが、まったくないわけではないことが一般に知られている)、“イオの命令” が与える純粋で簡潔な目的について、メタリック・ドラゴンは致命的に間違った解釈をして粉飾したと彼らは主張する。彼らの主張によれば、“イオの命令”はこの世界を支配してその富を大いに楽しめという命令以外のなにものでもない。


善と悪
 他者を支配したいという衝動、時の彼方から続くクロマティック・ドラゴンとの戦争、そして“イオの命令”の複雑さ故、メタリック・ドラゴンはこの世界という舞台でさまざまな役割を演じている。彼らは他者から最高の能力を引き出そうと頑張る教師であり、助言者であり、王だ。やがて起きる出来事の流れを導く預言者だ。王国の運命を弄ぶ操り手であり、干渉者だ。時には優しく、時には絶対的に無慈悲な守護者だ。暴食家であり守銭奴だ。専制君主であり破壊者だ。気高い勇者であり邪悪な陰謀家だ。人間やその他の定命の種族のメンバーと同様に、ドラゴンも実にさまざまな道を歩んでいる。
 その他の大部分の種類のドラゴンに比較して、メタリック・ドラゴンは気高い大義や目的を発見して追求するケースが多い。もちろん、最悪のクロマティック・ドラゴン並みに野蛮で近視眼的な者もいるが、大部分の者は快適な住処とたっぷりの食べ物以上の何かを探し求めている。もちろん、強力で長命で高度に理性的な存在と気高い目的の組み合わせがこの世界にとって有益とは必ずしも限らない。メタリック・ドラゴンが悪意をもって悪の大義を信奉するのは一般的でないが、彼らが心に抱く目的のなかには、ドラゴンの夢に巻き込まれた下級クリーチャーの目から見れば無情な、無慈悲な、破壊的な、もしくは専制的なものがたくさんあるかもしれない。
 メタリック・ドラゴンが人間や自我があるその他の種族のメンバーを自身の陰謀に組み込む可能性は、その他のドラゴンがそうする可能性よりもずっと高い。年長で強力なレッド・ワームは豊かなドワーフの王国を見て、それを略奪しようと計画するかもしれないが、ゴールド・ワームはそれよりひどい結果を生む可能性がある何かを計画するかもしれない。以後何世紀にも渡ってその領域を支配し、その発展と資源をそのドラゴンの目的に向けて導くことができるような計画を。レッド・ワームは最後にはいなくなるが、ゴールド・ワームは永遠にその仕事をやめないかもしれない。
 この例を心に留めて、いわゆる“善の”メタリック・ドラゴンについて心に留めるべき3つの重要な真実を以下に掲げる。

1. すべてのメタリック・ドラゴンが善というわけではない。
 それどころか、悪や混沌にして悪の属性があるメタリック・ドラゴンもいる。シルヴァー・ドラゴンやゴールド・ドラゴンが悪になることはあまりないが、もっと卑しいメタリック・ドラゴン(アイアン・ドラゴンやコバルト・ドラゴンなど)の場合、真の悪の代表がいてもそう珍しい話ではない。悪のメタリック・ドラゴンのなかには自身より弱いクリーチャーを、奴隷にしたり略奪したり気紛れに弄んだりするべき惨めな烏合の衆とみなす者もいる。あるいは“イオの命令”についてねじ曲がった見解を抱き、有効なあらゆる手段を使用して、自身の邪悪な欲望に合うように人間の領域を形作る、悪のメタリック・ドラゴンもいる。

2. 無属性のメタリック・ドラゴンはしばしば危険な目的を追求している。
 悪にその身を捧げていないドラゴンであっても、悪にその身を捧げたドラゴンと同じくらい危険になりうる。比較的野蛮なドラゴンのなかには縄張り意識がとても強い者や、激しやすい者や、莫大な報酬の約束によって敵対的な行動にたやすく引き寄せられる者がたくさんいる。あるいは、自身のお気に入りである人間の部族や領域が有する権力や財産を、自分自身の力の反映であるとみなす者もいる。彼らは最も強く最も忠実な王国を作って統治する。そのような領域は野蛮かもしれないし、迫害されているかもしれないし、好戦的かもしれないし、堕落しているかもしれないし、退廃的かもしれない。比較的賢明で忍耐強いドラゴンは王国と歴史を弄ぶゲームに、いとも簡単に巻き込まれてしまうかもしれない。そうしてそのようなドラゴンの興味を引き寄せてしまった人々はしばしば、甚大な損害を受けるのだ。

3. 善のドラゴンでさえ恐ろしい敵になりうる。
 この世界の善にその身を捧げている強力なメタリック・ドラゴンでさえ、英雄キャラクターに脅威を与えうる。善のドラゴンはなんらかの場所やアーティファクトを守るために、太古の誓いを果たすために、もしくは強大な悪を阻むために、英雄のグループを滅ぼそうと考えるかもしれない。彼らは長命であり、自惚れと思い上がりに満ち溢れているため、ドラゴンは下級クリーチャーにとって厳しい選択を行なったり、多数の幸福のために少数を犠牲にしたりしても、ほとんど気にしない。ドラゴン族が真に同情するのは極めて稀なことなのだ。


生理学

 親戚であるクロマティック・ドラゴンと同様に、メタリック・ドラゴンもそのたくましい爬虫類の体内に元素魔法を包含している。あらゆる種類のドラゴンは、その心臓と血液を流れる元素エネルギーに直接関連するブレス攻撃を使用する。元素エネルギーはまた、彼らの魔法能力の源にもなっている。
 メタリック・ドラゴンはクロマティック・ドラゴンと同様の年齢段階を歩む。何千年にも及ぶ生涯を通して、あらゆる点において強くなっていくのだ。


ドラゴンの鱗
 クロマティック・ドラゴンが革のように堅牢な鱗を用いて攻撃を撃退しているのに対して、メタリック・ドラゴンの鱗の一部は金属でできている。互いに重なり合う大きな板状の鱗がドラゴンの背中と頭を覆っている。四肢へ行くに従ってより小さく、より柔軟になる。ドラゴンの腹部では比較的柔らかくて滑らかな鱗が重なり合わずに並んでいる。いずれの鱗にもそのドラゴンにとって本質的な金属が吹き込まれている。たとえば、ゴールド・ドラゴンの鱗には比較的耐久性が高い形態の金が吹き込まれている。ブロンズ・ドラゴンの鱗には銅と錫の合金が含まれている。メタリック・ドラゴンの鱗は本質的に魔法的だ。心臓や血液と同じくらい、そのドラゴンが有する元素の性質にとって本質的なのである。
 メタリック・ドラゴンの鱗はおおむね無機質だが、ドラゴンのからだは強力な酵素を分泌しており、それらの酵素が含有金属と活発に結びつき、血液全体に拡散させている。これらの酵素は鱗を柔軟に保つのみならず、それぞれの鱗の生体部分に栄養を与えているため、ドラゴンの生涯を通して、生体でない部分も厚くなったり生え変わったりしている。傷害や生え変わりなどで鱗が剥がれた場合、酵素が揮発するに従って、剥がれた鱗はいよいよ無機質になり、含有金属が凝固する。この作用により、純粋に無機質の金属からなる細かい脈が点在した、生命を失った脆い鱗が出来上がる。剥がれ落ちた大きな鱗を適切に融解すれば、微量の純金属を取り出すことができる。しかしながら、死んだドラゴンの鱗から純粋な金属を分離するのはとても時間がかかるし、極めて退屈な仕事であるため、事実上メタリック・ドラゴンの皮の価値はクロマティック・ドラゴンの皮の価値と大差ない。
 防具を作成するためにメタリック・ドラゴンの鱗を採取した場合、最初から鋼鉄より硬いため有用だが、柔軟性は失ってしまう。残留金属の強度はドラゴンの鱗が本来有する強度より弱い。従ってドラゴンの皮から作成した防具の性能が、メタリック・ドラゴンの鱗によって大いに強化されるということはない(例外:アダマンティンの鱗)。
 通常の食べ物に加えて、メタリック・ドラゴンは自身の種類に該当する金属の物体をたまに食べることに気付いた賢者がたくさんいる。たとえばスチール・ドラゴンは魔法でないソードを食べて(ある程度慎重に)、その成分を代謝させることができる。メタリック・ドラゴンは金属を食べなければならないなどということはまったくないが、金属を食べることにより、失った鱗の再生速度を早めることはできる。


内部構造
 外部構造の大部分と同様に、クロマティック・ドラゴンとメタリック・ドラゴンは同じ臓器を有しており、例外はほとんどない。ドラゴンを、無視することのできない元素の勢力足らしめているものは何かと言えば、まず第一に心臓が挙げられる。ドラゴンのからだのなかで最も強力な単一の筋肉だ。クロマティック・ドラゴンとメタリック・ドラゴンはいずれも同じ声域、物凄い肺活量、ファンダメンタム(血中の元素の力を集める独特の器官)、ブレス・ウェポンのエネルギーを集める上胃、消化用の破砕胃を有する。加えて、クロマティック・ドラゴンとメタリック・ドラゴンはいずれも大きな脳味噌を有している。この脳には追加の葉が1つあり、フライトフル・プレゼンス能力と本能による学習能力を制御している。
 クロマティック・ドラゴンとメタリック・ドラゴンの類似性は、筋肉と骨格にも当てはまる。要するに、猫科の動物のような姿だ。猫科に見えないのは、どう見ても爬虫類の首と尾だけである。ドラゴンの心臓は元素エネルギーを全身に供給している。これによって通常なら不可能な行動が可能になる。このエネルギーが恐怖を植え付け、疲労を防ぎ、膜状の翼での飛行を可能にする。心臓が送り出す元素の血液によって活気づけられるため、メタリック・ドラゴンは何時間も、あるいは何日も連続で空中に留まっても疲労しない。ドラゴンの骨は鳥の骨と同様に中空だが、とても強い。ドラゴンの胸筋はその体内で最も強い筋肉グループの一角を占めている。腱と靭帯は極めて強靭で柔軟だ。
 メタリック・ドラゴンの元素の心臓は天候、環境、高度と無関係に体温を一定に保っている。加えて、心拍のペースを落とすことによって冬眠することもできる。時には何百年も。体内を元素エネルギーが巡っているため、メタリック・ドラゴンはほとんどなんでも食べて消化吸収することができる。
 道徳的な衝動の起源を探して、クロマティック・ドラゴンとメタリック・ドラゴンの脳の構造の違いを一心不乱に研究した賢者がいた。具体的に言うと、善や悪への傾倒を制御している脳の部位を探していたのである。しかしながら、真実は落胆に値するものだ。要するに、そのような道徳中枢は存在しない。ドラゴンが善に傾くか、あるいは悪に傾くかは、その性格、運、経験によって決まる。人間やその他の定命の種族がそうであるように。だが一部の種類のドラゴンはその他のドラゴンよりも暴力的で、傲慢で、短気な傾向が強い。


ライフサイクル

 ドラゴンを真に理解するためには、何千年にも及ぶ生涯を想像しなければならない。長い至福の眠りの中でエインシャント・メタリック・ドラゴンが夢想に耽っている間に諸帝国が覇権をつかみ、繁栄し、衰退し、遺跡と化す。さまざまな点において、ドラゴンは時の流れがほとんど意味を持たないクリーチャーだ。大部分の者は不滅の存在ではないが、現在生存している最も長命なドラゴンは太古の諸帝国の興亡を実際に目にしたのである。
 あらゆる種類のドラゴンが数千年生きる可能性を秘めているが、全ドラゴン族のなかで最も長命なのはメタリック・ドラゴンだ。しばしばクロマティック・ドラゴンの1.5倍くらい生きる(もちろん、暴力によって死亡しなければの話だが)。この差異の理由に関する推測は多岐に渡るが、年齢を重ねるに従って、メタリック・ドラゴンの鱗、血液、臓器、肉に吹き込まれている金属成分がドラゴンの生来の元素の力を集めることにより、老衰に抵抗する一助となっていると大部分の賢者は信じている。比較的卑しい種類のメタリック・ドラゴン(ブラス・ドラゴンやスチール・ドラゴンなど)はしばしば2,500〜3,000歳に到達する。より高貴でより強力なメタリック・ドラゴン(シルヴァー、ゴールド、ミスラル)はその期間の2〜3倍を生きることができる。
 クロマティック・ドラゴンと同様に、メタリック・ドラゴンも6つの年齢段階を経る。ワームリング、ヤング、アダルト、エルダー、エインシャント、トワイライトの6つだ。メタリック・ドラゴンはクロマティック・ドラゴンと同じくらいの期間でアダルトに達するが、それ以降はもっとゆっくり成長するため、エルダーやエインシャントに到達するのはクロマティックより遅い(そして当然、クロマティック・ドラゴンがトワイライトに到達した後も長きに渡って、メタリック・ドラゴンはエインシャント段階を維持する)。



 ドラゴンが番う場合、それによって卵を生むかどうかを決定するのは女性だ。現状(住処のサイズや位置、番い候補の相手たちなど)に満足していない女性が卵を生むことは滅多にない。
 卵を生む段になると、クロマティック・ドラゴンとメタリック・ドラゴンは多少似て来る。但しまだ孵化していない卵を守るという点に関しては、メタリック・ドラゴンの方が良く守る。女性のドラゴンは1〜5個の卵を生む。正確な数はドラゴンの種類によって決まる。卵を生む頻度は、クロマティック・ドラゴンよりメタリック・ドラゴンの方が少ない。なぜなら、メタリック・ドラゴンの卵の孵化期間はかなり長いから。女性のメタリック・ドラゴンは卵をその体内に18〜24ヶ月保持する。典型的な卵は2〜5年で孵化する。
 卵の形状とサイズはクロマティック・ドラゴンのそれに似ている。卵の色は両親の鱗の色に似ている。卵は両親のブレス・ウェポンが与えるダメージに対して高い抵抗を有しているが、孵化の準備が調うと弱くなる。


ワームリング
 卵から孵化したワームリングは肉食獣だ。その精神には本能的な知識が刷り込まれている。祖先の知識を自動的に有して生まれるわけではないが、卵の中にいる間に両親が自身に言ったことの大半を理解した。そのため孵化したドラゴンの大部分は家族のつながりを理解しており、宝の山、狩り、住処、縄張りに関する基礎的な知識を有している。
 ワームリングは生まれた時から当たり前のように卓越しているが、それだけではない。彼らは自身のこの上ない存在がこの世界の階層社会にどのように適合するかを理解して孵化する。彼らは時間を無駄にせずに四肢を使用し、通常は、生まれた日の半ばには飛行できるようになる。そしてその日が終わる頃にはしきりに狩りをしたがっている。もっとはっきり言えば、孵化したメタリック・ワームリングが足を止める理由などほとんどない。彼らは高度に早熟なクリーチャーなのである。
 ワームリングは数年に渡って両親もしくは片親とともに暮らすが、最初から独立心旺盛であり、より大胆により大きく成長するに従って、両親の縄張りの外を探検するようになる。彼らは自身の家系に属する他のドラゴンを探し出して関係を築こうとするが、アダマンティン・ドラゴンやコバルト・ドラゴンなどのようにことさら縄張り意識が強い一部のメタリック・ドラゴンは迷い込んで来たワームリングをほとんど容認しない。同様に、ワームリングが人型クリーチャーに接近するのもそう珍しい話ではない。仲間が欲しいから、もしくは好奇心や何らかのお節介な衝動によって、引き寄せられるのだ。
 メタリック・ドラゴン・ワームリングは、親による保護がない状況で自力で孵化したとしても、容易に単独で生き残ってアダルトになることができるが、その際にはそのワームリングが受け継いだ本能と身のこなしをとても当てにする。小さいワームリングでさえ、そのサイズと力は大きなクーガーにおおむね匹敵する。しかしながらその本能により、孤児のメタリック・ワームリングは親に似た誰か(もしいれば)にその注意を集中する。たとえ異なる種類のドラゴンや下級クリーチャーに育てられたとしても、ワームリングの本能は強いため、同族に対して忠実であり続ける。たとえ、通常なら道を踏み誤らせるような教えを受けたとしても。


ヤング
 巣立ったヤング・クロマティック・ドラゴンは生き延びるために、自身の存在に対して敵対的な世界と直ちに戦わねばならないが、ヤング・メタリック・ドラゴンは慎重に一歩ずつ親離れすることができるし、どうやって巣立つかについてより正確に判断することができる。メタリック・ワームリングがヤング・ドラゴンになると、自分の住処を見つけたがるようになる。そのドラゴンの心は自分の家を手に入れたい、宝の山を築いてその上で眠りたいという根源的な欲求にがっちりとつかまれている。今やそのドラゴンは大きな馬くらいのサイズの強力な捕食者になっており、その牙と爪は他者に死をもたらし、その翼を使えば何時間も連続で飛行できる。ヤング・ドラゴンが両親の住処から旅立ったなら、招かれない限り戻ることはできない。そして招かれることなどほとんど有り得ない。
 ワームリングにとっては幸運なことに、独立心旺盛なクリーチャーとして過ごした日々は決して無駄ではなかった。一般に、両親の住処から旅立とうとしているヤング・メタリック・ドラゴンは、自分の縄張りをどこに作れば良いかを正確に知っているし、それに必要な偵察はワームリング時代に既に完了している。加えて、この住処は一時的な住居ではない。ドラゴンの長い生涯が終わるまで自身の必要を満たし続けることができることを確実にするために、ワームリングは自身の興味を引いた土地を慎重に研究する。言うまでもないが、ヤング・ドラゴンは豊かで、獲物に満ちており、他のドラゴンが(もとい、少なくとも自身より大きくて強いドラゴンは)領有を主張していない縄張りを見つけようと懸命に試みる。


価値観と心理学

 人型クリーチャーの特徴をドラゴンに当てはめて考えるのは愚者だけだ。人々が口にする道徳的な教訓は、ドラゴンには分別があるという誤った前提に基づいている。大部分のドラゴンは自身が望む通りに振る舞う。それは情け深い行動かもしれないし無慈悲な行動かもしれないが、属性に基づくものではなく、自身の目標に結び付いたより大きな目的に適うような行動をとる。属性は、ドラゴンの振る舞いを定量化して安心を得るために、人型クリーチャーがドラゴンに与えたものだと言ってもあながち間違いではない。


ドラゴンによる支配

 クロマティック・ドラゴンやカタストロフィック・ドラゴンと異なり、メタリック・ドラゴンが人間を食べたり、人間の領域で暴れ回ったりすることは滅多にない。彼らは略奪や破壊の本能に突き動かされているわけではない。そうではなく、メタリック・ドラゴンは下級クリーチャーを支配したいというドラゴンの欲求を体現している。レッド・ワームは人間の王国を、略奪したり捕食したりすべき豊かな源と考えるかもしれないが、ゴールド・ワームは自分を満足させるために命令を下すべきものとみなす。もしそのゴールド・ドラゴンがことさら慈悲深いなら、その領域の頑強な味方、忠実な防衛者、賢明な助言者になるだろう。別のゴールド・ドラゴンはその領域を公然と統治しようと考えるかもしれない。また別のゴールド・ドラゴンは頑固な専制君主にして最悪の種類の抑圧者になるかもしれない。
 下級の種族を支配したいと考えないメタリック・ドラゴンでさえ、しばしば別の方法で彼らと関り合う。善や悪のために戦う者もいる。いにしえの魔法や太古の大義に夢中になっている者もいる。何世紀にも及ぶ大規模なゲームに参加して水面下で操作している者もいる。他のいかなるドラゴンにもまして、メタリック・ドラゴンは人間の物事に興味を抱いており、首を突っ込んで来る。


衝動

 基礎的な欲求という意味では、変身できる者を除けば、大部分のメタリック・ドラゴンと人型クリーチャーの間に共通点はほとんどない。最終的に、クロマティック・ドラゴンとメタリック・ドラゴンは共通の動機を有するようになる。なかでも特に、狩りをする時には。獲物が逃走すれば、ドラゴンはそのクリーチャーを追跡して捕らえたいと感じる。とはいえ知的クリーチャーを追跡する時は慎重に行なう。長距離を旅するスタミナと機動性があるため、メタリック・ドラゴンは逃走する敵を無限に追跡することができる。ドラゴンが停止するのは食べ物を捕まえて食べた時だけだ。なぜなら、空腹のまま家に帰る理由など何一つ存在しないから。
 平静時はどれほど理性的であろうとも、クロマティック・ドラゴンを目にしたメタリック・ドラゴンは万難を排してそれを攻撃し、殺害する。自身の安全はほとんど顧みず、手を止めるのは失敗(自身の死ではなく、失敗)が火を見るより明らかである場合に限られる。この衝動はあまりにも強いため、自身の生命を犠牲にすればクロマティック・ドラゴンの群れを殺害することができるとメタリック・ドラゴンが判断したなら、そうする。この戦闘衝動のおかげで、メタリック・ドラゴンは通常なら対処できないような相手にも日常的に挑戦する羽目になっている。すべての年齢段階のドラゴンがこの衝動を感じているが、ヤング・メタリック・ドラゴンとアダルト・メタリック・ドラゴンにおいて最も顕著だ。クロマティック・ドラゴンもメタリック・ドラゴンに対して同様に感じているが、彼らは元々、自身の存在に敵対的な世界の中で生き残るために戦っている。ただそれだけの理由により、クロマティック・ドラゴンはメタリック・ドラゴンより慎重に戦闘を仕掛ける。


宝の山

 あらゆる種類のドラゴンは、自身の宝の山(きらきら光る貨幣、宝石、魔法のアイテムが山積みになり、滝のように流れ落ちている)こそが存在の中核であると考えている。宝の山は、彼らが狩りをする理由だ。彼らが眠るベッドだ。彼らの自尊心の源だ。ドラゴンが莫大な富の獲得に飽きることは絶対にない。たとえ何千年経とうとも。この欲求は、疑いようもなく、彼らの生涯において真に最も重要な動機である。富を集めたいという生来の傾向に抵抗しているドラゴンでさえ、心の奥底をかきむしる本能を感じることができる。あたかも自身に正当な所有権がある財宝をどういうわけか逃しつつあるかのように。
 宝の山を作りたいという誘惑に常に晒されているにもかかわらず、メタリック・ドラゴンは富への渇望によって焼き尽くされてはいない、有意義な生活を楽しむことができる。自身の性質を否定しても無意味だ。なかでも特に、自分自身に対して否定するのは。それならば、自身の弱点を内省的に認識する方が良い。それが操作の道具になるのを避けるためにも。ワームリングは財宝との心理学的な結び付きを発達させる。そしてドラゴンがそのような結び付きから完全に解放されることは絶対にない。自身が生まれ育った住処を離れるということは、親許を離れるという意味よりも、自身が遊んだ宝の山を離れるという意味の方が大きい。なにしろ貨幣1枚と言えども、持って出ることはできないのだから。ワームリングが旅立ちの時を迎えると、両親の物凄い宝の山がある状態から、宝の山がまったくない状態に移行する。この事実は、なぜヤング・メタリック・ドラゴンは家を出た瞬間から死に物狂いで富を集め始めるのかを説明するのに大変役立つ。


振る舞い

 メタリック・ドラゴンは実にさまざまな気質を見せる。たとえば激しい縄張り意識、捕食者的な好奇心、人型クリーチャーが示す異様な行動に対する素朴な困惑など。大部分のメタリック・ドラゴンは自身の観察眼と論理的な思考力を大変鼻にかけている。彼らは自分のことを冷静で理性的とみなしているが、なかには彼らの対極に位置するレッド・ドラゴンと同じくらい短気で怒りっぽい者もいる。


常に恩着せがましい態度を取る

 すべてのドラゴンは極めて高尚な自説を有している。彼らがかたじけなくも弱いクリーチャーと会話して下さる場合、自分はなんて寛容なんだろうとドラゴンは考える。そして彼らが会った者たちは自分の注意を引くことができたことを嬉しく思うに違いないと期待する。ドラゴンと会話した人型クリーチャーはその名誉に対して深甚なる感謝の意を示すのが良い。メタリック・ドラゴンは自身に対する賞賛が単に歌われるのみならず、大音声で触れ回って欲しいと考えている。彼らが追認を必要としているのは、自信がないからではなく、箔をつけたいからだ。メタリック・ドラゴンが人間を支配したり捕食したりするのを控える場合、自身の真の本能に反する選択を意図的に行なう。そのため、狩ったり日常的に食べたりしないという贈り物と引き替えに、人型クリーチャーはメタリック・ドラゴンを褒め称えるべきであると、彼らは信じている。一部のドラゴンは他でもない完全な崇拝を期待している。
 クロマティック・ドラゴンとメタリック・ドラゴンの思考法に大差はない。すべてのドラゴンは最高に尊大で、とてつもなく自己中心的で、下級クリーチャーを見る場合、どんな使い道があるかという視点から見る傾向が強い。自身の計画に役立つということ以外に、人型クリーチャーが存在する理由があるなどとは、ドラゴンは思いもしない。人型クリーチャーの生涯は短く、取るに足りず、導きを必要としている。そして彼らは寛大だから、その導きを与えてあげることができる。クロマティック・ドラゴンの場合、この態度は彼らが次のようにみなしていることを意味している。すなわち、人間やその他の人型クリーチャーは食べ物、財宝、娯楽を提供してくれるもので、気の向くままに無慈悲に利用するものである。これに対して大部分のメタリック・ドラゴンは人型クリーチャーを貴重な資源とみなしており、自身が適切と考えている目標に到達するために何世紀もかけて慎重に世話をする。最も稀で最も親切なメタリック・ドラゴンは、人型クリーチャーが価値ある領域を建設して繁栄するのを支援する義務があると感じている。
 なぜドラゴンは自身を、自身以外のほとんどすべての種類のクリーチャーより上に位置付けるのかを想像するのはそれほど難しくないが(彼らの物理的なサイズと元素の力を考えればそれだけで十分だろう)、人型クリーチャーを無視するのではなく育てるというメタリック・ドラゴンの傾向の理由を突き止めるのは難しい。宗教的な答えはその理由としてバハムートを指している。なぜなら“プラティナム・ドラゴン”はイオの中にあった利他的な、慈悲深い、論理的な、そして忍耐強いすべてのものを体現しているから。しかしながら世俗的な答えはこうだ。すなわち大部分のメタリック・ドラゴンは最高に理性的なクリーチャーであり、残忍さや無慈悲さは不合理だとみなしている。従って彼らは人型クリーチャーの隣人たちを冷徹な論理で見ており、その論理は、人型クリーチャーのような資源は慎重に使用するのが最も望ましいと命じている。権限を与えられた人型クリーチャーは生産的な人型クリーチャーであると信じるようになったドラゴンもいる。人型クリーチャーの権限が本物だろうと想像上のものだろうと、手当たり次第に身ぐるみ剥がされたり食われたりしなければ、より高い成果を上げることができる。それでもなお、真に善のドラゴンが下級クリーチャーを操作したり犠牲にしたりすることがあるかもしれないが、少なくとも彼らがそうするのは、彼らの導きによってこの世界がより良い場所になるというしっかりとした確信に基づく場合に限られる。
 メタリック・ドラゴンが下級クリーチャーに対する生来の傲慢さを抑制するために何らかの努力を行なうのは、人型クリーチャーの社会に侵入するために人型形態になっている時だけだ。このケースを“つらい体験”と形容するのは控え目な表現かもしれない。烏合の衆の中に溶け込むために、メタリック・ドラゴンは常に口を慎み続けなければならない。これは訓練を必要とするものであり、滑らかに形態変化できるくらいにマスターするには何世紀もかかることがある。


気性

 メタリック・ドラゴンが人型クリーチャーと平和裡に関り合うのは、それが自身の望みを達成する有効な手段である場合に限られる。メタリック・ドラゴンのプライドを傷つけてみよう。ドラゴンが申し出た支援を一笑に付してみよう。ドラゴンの忍耐力を極限まで試してみよう。メタリック・ドラゴンはいかなるクロマティック・ドラゴンにも負けないほど、あらゆる点において破壊的な力を発揮することができる。
 メタリック・ドラゴンを怒らせるのは簡単だ。もしかしたら然るべき承認を得ずに、そのドラゴンの縄張りにあまりにもたくさんの侵入がなされたのかもしれない。あるいは、そのドラゴンの領域内に共存している人型クリーチャーの貢ぎ物が一貫して少なすぎたのかもしれない。いずれにせよ、ドラゴンの気に障る一連の行為が積み上がって一線を越えると、メタリック・ドラゴンは激怒する。たとえその行為が人型クリーチャーの標準から見れば理に適ったものであったとしても、ドラゴンの反応はその行為にまったく釣り合わないものに見えるかもしれない。たとえば、密猟者がさすらいのワームリングを殺害した場合、その親であるメタリック・ドラゴンは最寄りの村を滅ぼすかもしれない。なぜなら、そこの住民がもっときちんと密猟者を取り締まっていれば、こんな事態は起きなかったかもしれないから。


社会

 個々のメタリック・ドラゴンはお互い同士で偶然、平和裡に、もしくは暴力的に遭遇するかもしれないが、ドラゴンの社会とは、家族関係が緩やかに集まったものに他ならない。メタリック・ドラゴンは自分の野心を満たし、自分の目的のために頑張る。社会の中に彼らが存在しているのではない。彼らの周囲に社会が形成されるのだ。共通の敵と戦うためにさまざまな種類のメタリック・ドラゴンが結束した伝説的な出来事を除けば、これまでに彼らが形成した、原始的な社会に最も近いものは、子供や同族に対する彼らの献身的な愛情で表される。これらの持続的な結び付きは最も縄張り意識が強いメタリック・ドラゴンすらも緩やかに繋いで来た。
 以下の4つのセクションには、他の種類のドラゴンやなんらかの種類の人型クリーチャーと関り合う際に、メタリック・ドラゴンはどのように考え振る舞うかが概説されている。


他のメタリック・ドラゴン

 メタリック・ドラゴン同士が敵対する場合、戦いの準備を調えたまま緊張を維持する。その対決が縄張りを巡るものであろうと、財宝を巡るものであろうと、番いを巡るものであろうと、一般的なメタリック・ドラゴンは、自身より強力なワームには従い(もしくは逃走し)、自分より弱い敵には服従を要求する(もしくは殺害を試みる)。悪のドラゴンや気が短いドラゴンは、自分が有利であればすぐに攻撃したがる。お互いがお互いを自分と同じくらい強いと認識した2体のドラゴンはしばしば冷静に慎重に礼儀正しく振る舞い、裏切りの印や間違いを注意深く監視する。しかしながら、メタリック・ドラゴン同士の間で血が流れたなら、もう言葉は使わない。いずれにせよ、ドラゴンは妥協しない。敵より有利なドラゴンはすべての取り分を要求する。それが何であれ。不利なドラゴンは手ぶらで撤退する。
 メタリック・ドラゴン同士の交渉は次のようなパターンを形成する。まず最初に、2体のドラゴンはお互いのサイズからその年齢段階を即座に評価する。なぜなら年長者の方が偉いから。次に知恵比べを行なう。ここでドラゴンたちは、彼らが争っている対象に関して何を知っているかを比較する。知恵比べに勝ったドラゴンの年齢段階評価が1段階上がる。この“有効年齢段階” が最も高いメタリック・ドラゴンが正当な勝者とみなされる。この結果を尊重して勝ったワームにおとなしく従うドラゴンはたくさんいるが、儀式的な戦闘による試合を相手に申し込むことによって賭け金を一段階上げるドラゴンもいる。通常はブラス、アイアン、マーキュリー、もしくはコバルト・ドラゴンだ。この試合の結果はすべての交渉に優先する。そのような戦闘が死に至る場合もあることが一般に知られているが、通常は最初の流血をもって終了する。


クロマティック・ドラゴン

 メタリック・ドラゴンがクロマティック・ドラゴンを視認すると、その理性的な人格が消滅する。例外はほとんどいない。メタリック・ドラゴンはクロマティック・ドラゴンを目にするや攻撃する。その結果がどうなるかは顧みない。クロマティック・ドラゴンが強すぎて、メタリック・ドラゴン1体では対処できない場合、直ちに仲間を探し出し、数を増やして戻って来て、その脅威に襲いかかる。
 戦闘が始まると、メタリック・ドラゴンは獰猛に戦い、はらわたを引きずり出し、目玉をえぐりだし、膝腱を切る。彼らはクロマティック・ドラゴンを虐殺する。男性だろうと、女性だろうと、ワームリングだろうと、一切区別せずに。虐殺が終わると、メタリック・ドラゴンは通常の人格に戻る。あたかも、おかしなことなど何一つ起きなかったかのように。そのからだは血に塗れているにもかかわらず。かつて、その凄まじい激怒について尋ねられた、とあるシルヴァー・ドラゴンは「奴らの数が臨界に達するのを許すわけにはゆかぬ」と答えた。その殺害衝動にもかかわらず、大部分のメタリック・ドラゴンはクロマティック・ドラゴンに対して十字軍を行なわない。彼らは単に、目の前に現れたクロマティック・ワームを処理するだけなのだ。
 これら2つのグループのドラゴン間の協力、さらには禁じられた愛にまつわる物語を、メタリック・ドラゴンは作り話とみなしている。それにもかかわらず、信頼に値する歴史的な記録によれば、次のような出来事が過去に起きたことが立証されている。すなわち、エインシャント・メタリック・ドラゴンとトワイライト・メタリック・ドラゴンがクロマティック・ドラゴンを脅し、もしくは操作して自分たちのために仕事をさせた。やがてそれらのクロマティック・ドラゴンは同族を裏切り、その結果としてさらにたくさんのクロマティック・ドラゴンが死亡した。


社会における役割

 メタリック・ドラゴンが人型クリーチャーと関り合う場合、さまざまな種類の役割を演じることができる。親切な役だろうと、専制的な役だろうと。


門番

 メタリック・ドラゴンは危険な、もしくは往来が盛んな人型クリーチャーのルート沿いにある縄張りの領有を時々主張する。そのような縄張りを確立したドラゴンは、その地域を通過したいと考えている人型クリーチャーに貢ぎ物を要求する。通行料を支払わない場合、ドラゴンは自身の領域内の移動を阻む。その地域が危険な場合、貢ぎ物を支払えば、そのドラゴンはその敵対的な地域を通過する旅行者を確実に守ってくれる。門番ドラゴンは経済の主要な構成要素になりうる。さらにもう一つの税や通行料とみなされるのだ。


宗教

 どんな種類であれ、神を崇拝しているドラゴンは嫌々ながらそうしているにすぎない。そして実際にそうしているドラゴンの精神は、敬虔な人型クリーチャーのそれとは大きくかけ離れている。神の前に頭を垂れる代わりに、彼らは取り引きを行なう。神的存在は強力な味方であり、真似するに値する模範であるとみなしているのだ。ドラゴンは宗教的な儀式にほとんど我慢がならない。自身の振る舞いを制限されるのもまた然り。彼らがそのような制限を容認するのは、神的知識や正義の力を追求するのに役立つ場合に限られる。


ティアマト

 ティアマトの道を辿るなら、メタリック・ドラゴンは致命的なまでに自身の道を踏み外さねばならないだろう。だがまさにそれを行なった者はたくさんいる。ティアマトはメタリック・ドラゴンの対極にあるすべてを体現している。なかでも特に、目にしたクロマティック・ドラゴンを攻撃して殺害するという捕食者的な衝動の対極にあるすべてを。それでも、十分な自己嫌悪を伴って、メタリック・ドラゴンは自発的にティアマトの奴隷になることができる。ティアマトは元々厳格な神だが、自身を崇めるクロマティック・ドラゴンに要求するものよりもさらにたくさんのものを、自身に改宗したメタリック・ドラゴンに要求する。彼らの忠誠心を証明するものを彼女は常に要求している。通常は自身の同族に歯向かうよう彼らに命じることによって。富のありかを見つけたメタリック・ドラゴンは、家族の絆や永続する友情がどうなろうとも、ティアマトの名において略奪しなければならない。それと引き替えに、報復を求めるであろう者たちに勝利するための力を彼女は約束する。そしてより弱い敵には速やかな死を与える力を。
 典型的な信者:アイアン・ドラゴン。ことさら強欲な、もしくは嫉妬深いアダマンティン・ドラゴンとカッパー・ドラゴン。


バハムート

 イオの公正さ、気高さ、強さを体現している天上界のプラティナム・ドラゴンであるバハムートは、メタリック・ドラゴン崇拝の基礎を象徴している。すべてのメタリック・ドラゴンが、その教義に関係なく、あまねく彼を敬っている。たとえ他をすべて剥ぎ取ったとしても、バハムートは少なくとも、ティアマトを駆逐したワームである。ティアマトは恐れを成して逃げ出したのだ。クロマティック・ドラゴンと戦うメタリック・ドラゴンは彼の最初の戦いからインスピレーションを引き出している。彼の信者がこの世界で行動する時、彼らはバハムートの威厳をもってそうする。彼らが下級クリーチャーに正義を垂れる時、バハムートが自身の立場にいたら何をするだろうかと尋ねる。弱者に敵対する者たちに対して彼らが戦闘で突撃する時、バハムートは自分たちの攻撃を鼓舞していると彼らは確信している。
 典型的な信者:ブロンズ・ドラゴンとシルヴァー・ドラゴン。ほとんどすべてのメタリック・ドラゴンが、クロマティック・ドラゴンとの戦いに突入する際に、力を求めてバハムートの名前を呼ぶ。


メタリック・ドラゴンの詳細

 この章の、ここより前に書かれている文章は、おおむねすべてのメタリック・ドラゴンに当てはまる。ここから後ろではそれぞれの種類を個別に議論する。すなわち彼らの性格、癖、環境、あるいは狩りや戦闘において好む手段などに関する、さらなる洞察だ。それらは例外なき断定ではない。それぞれの種類のメタリック・ドラゴンは特定の種類の財宝や環境を好むかもしれないが、以下に記述する例に限定されるわけではない。
 “主要な” メタリック・ドラゴンに加えて、本書では7つの新しい種類が登場する。以前の本では別の名前で登場したものもある。最近発見されたものもある。いずれにせよ、それらすべての種類は、有名なゴールド・ドラゴンやシルヴァー・ドラゴンに勝るとも劣らず、メタリック・ドラゴン族の一部なのだ。



アイアン・ドラゴン

 粗暴で気が短いアイアン・ドラゴンは疑いようもなく、最も残忍で狂暴なメタリック・ドラゴンだ。アイアン・ドラゴンのなかには悪属性の者がたくさんいる。そうでない者についても大部分の者は、最善でも、無属性のなかでもことさら空腹で危険な種類だ。


身体的特徴

 アイアン・ドラゴンの鱗はきめが粗く、重く、濃い灰色で、金属質だ。シルヴァー・ドラゴンやミスラル・ドラゴンと間違われるかもしれないが、他のメタリック・ドラゴンの色合いはもっとずっと鮮やかな傾向がある。そして彼らの鱗はより小さくてよりきめ細かい。アイアン・ドラゴンが年齢を重ねるに従って、錆のような茶色の縞ができる。なかでも特に、主要な関節や翼のそばにある鱗に。


食生活

 アイアン・ドラゴンは中くらいのサイズの獲物を食べる。たとえば猪、鹿、羚羊など。大部分の者は人型クリーチャーも獲物とみなしており、小さくて比較的弱いクリーチャーを好んでいる。たとえばゴブリン、コボルド、ノーム、ハーフリングなど。天性の待ち伏せ型の肉食獣である彼らは、美味しそうな目標が不意打ちの射程内に迷い込むまで、道沿いにある古い遺跡や深い藪の中に隠れて待つ。善属性のアイアン・ドラゴンは知的クリーチャーを食べないが(但したまにゴブリンは食べる)、悪のアイアン・ドラゴンは知性ある獲物を高く評価しており、人型クリーチャーの定住地、交通量の多い道路、その他の良い狩り場を探して、しばしば故郷の森を遥か遠く離れて放浪する。



アダマンティン・ドラゴン

 ケイヴ・ドラゴン(洞窟竜)、そしてたまにアンダーダーク・ドラゴンとも呼ばれているアダマンティン・ドラゴンは、地上世界ではほとんど知られていない。最も知力が高いドラゴンというわけではないが、アダマンティン・ドラゴンは、粗野で気が短そうな振る舞いとは裏腹に、とても賢い。


身体的特徴

 アダマンティン・ドラゴンの色合いは黒っぽい金属質だ。本物のブラック・ドラゴンを一度も見たことがない地下住民のなかにはアダマンティン・ドラゴンをその名前で呼ぶ者もいる。彼らの鱗は剣状に突き出ている。狩りをする時、もしくは苛々した時、それらの鱗が羽根のように波打つ。アダマンティン・ドラゴンには角がない。後頭部から始まって全身を走り、尾で終わる一連の突起を角と言い張るのでない限り。鼻面は他のドラゴンのそれよりも滑らかで、なんとなく噛みつき亀のそれに似ている。奇妙なことに、アダマンティン・ドラゴンは金属臭がするのみならず、なんとなく油っぽい匂いもする。きちんと手入れされている刃物や鎧のように。


食生活

 アダマンティン・ドラゴンは比較的小さい獲物をたくさん食べるのを好んでいる。長年に渡って地下に住んで来たために発達した嗜好だ。なにしろ地下では、比較的大きい獲物は手に入らないことがしばしばあるから。彼らは巨大な蜘蛛や昆虫の味をことさら好んでいるが、その存在に気付くくらい大きいものなら何でも食べる。自我がある獲物を狩る習性はないが、大部分の者は、それが手に入ったなら、わざわざ解放したりしない。アダマンティン・ドラゴンは自身の“臣民”は一切食べない。残された唯一の選択肢が餓死、という状況でない限り。
 彼らの身体能力と好む地形を鑑みれば驚くにはあたらないが、アダマンティン・ドラゴンが地上で戦闘して狩りをする場合、まず飛行で獲物に近づき、次に着陸し、その戦闘が終わるまで地上に留まるのを好んでいる。それはそれとして、アダマンティン・ドラゴンは自身の縄張り内の地形を熟知しているため、敵を負傷させるために、もしくは敵の移動を妨げるために設置した障害物を飛び越えるために短距離飛行を使用する。広い洞窟や山の峠でさえ、アダマンティン・ドラゴンは自身の縄張りを徒歩でパトロールするのを好んでいる。その地域のことをより詳しく知るためだ。



オーリアム・ドラゴン

 太古の諸帝国が使用していた真紅の金属からその名がつけられたオーリアム・ドラゴンもまた、遥かなる昔の神秘に取りつかれている。オーリアム・ドラゴンはジャングルの奥深くにある忘れ去られた要塞や寺院の崩れ行く遺跡の中に住んでいる。だがオーリアム・ドラゴンにとって、そのような遺跡はただの住処ではない。オーリアム・ドラゴンは自身が住んでいる遺跡を、最も貴重な所有物とみなしている。ただの貨幣や宝石以上のものからなる宝の山であると。オーリアム・ドラゴンにとって、太古の遺跡から神秘を手に入れようと頑張る生涯や、そのような遺跡にかつての栄光を取り戻そうと頑張る生涯は、良き生涯である。そしてオーリアム・ドラゴンの住処に不法侵入したいと考えているすべての者や、再建の努力を妨害しようと試みるすべての者に、悲哀をもたらす。
 なぜ過去の遺跡に取りつかれているのか? 他の種類のドラゴンよりも強く取りつかれているオーリアム・ドラゴンは、自身の血統に連なる祖先のドラゴンを凌ぎたいという強い衝動を感じている。そのような血統のなかには、太古の諸帝国に仕えることを誓っていたものがたくさんある(そしてオーリアム・ドラゴンの血統のメンバーのなかには、自ら王国を支配していた者すら僅かながら存在していた)。そのため、現在のオーリアム・ドラゴンは廃墟と化している自身の住処の再建を、考古学的な行為ではなく、自身の忠誠を示す行為とみなしている。


身体的特徴

 オーリアム・ドラゴンの外見は多少猫っぽい。からだはしなやかで、足は爬虫類の足というより猫の足に似ている。エルダー・オーリアム・ドラゴンとエインシャント・オーリアム・ドラゴンは物をつかむことができる長い尾を戦闘で追加武器として使用する。オーリアム・ドラゴンはその赤い金属質の鱗を過度に自慢しており、その時間の大半を身繕いに使用しているため、その鱗はジャングルの泥の中や廃墟の埃の中できらきら光っている。比較的年長のオーリアム・ドラゴンは時々、自身の比較的大きい鱗に翡翠の意匠を象眼する。これは装身具でもあり、刺青でもある。


食生活

 オーリアム・ドラゴンは有能な狩人であり真の雑食獣だが、自分で食べ物を集めるより太古の神秘を研究する方を好む。この世界で独り立ちできるくらい成長するやいなや、オーリアム・ドラゴンは他のクリーチャー(しばしば、その地域に土着の部族)を脅し、貢ぎ物として食べ物を持って来させる。この関係は速やかに共生関係になる。なぜならオーリアム・ドラゴンは、野生の獲物(そして、時には、捕獲したライバル部族の捕虜や不法侵入冒険者)を“捧げ物” として頻繁に持って来るのと引き替えに、その部族に保護を与えるから。



カッパー・ドラゴン

 カリスマ的で、狡猾で、才気煥発のカッパー・ドラゴンは明らかに最も賢く最も興味深いドラゴンだ―もとい、彼らはそう言っている。陰謀家にして盗賊であるカッパー・ドラゴンは憎めない悪党になる傾向がある。悪のカッパー・ドラゴンでさえ、ぺらぺらと良くしゃべり、皮肉なユーモアのセンスを派手に誇示している。


身体的特徴

 カッパー・ドラゴンは痩せていてしなやかだ。鱗に覆われた、後ろ向きの、目立つ角が2本ある。頬には畝がある。顎には襟状の皮膜がある。鱗は大きくて光沢がある帯か板だ。触感は滑らかである。目はきらめくトルコ石。カッパー・ドラゴンが年齢を重ねると、鱗が緑の色合いを帯びる。古い銅像が緑青を被るように。


食生活

 荒野では、カッパー・ドラゴンは小さい獲物や鶏を食べる。しかしながら彼らはしばしば、文明ある定住地の近くで暮らす。人間の食べ物が好きになるくらい近くで。なかでも特にワインが。最も残忍で最も卑劣なカッパー・ドラゴンでさえ、知性ある人型クリーチャーは食べない。なんと言っても、食われてしまった犠牲者はドラゴンの機知と美を賞賛できないのだから。



ゴールド・ドラゴン

 ドラゴンは元々、想像を絶するほど強力な種族だが、ロイヤル・ドラゴン(王の竜)またはインピアリアル・ドラゴン(皇帝の竜)とも呼ばれているゴールド・ドラゴンは、そのドラゴン族の頂点に位置している。すべてのメタリック・ドラゴンとクロマティック・ドラゴンのなかで、ゴールド・ドラゴンより強力かもしれないのはミスラル・ドラゴンだけだ。だがゴールド・ドラゴンと異なり、ミスラル・ドラゴンが定命の存在の出来事に公然と関与することは滅多にない。


身体的特徴

 生まれたばかりのゴールド・ドラゴンの色合いはつやがないが、年齢を重ねるに従って輝く金になり、やがて光を発するようになる。ゴールド・ドラゴンは最も優雅でしなやかなドラゴンの一角を占めている。その翼はほとんど扇形をしており、全身に渡っている。印象的な角があるが、武器としては役に立たない。顔には巻きひげが生えており、口や鼻の周囲に垂れ下がっている。それらは細い紐状の筋肉で、ほとんど鬚に見える。これらの巻きひげは力強くもなければ器用でもないが、口の回りや歯と歯の間にある食べ物を掃除するのに役立つくらいの把握力はある。
 ゴールド・ドラゴンはかすかな匂いを放っている。冒険者のなかには、融けた金属の匂いになぞらえる者もいる。いずれかの人型クリーチャーが実は変身したゴールド・ドラゴンであることを示す手掛かりは僅かしかないが、この香りはそのような僅かなものの1つであると彼らは言っている。


食生活

 ゴールド・ドラゴンは比較的大きな獲物を好んでおり、危険なモンスターを意図的に狩っている。その際、彼らはその生物学的な必要と倫理的な傾向を組み合わせている。適切な獲物が見つからない場合、他のドラゴンと比べて、ゴールド・ドラゴンは無生物で食い繋ぐのをより厭わない。その際には宝石と貴金属を好んでいる。それこそが自身の高い地位に相応しいから。



コバルト・ドラゴン

 気難しく、容赦なく、獰猛なコバルト・ドラゴンは成功の度合を、支配している縄張りと下級クリーチャーで量る。彼らは膝を折って自身の力を認めることなく自身の土地を通過するいかなる旅行者も容認しない。それを拒否するすべての者はその誤りを速やかに後悔することになる。大部分のコバルト・ドラゴンは野蛮な部族や人里離れた小規模な定住地を支配しており、爪、牙、冷気のブレス攻撃を用いて即時の服従を要求している。


身体的特徴

 コバルト・ドラゴンを識別する身体的特徴としては、濃い青の鱗、前方にカーブしている雄羊のような角、がっしりとした体格が挙げられる。翼膜は薄い青で、濃い青の斑点がある。足は大きい。鱗は菱形。


食生活

 コバルト・ドラゴンは大きい獲物を好んでいる。なかでも特に箆鹿とトナカイ。熊肉も好む。完全に成長した羆やダイア・ベアと若かりし頃に遭遇した時の傷跡があるコバルト・ドラゴンはたくさんいる。彼らは夜に狩りをするのを好んでいる。彼らの感覚は鋭いため、夜になると、昼行性で温血の獲物に対してとても有利になるのだ。彼らの飛行能力はさほど高くないため、空中から狩りを試みることは滅多にない。善属性のコバルト・ドラゴンは知的クリーチャーを食べないが、無属性と悪属性のコバルト・ドラゴンは食べる。なかでも特に、敵もしくは厄介者と認めた者を。



シルヴァー・ドラゴン

 シルヴァー・ドラゴンはドラゴン族に関する、名誉あるすべてのものを体現している。善のシルヴァー・ドラゴンはより弱いクリーチャーを守る。悪に転向したシルヴァー・ドラゴンは僅かしかいないが、そのような者も自身の名誉と評判を維持している。彼らは死に値しない敵は虐殺しないし、卑劣な悪意に基づく行為はなさない。


身体的特徴

 十分に成長したシルヴァー・ドラゴンの、首の目立つ襟状の皮膜、嘴に似た鼻先、顔面を覆う板状の鎧、そして後ろ向きに生えている長い角は、その光沢によって引き立てられている。遠くから見ると、極めて細かい鱗がお互いに溶け合っているように見えるため、シルヴァー・ドラゴンは彫像のように見える。
 シルヴァー・ドラゴンは雨と常緑針葉樹を連想させるような匂いを発している。その屈強な体格により、彼らは最強のドラゴン族の一角を占めている。


食生活

 生来視力が鋭いシルヴァー・ドラゴンはマウンテンゴートや鹿といったような野生の獲物を狩る。彼らは優雅に飛行するが、物凄い正確さと力で降下する。一般的なシルヴァー・ドラゴンは山腹の休息所からさっと舞い下りることによって獲物を仕留める。シルヴァー・ドラゴンはそのサイズから見ると食が細く、1ヶ月に3.4回しか獲物を食べない。彼らは知的クリーチャーを食べない。そのような振る舞いは野蛮だと思っているから。



スチール・ドラゴン

 社交的なスチール・ドラゴンは他のドラゴンと交流するよりも人型クリーチャーと交流する方を好んでいる。その理由は賞賛から強欲までさまざまだ。スチール・ドラゴンは本来の形態でいることよりも人型形態でいることの方が多い。


身体的特徴

 他のメタリック・ドラゴンに比べると、スチール・ドラゴンの体格はほっそりしており、頭部も小さい。頭部、肘、指には剣のような皮膜が生えている。翼は互いに重なり合う刃でできている。それらの刃は羽根に似ている。胸に生えている鱗は盾に似ている。スチール・ドラゴンが人型形態になった場合、ドラゴンの性質の一部を保持する。たとえば灰色の目、青白い肌、鋼色の髪、鋼鉄製の装身具など。


食生活

 スチール・ドラゴンはその周囲の環境に適合するために雑食性になった。人型形態になるのにまだ慣れていないヤング・スチール・ドラゴンは、ドラゴン形態よりも人型形態の方が、必要とする食べ物の量が少ないことに気付くのに多少時間がかかるかもしれない。そのようなドラゴンは通常の人型クリーチャーの2.3倍の量の食べ物を食べるかもしれない。その場合、その周囲にいる者たちはびっくりして嫌悪感を抱くかもしれない。



ブラス・ドラゴン

 その他の大半の種類のドラゴン族よりも弱いが、それでもブラス・ドラゴンはどのような基準に照らしても強力なクリーチャーだ。彼らは欲得ずくの性質が強く、たっぷりと払うのを厭わない者なら誰のためにでも、守護者や戦士として働くことにしばしば同意する。


身体的特徴

 ブラス・ドラゴンをその他の種類から際立たせているのは、鋤の刃のような形をした、一際目立つ鶏冠だ。ヤング・ブラス・ドラゴンの色合いはつやのない茶色の斑だが、年齢を重ねると、もっと真鍮っぽい色になっていくとともに、暖かさを感じさせるような光沢が出て来る。彼らは油を塗った熱い金属を連想させるような刺激臭をかすかに放っている。


食生活

 典型的なブラス・ドラゴンは空中から獲物を狩る。マウンテンゴート、羊、羚羊といったようなクリーチャーを食べるのを好んでいる。知的クリーチャーを食べるのを好んでいるのは最も悪のブラス・ドラゴンだけだが、一般的なブラス・ドラゴンでも旅行者の乗騎を失敬するのはやぶさかではない。その場合、その旅行者は徒歩で取り残されることになる。砂漠での生活に良く適応しているため、ブラス・ドラゴンは水がほとんどなくても生存できる。



ブロンズ・ドラゴン

 あまりにも高潔で義理堅いブロンズ・ドラゴンは秩序にその身を捧げており、その理想のために戦う闘士のなかで最も敬虔で最も高潔な者の一角を占めている。ブロンズ・ドラゴンにとって、この宇宙を法で治めることほど重要な仕事はない。そのような宇宙では、混沌や腐敗は足掛かりを一切得ることができない。大部分のブロンズ・ドラゴンにとっては、自身の土地で正義を執行すればそれで十分だ。だが少数の者にとっては、その道徳的な飢餓を満たすことができるのは絶対的な秩序だけである。たとえそれが、専制君主として行動しなければならないことを意味するとしても。なぜなら目的は手段を正当化するから。結果として、ブロンズ・ドラゴンは他の人々と争いになる。たとえ両者の価値観と信条がそれほどかけ離れていなくても。


身体的特徴

 ブロンズ・ドラゴンの頬と目から、畝と溝がついた鶏冠が後方に広がっている。畝の先端には湾曲した角がついている。ドラゴンの頭部の天辺から伸びている最大の突起物だ。指と指の間と四肢沿いに生えている水掻きは水泳に役立つ。ブロンズ・ドラゴンの鱗は金属質のこげ茶色だ。ハイライトがいくつかあり、それらの部分は磨き上げた青銅により似ている。


食生活

 ブロンズ・ドラゴンは食欲旺盛なため、食べ物をあまり選り好みできない。大部分の者は海産物を食べている。主として昆布、魚、甲殻類だ。彼らは鮫を好んでいる。しばしば地元の鮫が全滅し、周囲何リーグにも渡って生きている鮫がいなくなる。他のメタリック・ドラゴンと同様に、ブロンズ・ドラゴンも知的クリーチャーは食べないが、サフアグンを例外とする者はたくさんいる。サフアグンの肉は鮫の肉に似ているから。



マーキュリー・ドラゴン

 マーキュリー・ドラゴンは若干狂っている。だが彼らの狂気には間違いなく秩序がある。マーキュリー・ドラゴンは他の何よりも多様性を渇望している。別のクリーチャーが、狩るべき多様な食べ物と宝の山を集める機会を提供したなら、マーキュリー・ドラゴンは手っ取り早く協定を結んでそのクリーチャーのために働くだろう。かくして勇者、ボディガード、暗殺者として、より強大な勢力に雇用されたマーキュリー・ドラゴンを目にすることができる。


身体的特徴

 マーキュリー・ドラゴンの鱗は白っぽい銀色で、そのからだは蛇のように滑らかだ。マーキュリー・ドラゴンのからだは、他のドラゴンにはある筋肉の塊の一部を欠いている。鱗はより小さく、より密に生えている。マーキュリー・ドラゴンは比類なき変身生物だ。人型形態にもなれるし(文明ある人々のなかに溶け込むため)、不定形の液状形態にもなれる(防御のため、そして他者には入れない場所に入り込むため)。


食生活

 骨の髄まで肉食獣であるマーキュリー・ドラゴンは、今食べた物とは違う何かを常に渇望している。この衝動はただの本能ではない。延々と同じ食べ物を食べるのを余儀なくされたマーキュリー・ドラゴンは速やかに憂鬱になり、睡眠から目覚めるのが困難になる。マーキュリー・ドラゴンは熱心な狩人だ。獲物を捕まえるために手が込んだ罠を設計できるくらいには狡猾である。彼らは比較的弱い獲物を殺害して食べる前に弄ぶ。獲物から見れば、この振る舞いは残忍さに等しい。だがマーキュリー・ドラゴンから見れば、これもまた、一風変わった経験を必要としていることを表現しているのだ。



ミスラル・ドラゴン

 力と威厳でミスラル・ドラゴンに敵うメタリック・ドラゴンは存在しない(とはいえ、ゴールド・ドラゴンは自身が誰かより劣っていることを認めたがらない)。アストラル海出身であるミスラル・ドラゴンには尋常ならざる洞察力がある。イオの命令と幻視に突き動かされているミスラル・ドラゴンは、自身の謎めいた目的を推進するためにそうすることが必要である場合のみ、他のクリーチャーと関りあう。定命の世界に出現するミスラル・ドラゴンは僅かしかいない。彼らがそうするのは、宗教組織や崇高な大義を支援するためだ。だがそのようなドラゴンは出現した時と同じくらい唐突にいなくなる可能性がある。その他のミスラル・ドラゴンはアストラルの領域を旅している。誰かが住んでいる場所だろうと、そうでなかろうと。


身体的特徴

 ミスラル・ドラゴンの鱗はその下にある筋肉とともに曲がる。またかすかに光っている。年齢を重ねると、若者の氷のように白い鱗が黒っぽくなり、白い筋が入った銀色になる。ミスラル・ドラゴンの力が頂点に達すると、入り組んだ白い筋と、より黒っぽい基調色との対照が際立つ。ミスラル・ドラゴンの手足にある模様は、戦闘時にはエネルギーを伴って光る。  ミスラル・ドラゴンの頭部にはとげが冠状に生えている。また、より小さいとげが頭部から首にかけて生えている。ドラゴンが興奮すると、とげが逆立つ。なかでも特に、ドラゴンが激怒した時。ミスラル・ドラゴンの翼は、肉の代わりに光輝エネルギーでできている。


食生活

 アストラル海で狩りをするのは難しい可能性があるため、ミスラル・ドラゴンは食べ物がほとんどなくても生きていけるクリーチャーに発達した。その雑食性に相応しく、家畜の面倒を見るよう従者に指示したり菜園を作ったりしているミスラル・ドラゴンはたくさんいる。この世界にもたくさんいるし、アストラル海にもたくさんいる。このように仕事を委任することにより、食べ物を見つけるために広く遠く狩りをする代わりに、住処に留まって自身の幻視に集中することができる。比較的食欲旺盛なミスラル・ドラゴンはアストラル海に浮かぶ緑の“地山”(訳注:earthberg、海に浮かぶ氷山[iceberg]に対して、虚空に浮かぶ土の塊を意味する)の上に住処を作る。彼らはそのような貴重な資産を獰猛に守っている。