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DMをするのがもっと面白くなる――『ダンジョン・マスターズ・ガイドU』 4月5日(月)発売!

はじめに

 『プレイヤーズ・ハンドブックII』はD&Dというゲームに8つの新クラスと5つの新種族を紹介した。さらに、種族固有の“伝説の道”、キャラクターの“背景”、すべてのキャラクターが使える新しい特技や儀式も登場している。
 『モンスター・マニュアルII』では、あらゆるレベルと役割に対応した300もの新モンスターが登場した。この本は、ちっぽけなアンケグの幼生から強大なる“全デーモン族の王” デモゴルゴンにいたるまで、君のプレイヤーたちに新たな挑戦を与え、君のダンジョンに新たな命を吹き込むためのモンスターで満ち溢れている。
 さて、『ダンジョン・マスターズ・ガイドII』はどのようにして君のゲームをもっと面白くしてくれるのだろうか?


かんたん便利な追加ルール

 まずは、今すぐ君のゲームに追加できるお手軽な追加ルールから見ていこう。たとえば、本書の第2章では8ページに渡って新しい罠の数々が紹介されている。さらに、君オリジナルの罠を作成するための明確なガイドラインも登場し、罠の数値を適切に設定する方法から、君の罠がキャラクターたちの脅威たりうることを保障する方法まで(さすがにゲームそのものの楽しさまで保障できないが)、罠に関するありとあらゆることが網羅されている。
 第2章では他にも、君の遭遇に加えることができる新しいファンタジー的な地形や、遭遇の環境に組み込まれている攻撃パワーである“地形パワー”という新しい概念も登場する。
 第4章はモンスターに手を加えて調節することを扱っている。1冊目の『ダンジョン・マスターズ・ガイド』記載のルールを補うものとして、雑魚を作成する追加ルールや、精鋭および単独のモンスターに関するガイドラインの改訂版などが述べられる。『プレイヤーズ・ハンドブックU』の各クラスに対応したクラス・テンプレートを含めた新たなテンプレートの数々も追加され、さらに“モンスター・テーマ” も登場する。君がどのようなアドベンチャーをプレイしようとしているのであろうと、モンスター・テーマを用いて既存のモンスターに特別な雰囲気やパワーを追加することで、そのモンスターを君のアドベンチャーにぴったりしたものに微調節することができる。
 第5章には新たなアーティファクトが多数紹介されている。昔懐かしいロッド・オヴ・セヴン・パーツやカップ・アンド・タリスマン・オヴ・アル・アクバル(共に1979年に出版された最初の『ダンジョン・マスターズ・ガイド』で登場)に加えて、2人組のキャラクターないしパーティ全員に利益をもたらすような新しいアーティファクトも登場する。

サプリメントの使い方

 2008年に『ダンジョン・マスターズ・ガイド』が発売された後も、D&Dというゲームは成長を続けている。『プレイヤーズ・ハンドブックU』および『モンスター・マニュアルU』に加えて、君たちは『武勇の書』、『ドラコノミコン:クロマティック・ドラゴン』、『Open Grave』(アンデッドを扱った未訳サプリメント)、『冒険者の宝物庫』、フォーゴトン・レルムやエベロンの『キャンペーン・ガイド』および『プレイヤーズ・ガイド』、さらにそれ以外のサプリメントやアドベンチャーまでも手にしているかもしれない。これらすべてを君のゲームでうまく使うためにはどうすればよいだろうか?
 まず、ノーと言うべき時を覚えよう。プレイヤーが持ってきた新しい選択肢が君のゲームに合わないなら、そのアイデアを使うのはそのキャンペーンが終わって君(または同じグループ内の誰か)が次を始める時まで待ってもらうのもよいだろう。もちろん、この返事は『ダンジョン・マスターズ・ガイド』P.28にある『まず肯定せよ』というアドバイスを充分考慮してからのものでなければならないが、君が自分のゲームでやれる限界を知り、「私にはここまでが限界だ」とはっきり主張することを恐れてはならない。
 君のプレイヤーが『プレイヤーズ・ハンドブックU』や『秘術の書』などで登場した新しいクラスや作成オプションを試したがっているなら、1人のプレイヤーに複数のキャラクターを持たせることに関するP.35のコラムを見てみよう。また、新しい選択肢が利用可能になった時には、プレイヤーが自分のキャラクターに細かな変更を加えることは認めるべきだ。君のパーティの守護者ドルイドが『原始の書』が出たとたんに大群ドルイドになりたいと言い始めたなら、その変更が君のゲームの物語に容認しがたい影響を与えるのでもない限り、プレイヤーの好きにさせてあげよう。
 D&D Insiderの一部であるD&D Compendiumは、大量のルールブックに溢れる情報を管理する最高の手段だ。たとえば、君がコーラー・イン・ダークネスというモンスターを探している場合、D&D Compendiumで検索すれば『Open Grave: Secrets of the Undead』に載っていることが(そして19レベルの精鋭兵士役であることも)すぐに分かる。遭遇を作成する際にも、D&D Compendiumを使えばあらゆるルールブックの内容を容易に参照することができる。
 “パクリ”は気にするな。たとえば、君のゲームがエベロン世界を舞台にしていないとしても、『エベロン・キャンペーン・ガイド』に載っている面白そうなデータを使うことに何の問題もない。神秘的な預言に縁あるドラゴンマークを帯びたキャラクターたちというアイデアが君のキャンペーンにぴったりだと感じたなら、君の卓のキャラクターたちにドラゴンマーク特技を持たせ、“チャンバー”や“ロード・オヴ・ダスト”と戦わせればいい。それでその場の全員が幸せになるなら万事問題なしだ。
 君がプレイしているアドベンチャーが既製品であろうが自作であろうが、プレイ中のアドベンチャーの途中にデルヴ(「掘る」、「潜る」ほどの意。3つの遭遇からなる短いアドベンチャーのこと)、モンスターの巣穴、あるいは1つの遭遇を挿入するのは簡単なことだ。アドベンチャーを自作したはずが、セッション間際になって(あるいはセッションの最中に)準備不足に気が付いた場合、『Dungeon Delve』からデルヴを1つ持ってくるか、『ドラコノミコン』からドラゴンの巣穴の例を1つ持ってくるか、Dungeon誌に収録されている何十ものアドベンチャーから適当な遭遇を2つほど引っ張ってくることで、君のゲームを問題なく進めることができるだろう。                                                ―ジェームズ・ワイアット

 また第5章には、DMが魔法のアイテムの代わりに(あるいは追加で)PCに与えることのできる新たな報酬のシステムも載っている。“神の賜物” は神々またはその代行者から賜った恩寵を表し、“伝説の賜物” は大いなる偉業の達成を表し、“奥義伝授” はPCが伝説の達人から指導を受けたことを表す。
 第1章の終わりの方では、同行キャラクターに関するルールが登場する。これは小規模なパーティに欠けたところを補ったり、重要なNPCをPCたちに同行させたりするための絶好の手段である。またこの章には、キャラクターの強さをその場で変化させることで、そのキャラクターが自分とレベルに差があるパーティに加わってもなじめるようにするための手軽なルールも載っている。


先達からのアドバイス

 『ダンジョン・マスターズ・ガイドU』は単なるルール集ではない。君がもっとよいDMになるための本でもあるのだ。君が古強者のDMであろうとDMに初挑戦するのであろうと、本書には君のゲームの向上につながる先達からの助言が豊富に記されている。
 第1章『みんなで物語を紡ぎ出そう』はセッションの参加者全員が協力してドラマチックな物語を作っていく過程に焦点を置いている。君が自分のゲームにもう少し物語的な要素を強めようとしているにせよ、みんなで創り上げた物語がキャンペーンを動かしていくことを望んでいるにせよ、卓上のキャラクターたちに命を吹き込むための助けになるようなアドバイスが見つかるはずだ。
 第2章『よりよい遭遇のために』では、同様のアドバイスを君のアドベンチャーを構成する個々の遭遇に対しても行なう。すなわち、1つ1つの遭遇を物語中の重要な一部分にするためのアドバイスである。また、各プレイヤーの嗜好に合わせて遭遇をカスタマイズする方法について、人数が多すぎたり少なすぎたりする場合について、戦闘中の移動を促進する方法、遭遇のペース配分によってドラマチックな緊張感を盛り上げていく方法などについてのアドバイスも述べられている。PCたちに大休憩を取らせず先へ進ませる手段に苦心しているDMや、小休憩の暇もなく次から次へと敵が押し寄せる長い戦闘の扱い方に悩んでいるDMも、この章を読めば必要なアドバイスが見つかるだろう。
 第2章の最後には、この章で登場したさまざまな要素を組み合わせた1つのダイナミックな戦闘がサンプル遭遇として載っている。
 第3章『技能チャレンジ』は、君のゲームでの技能チャレンジの使い方について、大量の例を用いて包括的かつ詳細なアドバイスを行なう。まずは技能チャレンジに関する基本的なルールのまとめから入り(www.wizards.comで公開されているルールの更新を元にしたルールの拡張と明確化もここに含まれている)、技能チャレンジにおける5つの重要な要素について論じ、最後に技能チャレンジの例をいくつか示す。
 第5章『アドベンチャー』で紹介されている代替的報酬やアドベンチャーの間にも、自分のキャンペーンを創り上げる際に参考になるようなアドバイスがいくつも載っている。キャンペーン・アークの例およびキャンペーン・アーク作成の実地例は、君がキャンペーンの骨組を決める際に役立ち、アーティファクトの使い方や組織に関する情報は細かい肉付けの助けになるはずだ。
 君のキャンペーン内のキャラクターたちが伝説級に達したなら、第6章『伝説級キャンペーン』に目を通すべきだ。この章は伝説級のキャンペーンのための提案や小技を提示し、伝説級を通してキャラクターたちの冒険の拠点となりうる都市シギルを紹介し、11レベルキャラクターのための短いアドベンチャーも付属している。


第1章:みんなで物語を紡ぎ出そう

 D&Dでは、ダンジョン・マスターとプレイヤーがセッションやアドベンチャーを遊ぶことによって、物語を紡ぎ出すことができる。プレイグループ(一緒にゲームを遊ぶ仲間たちの集まり)が紡ぎ出す物語は、剣と魔法の活劇に重きを置いて、キャラクターを掘り下げたり物語の筋に捻りを利かせたりといったことは軽めに済ます、比較的単純な王道派のものであるかもしれないし、複雑な物語が幾重にもドラマチックに重なり合う、壮大で魅惑的な物語であるかもしれない。
 本章ではDMの視点から、D&Dというゲームの物語を生み出す面に焦点を当て、プレイグループのプレイヤーたちが、物語を紡ぎ出すうえで、君をうまく手助けしてくれるようにするためのテクニックを紹介する。


物語の骨格

 どんなものであれ物語を作り出す際には―あらかじめ作っておくのであろうが、即興ででっちあげるのであろうが、君がD&Dを遊ぶために作るのであろうが、創作活動を行なうのであろうが―まずはその構造の基礎となるパーツを作り出すことから始めよう。どんな物語も、そういったパーツの積み重ねでできているのだ。


伝統的な物語の構造

 ファンタジー作品の物語は、世界中のさまざまな文化圏に伝わる伝説や伝承の影響を強く受けており、伝統的な構造を踏襲していることが多い。君は物語の筋道を伝統的な構造から大きく外すことで大きな効果を生み出すこともできるが、その場合には題材に対する深い知識が必要となる。
 以下に伝統的な物語を形作っているパーツをいくつかあげる。
 導入部:導入部では、主役となるキャラクターたちの視点や立ち場、物語世界の基本的な状況などが示される。また同時に、主役たちの邪魔をする勢力、つまり悪役たちも紹介される。
 筋の上昇:“筋の上昇”というのは、文学作品などのプロット上で、山場へと続く一連の出来事のことである。これら一連の出来事によって、キャラクターたちを取り巻く状況は、より複雑かつ切迫したものへと変わっていく。そしてこれらの出来事が進んでいくにつれ、物語の結末がよりはっきりと見えてくる。君はこの“筋の上昇”を、間に山や谷をはさみつつ、全体的には上向きに進んでいく一筋の道として描いておくことができる。その中に転機となるいくつかの出来事を配置することで、君は物語に緊張感を持たせたり、一時的に話の流れを緩めたり、あるいは再び急展開で進めたりといったことができる。
 クライマックス:物語の中で最も緊張感が高まり、要となる瞬間である。物語の中心となる戦いを繰り広げてきた敵対勢力同士がついに対決のときを迎え、導入部で示された状況に最後の決着をつける。
 大団円:最後にまとめを行なうことで、プレイヤーたちは、物語のクライマックスで起った出来事がその後どのような影響を与えたのかということを、心に刻むことができる。


分岐

 D&Dにおいて物語を紡ぐ場合、他の形態の創作活動を行なう場合とは、大きく異なる点が1つある:D&Dの物語では、一連の転機において、あらかじめ定めておいた筋書きどおりにことが進むとは限らない。それぞれの転機は、物語が予測していなかった方向に分岐する可能性を提供するものなのだ。あらかじめ分岐の先を予測しておくことにより、君は物語を停滞させず、面白い―そして予測していなかった―方向に進み続けさせることができる。
 特に重要な分岐点では、プレイヤーたちが自らの選択により、物語を複数の異なった方向へと動かすことができる。


成否に基づいた分岐

 君がD&Dのルールを用いて行動を解決し、その結果が物語に影響を与えるなら、それは成否に基づいた一つの分岐点となる。
 プレイヤーたちが遭遇や技能チャレンジを成功裏に終了させたり、一連の技能判定に成功したならば、PCたちは試練を乗り越え、何らかの利益を得る。物語の緊張感はいったん緩むだろう。こういった成功はPCたちを、次なる分岐点へといざなう。  逆に遭遇から逃亡したり、技能チャレンジや技能判定に失敗したなら、PCたちには良くない結果が降り掛かる。次なる分岐点―おそらく彼らが望まなかったもの―が近づくにつれ、緊張感はいや増すことだろう。
 なんら価値を生み出さない結果―つまり成功とも言えず物語を進展させることもないもの―は、プレイヤーたちを苛つかせ、嫌な気持ちにさせる恐れがある。PCたちは、立ちはだかる障害の克服に失敗したならば、それを乗り越える別の方法を見つけ出すべきである―いつだって、何か代案はあるはずなのだ。
 成否に基づいた分岐点を印象深いものにしたいなら、プレイヤーたちに対し、失敗した場合にどんな望ましくない結果が起こりうるのかを示すことによって、緊張感を高めよう。またプレイヤーたちが実際に望ましくない結果を招いてしまったときには、その様子を丹念に描写して、恐怖感を高めよう。たとえば一人のパラディンが岩棚めざして登っているなら、手を滑らした場合に彼を飲み込むであろう底の見えぬ深い谷について、おどろおどろしく語ろう。また逆に馬の鼻面にニンジンをぶらさげるがごとく、成功すれば得られるであろう素敵なお宝についての描写でプレイヤーたちのやる気を釣るという手もある。


DM実践講座:王から出頭を求められる

 とある伝説級のPCたちは、彼らのキャンペーンにおいて、冒険の舞台をアンダーダークへと移しはじめていた。彼らは地下探険を繰り返す際の拠点として、とあるドワーフの城塞に目をつけていたが、以前に出会ったドワーフの巡視隊から聞いた話によれば、そこを治めるドワーフ王は情緒不安定ぎみであるということだった。
 この分岐の例においては、城塞の王がPCたちを呼びつける。その城塞からタングルという名の下士官が重武装の衛兵隊とともに派遣されて来て、PCたちを謁見の間へと連れて行く。以前にPCたちがタングルの率いる巡視隊と出会ったときの“成否に基づいた分岐”の結果として、この下士官は渋々とではあるが、ある程度PCたちのことを認めてくれたのである。
 君はこの遭遇の冒頭に、一つの“決断による分岐” を組み込んだ:PCたちは衛兵隊から逃げるだろうか? それとも大人しくタングルに同行するだろうか? このような場合にはあらかじめ、どちらの選択肢もパーティにとって何らかのリスクがあり、かつ、どちらを選んでも面白い分岐先に進めるように設定しておこう。
 逃亡した場合には以下のようなリスクがある:逃亡のための技能チャレンジに失敗したなら、PCたちは捕縛され、フィオルフ王の怒りにさらされる。逃亡に成功した場合には、ドワーフたちの助けなしで、自力でアンダーダークの深みを生き抜くはめになる。つまりPCたちが逃亡を選択した場合その先には、乗り越えるべき新たな障害へと物語を進める、二種類の分岐が発生することになる。
 タングルと同行する場合にもリスクは発生する:タングルは不本意そうな様子で、とあるマインド・フレイヤーとの戦いの後、フィオルフ王はだんだんと気まぐれで何をしでかすか判らなくなっていったのだと説明してくれる。王はPCたちを地下牢に放り込むかもしれないし、何らかの任務に送り出すかもしれない。同行を選択した場合にもやはり、その結果は2種類の面白い障害へと分岐する:ダンジョンからの脱走か、PCたちが自発的にはやろうとしないであろう任務の遂行である。
 君があらかじめ二つの選択肢の両方の先を予見して計画をたてておけば、プレイヤーたちがどちらの決断を行なおうとも対応することができるし、決断によって分岐するそれぞれの先に、面白い“成否に基づいた分岐”を用意しておくことができる。  さて、プレイヤーたちが取り得る選択肢について話し合い、タングルに同行することを選んだとしよう。君が予測していた通り、彼らはタングルから、フィオルフ王に関するもっと詳しい情報を聞き出そうとした。君はこの機会をとらえ、王の情緒の不安定さを描写することによって、セッションの緊張感を高めることにした。王はこびへつらった態度や追従に腹を立てることもあれば、逆に謁見者が充分にへりくだって敬意を示さなかったために爆発することもあると言うのだ。
 しばらく話し合った後、PCたちは伝説的な英雄にふさわしく、自信ありげな堂々とした態度で彼と接することに決めた。  君は作っておいたメモを参照し、PCたちが前回の技能チャレンジに簡単に成功していることを確認した。こういう場合、君は今回の技能チャレンジの難易度を上昇させることにするかもしれない。
 この技能チャレンジの結果として起こりうる二つの分岐を両方とも予測しておいたので、つまづくことなく話を進めることができる。PCたちは技能チャレンジに失敗し、怒り狂ったフィオルフは彼らを投獄する。しかしプレイヤーたちは、王が彼らのキャラクターを投獄すると脅したことに動揺し、戦って王宮からの逃走を試みることも検討し始める。
 君はあらかじめ、王の配下の戦力が無視できない相手であると描写しておいたので、まさかPCたちがこの時点で戦うべきか戦わぬべきか悩み始めるとは予測していなかった。君は単純に、ここで逆らっても勝ち目はないと宣言することによって、プレイヤーたちの思いついきを諦めさせることもできる。しかしそれを行なう前に君はまず、協力的なDMはプレイヤーたちの思いつきを尊重すべきであるということを思い出すべきなのだ;君は状況を再検証し、この成り行きを、不自然でない戦闘によって先へと進める方法を模索する。君はフィオルフが退屈し娯楽に飢えているため、パーティに対して全軍を向かわせるのではなく、厳しくはあるが戦いになる程度の戦力だけを投入するのだと決めた。PCたちが、愚かにも誰かを殺してしまうようなことなしに衛兵たちを退けたなら、王は一行を彼の王国から追放するだけで済ましてくれる。一方で戦いに敗れたり衛兵を一人でも殺してしまったならば、牢獄に繋がれることとなる。これで結果がどちらに転んでも、物語として面白く、かつ説得力のある分岐を用意することができた。君はドワーフとの遭遇を1つでっちあげるべく、バトル・グリッドを広げる。
 しかし君が遭遇に必要な材料を準備しはじめたところで、プレイヤーたちはまた気を変える。冷静に考えてみると、いったん捕まった後でフィオルフの牢獄から逃げ出すほうが、王宮一杯のドワーフ戦士たちと戦うよりは勝ち目があると気付いたのだ―結果としてキャラクターたちは降伏し、甘んじて虜囚となった。
 君は一行が牢へと連行される様子を描写しながら、脱出劇の先に続くであろう分岐について想いを巡らす。牢から脱出できなければ、古典的な“行き詰まりへの分岐”が発生してしまう―しかもプレイヤーにとってはイライラが募るばかりで面白くもなんともない、最悪の行き詰まりだ。そのため君は、キャラクターたちは脱出に成功できるが、成り行き次第でまったく衛兵に見つからずに逃げられることもあれば、戦いの後に脱出できることもあるように設定する。どちらに転んでもPCたちは、逃げ込むことのできる文明化された拠点なしにアンダーダークを冒険することになり、自力で何か他の隠れ家を確保せねばならない。

 

協力して大筋を決める

 君とプレイヤーたちとで一緒に物語を作り出すという行為は、実際にゲームをプレイする以前、君がキャンペーンを作り出す段階から始めることができる。そのゲームを遊ぶ予定のメンバーを呼び集めて、彼らにキャンペーンの大筋を一から組み上げる手伝いをして欲しいと頼むのだ。この会合でメンバー全員にそれぞれ、何らかの意見やキャンペーンに関する基本的なアイデアを出してもらおう。ここで出してもらう意見やアイデアは、プレイヤー・キャラクターたちが彼らの世界においてどのような役割や位置づけを持つのかということを説明する簡単な一文でかまわない。たとえば以下のようなものだ。


DM実践講座:英傑再誕

 とあるDMのキャンペーンが終盤に近づいたので、君はプレイグループの次なるキャンペーンの手綱を取るべく名乗りをあげる。君は“アイデア会議”を開いて、協力して大筋を決めるスタイルを取ることにした。君のプレイグループにはエイミィ、ベン、カルロス、ディーナの4人のプレイヤーがいる。みんなに意見を募集したところ、とある1つの案に全員が食いついた:
「今までにみんなが作った中で、それぞれ一番お気に入りのキャラクターを持ち寄ってオールスター・チームを作るというのはどうかな?」とエイミィが言う。
 他のプレイヤーたちは即座に、かつて遊んだ数々のキャンペーンで、お気に入りのキャラクターが行なった活躍を思い返しはじめた。その中には君がよく覚えているものもあれば、そうでないものもある。
 君はプレイヤーたちに「みんな乗り気なようだし、そのアイデアは気に入った」と告げる。
「キャラクターたちはどうやって知り合いになるんだろう?」
「全員が同じ世界の住人じゃなくてもいいことにして欲しいな、私のパラディンはフォーゴトン・レルム・キャンペーンの出身だから―」
「―僕は一番最初に作ったキャラクターを使いたい。うちの兄さんが自作したワールドにいるやつ」
「レベルも違えばD&Dの版もバラバラだよね」とカルロスは思案顔。「君は1レベルからゲームをやりたいんだろ?」
 さまざまな意見を出し合いながら問題点を解決していき、最終的には以下のように決まった:PCたちはそれぞれ、かつてプレイヤーたちが使ったお気に入りのPCと同じ名前と容姿を持っているが、みな同じ村で平民として暮らしている。彼らは英雄級を通じて成長し、さまざまなパワーを発揮して行くにつれ、ゆっくりと自らの過去の人生を思い出して行く。最初の時点では、かつての人生の断片的な記憶があるだけなのだ。英雄級の最終段階で、彼らはかつての記憶を完全に思い出す。
 ベンが、伝説級では彼らがいっしょに転生する宿命を負った理由が解き明かされることにしよう、と提案する。「僕たちはその理由を知らないんだよ。で、実は例えば、なにか宇宙的な存在が多元宇宙中から最高の英雄たちを集めてくる必要に迫られたとか」 ディーナも彼の提案にうなずく。「で、神話級ではこの世界全体を脅かすような勢力との対決が主題となるのね」
 君が必死でこれらのアイデアを書きとめていると、カルロスが1つのリクエストを出した。「知ってるだろ、俺のモンクは結局、宿敵の“華王”を倒せなかったんだ。あのキャンペーンのDMをやったキースを説得して君に華王の情報を書き送ってもらえば、重要な悪役の一人として使ってくれるだろうか?」
「いいじゃん!」エイミィも相づちを打つ。「ヒーロー大集合なんだから悪役も豪華でなくちゃ」
 さてここまでまとまれば、後はプレイヤーたちにそれぞれのキャラクターの解説をしてもらうだけだ。君が各PCの過去を充分に把握できるよう、プレイヤーたちはその日の夕方の集まりをまるまる使って詳しい説明を行ない、また彼らがかつて戦った敵についてもいろいろと話してくれた。君はそれを聞きながら、物語の中心となる宇宙的な危機をどんなものにしようかと心を馳せる。


キャラクターの肉付け

 君とプレイヤーの会話以外にも、物語を語る方法はいろいろある。プレイヤーたちが協力しあうことを奨励しよう。そうすることでキャラクターどうしの信頼関係や絆も深まるはずだ。またこれにより、進行する物語とキャラクターたちの結びつきもどんどん強いものとなっていく。君のキャンペーンの中で特に印象深く面白い出来事は、プレイヤー・キャラクターどうしの間で起ることが多いだろう。シリーズもののTV番組の主要キャラクターたちのように、PCたちはそれぞれ他のキャラクターと違う特徴を持っていたほうが、物語の登場人物としても目立つことができる。


DM実践講座:再誕者たちの登場

 エイミィ、ベン、カルロス、ディーナの4人は、物語の導入となるセッション『再誕せし者たち』を行なうために集まった。
 エイミィは彼女のPCである新米ウィザードのアリサナと、その行動原理を紹介する:「子供のころから村人たちは、私が“魔女の眼”を持っていると言って恐れていました。私は人目を逃れて暮らしながら、長らく誰も住んでいないあばら屋で見つけた本から魔法を学びました。私は村人たちに―そして自分自身に対して―人々が私を恐れる必要はないし、私が悪しき怪物なわけでもないことを証明せねばなりません」
 次にベンが話す「僕のキャラクターはレンジャーのボブ。僕が前に兄さんのキャンペーンでプレイしたとき、彼にはさしたる行動原理がなかったんだけれど、だからこそ彼は自分がなんらかの大きな運命に導かれていると信じているんだ。そして彼は、なぜ自分がそう感じるのかという答えを探し出そうとしている」
 (ここでプレイグループの他のメンバーから、彼のキャラクターの名前について抗議の声があがり、ベンは名前をよりふざけた感じのしない“ブロム”に変更することに同意した)
「俺の名はキャリバン。ここらの文化圏には珍しく、徒手格闘の技を身につけている」 カルロスはそう言って、彼がモンクをプレイすることにしたと説明する。「彼は繰り返し、王冠と毒の華の環を身につけた恐ろしげな人物の出てくる悪夢を見る。キャリバンはいつかこの宿敵が現れたときに打ち倒すことができるよう、戦いの経験を積んでおきたいと思っている」
 次はディーナの番だ「私のキャラクターはディアーニといって、バハムートの熱狂的な信徒です。私は我が神の名において何か、裏切り者である私の父の記憶をぬぐい去るに足る偉業を成したげたいと思っています。父は仲間たちを裏切ってティアマトに寝返り、その後かの悪神に食い殺されました」
 次はプレイヤーたちが、他の誰か1人のPCとの関係を考える。「アリサナはディアーニにとても感謝しています」とエイミィは言う。「アリサナを恐れる村人たちと違って、ディアーニは私が良い人物であると理解してくれたからです」
 次はベンの番だ:「ブロムはキャリバンの会得している奇妙な技がカッコいいと思っている。これはキャリバンが僕と同様に大きな運命に導かれている証拠だ。だから僕はキャリバンとつるんでいる」
 次はカルロス「キャリバンはアリサナに恋心を抱いているが、もしそれをあらわにしたら、彼女もまた悪夢に出てくる邪悪の存在に付けねらわれるのではないだろうかと恐れている。だからキャリバンはあくまでも兄貴分のような態度で彼女を見守っているんだ」
「うーん」と言うのはディーナ。「そうなると残りはブロムよね。えーと―彼は私の旦那なの! 子供のころからの許嫁で、苦労の絶えない母親に逆らわないために彼と結婚したのよ。個人的には、さほどの愛情を感じていないけれども、義務感から彼に敬意を払っているの」
「うわ、そりゃ酷いな」 この案を受けてベンが言う。このアイデアは彼のキャラクターに関わるものであるため、ベンには修正を求める権利がある。しかし、しばらく代案を考えた後、この案を飲むことにした。「今までブロムが結婚しているだなんて思いつきもしなかった。この設定のほうが、単にブロムをガキとしてプレイするよりも面白そうだ。よし、ブロムはそんなに頭が良くないし、自分がディアーニを愛しているようにディアーニも彼を愛していると信じ込んでいることにしよう
」  パーティ作りの共同作業の最後から2番目の手順は、各プレイヤーが彼らの対立要因を決めるというものだ。
 エイミィは言う。「私はキャリバンを完全には信頼していない。私は彼がなんで自分のようなはぐれ者に注意を向けているのかわからないし、彼が何か私に対する本当の意図を隠していることを感じている。今まで誰も私を愛せる人はいなかったから、今後も居るはずはないと思い込んでいる」
 カルロスは胸に手を当て、「なんてこった! 哀れなキャリバン」と嘆いた。
 次はベンの番だ:「僕の相手はディアーニだ―僕はしょっちゅう、早く落ち着いて子供を作ろうと言ってディアーニを苛立たせるんだ」
「私はなるべく冷静でいようとするけど」とディーナが続ける、「でもブロムがそうさせてくれないわけね」
「ブロムは鈍感で間抜けみたいだな」とカルロスは言う。「キャリバンはこいつと一緒にいると、どうにも調子が狂ってしまって、超然とした態度を保つのが難しいんだ」
「あと誰からも対立要因を持たれていないのは誰だっけ?」とディーナが尋ねる。するとエイミィが手を挙げた。
「面白いわね。私はあなたに懐かれているのよね、そうでしょ?」 ディーナは続ける。「えーと、そうね、じゃあ私はあなたの、はみだし者的な生き方を怖がっていることにしましょう。あなたがこそこそと人から隠れまわったり、社会から距離を置こうとするやり方にね。ディアーニは義務を果たし、社会に適応し、地域の権威に従うことを信条としているの」
 最後に各プレイヤーが、キャンペーンにおいて何らかの役割を果たすかもしれない、繰り返し登場するNPCたちを設定する。
「私は、はぐれ者なわけだから」とエイミィはしばし考えて言う。「村の中に、話をする相手はこの3人しかいないの。だからそうね、私が見つけた魔法の書物の持ち主だった隠者の老人の亡霊というのはどうかしら? それはときどき月夜の晩に現れるんだけど、めったに自分から話すことはなくて、ほとんどの場合は私の言うことを聞いているだけなの」「昔やったキャンペーンではボーデという年寄りの従者がいたんだ」とベンは言う。「だから僕にはどこにでも付いてくるボーデという名の召使いが居ることにしよう。こいつは僕の噂を聞きつけては後を追ってくるんだ」
「私たちはお金持ちみたいね、旦那様」とディーナが言う。
「たぶんね。たとえば僕が地主の息子だってのはどうだろう?」とベンが君に尋ねた。
「いいよ。でもだからといって、追加の初期装備が貰えるとは期待しないでくれ」
 結局ベンは繰り返し登場するキャラクターを2人作り出した―ボーデと、ブロムの父親だ―彼らは君が物語を作るいい材料になった。
「俺はもう対立要因を持つキャラクターを決めたよ」とカルロスは言う。「華王だ」
「私も」とディーナも言う。「父の裏切りがディアーニの母であるエローンの心を砕いてしまったの」
「つまり裏切った父親と対立してるの?」とベンが聞く。
 しかしディーナは頭を振って「いいえ、彼はもう死んでいる」と言った。
 ああ、君は確かに彼が死んだと思っているに違いない、と君は心の中でつぶやく。すでに、そのうち父親を登場させようという構想はわきつつあった。


協力して世界を造り上げる

 協力して創作活動を行なうという工程は、君のキャンペーンの準備段階だけで終わらせる必要は無い。君はプレイヤーたちにも、君たちのD&D世界を創造していく役割を分け与え続けることができるのだ。
 D&Dの基本の世界設定は、その場でいろいろな事柄を決めて行くのに理想的な土台を提供してくれる。諸次元界や魔法が働く仕組みといった、設定の基礎に使える事柄はすでに用意されているので、君たちは残りの部分を埋めてやりさえすれば良い。伝統的には、DMがキャンペーンやアドベンチャーを準備する時点でこういった細かい点を決めていた。プレイヤーたちをこの工程の協力者として誘い、世界の創造を手助けしてもらうことで、プレイヤーたちを巻き込み―そして君自身の作業量を減らすこともできる。
 もし君が、プレイヤーの意見を取り入れるという考えは気に入ったけれども、あらかじめ細かい設定を作っておくほうが好きだと言うのなら、プレイヤーたちに宿題を出すと良いだろう。彼らに対して、自分たちのキャラクターがこの世界のどのような要素と深く関わっているかを説明させるのだ。こういった背景設定の要素のなかには、たとえば彼らの文化、宗教、組織などといったものが含まれ得る。この手法をとれば、世界の詳細のうちPCに関わりの深い部分をプレイヤー自身の手で作り出すことによって、プレイヤーたちがよりゲーム世界に入りこみやすくなるのである。君のプレイグループがこの手法を好ましいと感じるなら、参加者全員がDMを行ない、共同作業として世界を作って行くことを検討してもいいだろう。君たちは各人が同じ1つの世界の中の別々の場所を用いてそれぞれ別々のキャンペーンを運営してもいいし、あるいは長期間遊ぶ1つのゲームにおいて、全員が交代でDMを努めてもいい。


DM実践講座:分かれ道

 以下の“意見募集” の例において、プレイヤーたちは深い森を通り抜ける古代の街道に沿って旅している。
「突き出た岩場を避けるように折れた先で」と君は情景を説明する。「この道は東と北西の二方向に枝分かれしている」
 この分かれ道はPCたちにとって1つの“決断による分岐点” となると同時に、彼ら好みの分岐を生み出す機会を与えてくれている。この前やった意見交換では主にベンとディーナが意見を通したので、君は今回、エイミィとカルロスから意見を募集する。
「エイミィ、君は東のほうに何か恐ろしいものが待ち受けていると聞いたことがある。それはいったい何だろうね?」
 エイミィはしばらく考えて言う。「えーと、バード・ピープル(鳥人間)ね。私はバード・ピープルが大嫌いなの」
 君はしばしの間パニックに陥る。君はバード・ピープルのデータ・ブロックなど用意してはいない。しかし君はそこで、最低限の作業だけで、バグベアとゴブリンとの遭遇用に準備しておいたクリーチャーのデータをそのまま使い、それ以外の設定だけを書き換えて、敵対的な飛べない鳥のものに流用することができると気付いた。君は1つ新しい設定を追加しつつ、エイミィの提案を採用する。
「よし、そのとおり」と君は応える。「連中の新しいリーダーであるラカックは、すべての哺乳類に対する復讐を誓っているんだ」
「じゃあカルロス、北西にはどんなトラブルが待ち受けているんだろう?」  カルロスはこれを、自分のキャラクターの主たる行動原理を再び物語の筋書きにからめるチャンスとして利用する。
「幽霊が出るという“毒華の塔” があるんだ。ここで消息を断った探検家たちは多い。噂によればここは一時期“華王” が住んでいた場所であり、秘密の書物が眠っている可能性がある」
 君はここでひと捻りを加えることにした:もしPCたちが塔を訪れれば、そこでは失われた巻物を探している華王配下のモンクたちと出くわすことになる。しかしこの驚きの事実を披露するのは、まだ早い。
 一通りの選択肢をこしらえ終わったプレイヤーたちは、2つの道のうちどちらの方が得る物が大きいだろうかと相談し始める:彼らは敵対的なバード・ピープルたちと対決しに行くのだろうか、それとも幽霊が出るという塔を探検しに行くのだろうか?


DM実践講座:タニス

 パーティは始めてシギルを訪れている。ブロムは誰かガイド役を努めてくれる地元民を見つけようと探しはじめた。
「浮浪児を捜してみよう。この近くに見当たるかな?」
「何人かいるね」と君は応える。「どういう奴に話しかけてみたいのか、自分で描写してくれ」
「ああ、いいよ。僕は一人の女の子を見つける。ぼろを身にまとっていて、髪の色は黒、そして何故だか、他の連中から卑しい者として扱われているようだ」「ええと、じゃあね」とエイミィが追加の意見を出す。「彼女の手には鉤爪があって、まるでデーモンかモンスターの血を引いているように見えるの」
「なるほど、鉤爪のついた手ね、そりゃイカしてる。彼女は腹を空かしているみたいだ;他の子供たちは施し物をもらっているのに、彼女だけはそれを貰えていない」 ベンはシギルのキャラクターの名前を羅列した紙を手に取る。
「彼女の名前はタニスだ」
 君はこれらの設定を書きとめ、タニスの役を演じ始める。最初のセッションの間、このキャラクターを操って、シギルについての情報をプレイヤーたちに伝える。
 その後、ブロムとディアーニはユルタンという名のギスヤンキのリーダーに対して、危険な交渉を試みた。一方でキャリバンは彼に化けていたドッペルゲンガーを追跡すべく、迷路のようなポケット次元界にへと踏み込んだ。君はこの2つの事件を別々に解決することにした。エイミィは、どちらの冒険につきあうのもアリサナらしくないと判断した。そこで君は彼女のためだけに第3の筋書きを作るかわりに、エイミィが一時的にタニスをプレイすることでギスヤンキ事件に参加するのはどうだろうかと提案する。エイミィはここで、タニスを熱狂的なギスヤンキ好きとして設定するとキャラが立つのではないだろうかと考えた。エイミィはこの理由付けとして、タニスの醜い容姿にもかかわらず、アストラル海の海賊たちが何度も彼女を雇ってくれたことがあるのだと説明する。他のPCたちはタニスのギスヤンキ贔屓を好ましく思わないが、最終的には彼女にユルタンとの交渉の主導権を委ねることにした。
 そこから2回のセッションを経てブロムが死亡した。仲間たちは金欠状態にあったが自分たちの装備を売るのは気が進まなかったので、シギルのどこかに、後々借りを返すという約束でレイズ・デッドの儀式を行ってくれる人物がいないかと探しはじめた。君は今度はベンに対してタニスをプレイしないかと提案し、承諾を得た。ベンは以前にギスヤンキにコネを作ったことを思い出し、タニスの口から、ユルタンなら復活の儀式の資金を貸してくれるかもしれないと提案させる。ブロムにしてみればギスヤンキに借りを作るなどという考えはまっぴらごめんだろうが、ベンは一時的にプレイしているキャラクターを上手に使って、自分が使い続けるPCを物語的に面白い展開へと追い込んだ。


ロールプレイのための“引き”

―スティーヴン・ラドネイ・マクファーランド、『Dungeon』誌155号、『Save My Game!』より


 会話型ロールプレイング・ゲームの物語的な部分は、ゲームのルールにくらべてより自由な性質を持っている。D&Dをプレイする際には、こういった点に関して不安がったり自意識過剰になってしまう人も少なくない(演技を好まない人は特にその傾向が強い)。時にはDMが、ロールプレイというのは何も特別なことではなく、D&Dというゲームの他の部分と同じようにやればよいのだということをプレイヤーたちに分からせて、気を楽にしてあげるとよいだろう。そのためのアイデアを以下にいくつか示す。


“引き”を作る

 D&Dのゲーム・セッションの多くは、たくさんのゲーム・データとアクション・シーンと宝物の出てくるブン殴り&ブンどり型の、RPGのごくごく基本的なパターンを踏む。こういったゲームでは、プレイヤーたちを導く物語はほとんど必要ない。彼らはゲーム内の出来事が“リアル”かどうかなど気にせず、これはゲームだと割り切った上で熱中して楽しんでいる。どうしてかって? D&Dというゲームそのものと、そのデザイン自体に、“引き”が仕込まれているからだ。
 ここでいう“引き”とは、観客たちの心をぐいっと掴んで引きこみ、2度と離さないような部分のことだ。D&Dにはそういった引きが山盛りになっている。クラスや種族も引きとして機能する:それらの概念、イラスト、使い方などはプレイヤーたちの心まで届き、掴み取りうる。単純なルールに例外を追加していくというD&Dの基本原則も、また別の引きになる。DMは基本的なルールだけをしっかり覚えておき、例外的なルールやデータはそのつど確認すればよい。引きというやつは、自分の顔を突き出して「やあ、僕はここにいるよ。君は僕のことが気に入るんじゃないかな」と言っているのだ。その引きが気に入ったプレイヤーは、それに釣られて走り出すだろう。また、D&Dはファンタジーを題材にしたゲームであり、それもまた一つの引きになりうる。
 時としてDMは、自分のキャンペーンを組み立てる際に、“引き”に関する基本的な原則を忘れてしまうことがある。現実的に見える土地を作ろうと努力するのはいいが、そもそもゲーム世界内の交易や農業の実態に興味を持つようなプレイヤーなどめったにいない―このゲームは不思議な力に満ち溢れたファンタジーを扱っているのだから。またあるDMは、キャンペーン全体の壮大な物語にばかり力を入れた結果、この物語にはプレイヤーという聴衆が存在することや、プレイヤー・キャラクターという役割を演じるのは自分とは別の人々であることを失念してしまうことがある。このようなDMは、作者自身しか面白いと思わないような“引き” を作って自縄自縛に陥ってしまうかもしれない。そして、自分が楽しむことしか考えていないようなDMは聞き手をすべて失うことになるだろう。
 物語もロールプレイも、大まかな枠組みだけ決めて後はプレイヤーたちの自由に任せること。出発点から強制的に物語を進めていくのではなく、筋書きの断片を投げ与え、どのプレイヤーが食いついてくるか、なぜ食いついてきたのかを把握して、そのつど物語に反映させていこう。プレイヤーがクラスや種族を選ぶ際にそれとなく道を示すのはよいが、プレイヤーの代わりに決断を行なってはならない。それと同様に、プレイヤーのロールプレイ的な決断をDMが代わりに行なってしまうのもよくない。君の世界や物語の見通しについて、細かい部分に関してはプレイヤーの意見を幅広く受け入れつつ、完全にプレイヤー任せにはしないこと。プレイヤーたちのアイデアや提案のうち、よいものだけを取り入れていこう。プレイヤーたちが物語に引きこまれて行けば行くほど、彼らの没入の度合いは高まっていく。プレイヤーたちが、自分たちは目の前で物語が展開していくのを眺めているのではなく、自分の手で物語を動かしていくことができるのだと気が付けば、さらに熱中してくれるだろう。プレイヤーたちが物語やロールプレイ的な部分にも労力を払うようになれば、そういった部分を無視したり避けたりするのではなく、それらにも注意を傾けるようになるだろう。
 実例を示すために、私が現在プレイ中のキャンペーンである『影長き日々』―これは私が初めてD&D第4版で1レベルから30レベルまで続けるつもりのキャンペーンだ―でやっていることの概要を述べよう。プレイヤーたちがキャラクターを作成する際、私は彼らに選択可能な7つの背景設定のリストを渡した。私はその時に、この背景選択はキャンペーン全体の筋書きとの間に強いつながりを持っているが、どれか1つを必ず選ばなければならないわけではないということもプレイヤーたちに告げた。私が作成した背景はどれもシンプルで制限も少ないものだ。そのうち2つをここに示す。
 呪われし者(ハーフエルフ、ヒューマン、またはティーフリング):謎めいた人物が君に呪いをかけた。君はその人物の正体を知らない。唯一分かっているのは、その人物のかすれた声が時おり君に命令を与え、声の語るままに行動させようとするということだ。その命令は時としておぞましい行為を要求するものだが、君がそれを拒んだ時にはさらにひどい結果が待ち構えている。
 みなしご(ヒューマン):君はファデイル村が消え失せた際に取り残された孤児だ。アイウーンに仕える放浪の巫者が預言したところによると、ファデイル村を見つけ出すことができるのはこの村の最後の生き残りだけであるという。言うまでもなく、それは君のことだ。
 これらの“引き”には目的がある。私はこのキャンペーンの中で広げていく予定のいくつかの面白そうなテーマを、プレイヤーの関心を引きそうな形で結び合わせ、それらのテーマをプレイヤーにも使えるようにしたのだ。
 プレイヤーたちに背景を選ばせることによって、私は2つの目的を達成できた。1つ目は、物語およびキャンペーンのテーマに対して、1つ以上の強力な“引き” を与えたことだ。自分で背景を選んだことによって、その背景に関する物語への関心は否応なしに高まる。さらに、プレイヤーたちが話の筋を追いかけようとする動きを一点に集中させ、かつ私が各プレイヤー向けの個人的な物語を考案する際の助けにもなるような、便利な道具が手に入ったことになる―しかも、キャンペーンが始まる前から。
 たとえば、“呪われし者”という背景は私が特定のプレイヤーを思い浮かべながら書いたものであり、そのプレイヤーがこの背景を選んだことは不思議でもなんでもなかった。そのプレイヤーは、秘密を持ち謎と苦しみにつきまとわれるキャラクターをプレイすることを楽しんでいる。私には、彼がこの背景に心惹かれるだろうという確信があった。
 誰にも選ばれなかった背景(たとえば上記の“みなしご”)については、今回の私のキャンペーンでは使わないアイデアとして別ページにまとめている。プレイヤーが何を選ばなかったかという情報からは、どんなゲームがそのプレイヤーの関心を引きやすいかを初め、多くの事柄を学べるのだ。
 さらに重要なのは、これらの背景がゲームと物語の橋渡しをしてくれるということだ。私が作った背景をキャラクターに選ばせた結果、プレイヤーはそれが自分のものであるかのように感じることになる。私はロールプレイや物語に関する“引き”を、ゲームの他の事柄に関する“引き” の中でうまくいったケースと同じやり方で作っている―プレイヤーが欲しがりそうなものを提示し、それを選ばせるのだ。


引き込んだら逃がすな

 “引き”を準備したら、次の段階に進もう:引っ掛けた相手を逃がさないことだ。プレイヤーが君のゲームのどこを面白いと思っているのかに気づいた時には常に、それを使ってプレイヤーをさらに引きこもう。私のキャンペーンでの最初の仕事は、各プレイヤーが選んだ背景のどれもが等しく重要で意味を持つようにすることとだった。ある背景に関するテーマやアイデアがゲームにまったく盛り込まれなければ、その背景を選んだこと自体が間違いだったということになる。これは絶対にやってはいけないことだ;そんなことをすれば、せっかく用意した“引き”が何の意味も意義も持たなくなってしまう。そもそも、PCは自分の背景を“再訓練”することはできないのだから! だが同時に、D&Dというゲームは各PCがバランスよく共演する場でもある。すべてのセッションにおいて、すべてのネタを使わなければならないなどという法はない―おいしいネタは、最も効果を発揮する瞬間まで取っておこう。
 たとえば、“呪われし者”のキャラクターが一度も声を聞かないのであれば、この背景は馬鹿らしく非生産的なものになってしまう。だが、正反対もまたよくない。君は毎回のセッションを、謎の声がああしろこうしろと命令を与えるシーンから始めようとは思わないだろう。そういったものは適切なタイミングでのみ使用し、それまではそのキャラクターの頭の中に留めておこう。数回のセッションを終えて、何か面白いことが起きたなら、私はゲームに謎の計画を導入してドラマと葛藤を作り出し、プレイヤーの関心を引くような選択肢を提示する。
 私の2つ目の仕事は、プレイヤーが“引き” に対してどのような反応を返したか、その“引き”をどのように用いて自分のキャラクターを肉付けし、行動の判断材料にしたのか、といったことを観察することだ。私が提示した背景に細かな設定が欠けているのにはきちんとした理由がある―私は、それぞれのプレイヤーがその物語に対してどのように関与し、どんな物語を織り上げていくのかを見たいのだ。“呪われし者”のプレイヤーは、その声がどのように自分を導いてきたかという過去の設定を作ってきたので、私はそれを参考にして、将来その声が話しかけてくる時も同じような演出を行なうことができる。


DM実践講座:マインド・フレイヤーの攻撃

 主人公たちがマインド・フレイヤーと戦うアドベンチャーの冒頭で、君は各プレイヤーに新しいキャラクターを渡して、「これから別キャラクターでの幕間をやってもらいます」と言う。キャラクターたちは辺境の前哨拠点を守る兵である。兵にはそれぞれ名前をつけておくこと。6人のキャラクターのうち半数は、同じ目的に向けて働いており、そのため自然と互いにやりとりをすることになる。一晩中サイコロ遊びをした結果、コンラッド、アルドフリッド、エリスの3人はイムリック、オスウィン、ヘンギストの3人に借りを作った。そして負け分をなんとか無かったことにしてもらえないかと思っている。
 プレイヤーたちが、この一時的キャラクターのロールプレイを、“そのつもりになって、それっぽく”できるようになったところで、君は前哨拠点に対するマインド・フレイヤーの攻撃の恐るべき結果を説明する。各自の一時的キャラクターが攻撃にどう反応するかの描写はプレイヤーに任せるが、結果を判定するのにサイコロやルールは用いない。哀れな兵士たちに希望はない。説得力ある対抗策を論じていたキャラクター2人が一番長く生き残る。マインド・フレイヤーのかしら、カルダグクは(君はこの者をいかにも悪そうに演じる)、最後に生き残った2人を尋問し、もてあそぶ。彼が最後の2人まで殺した頃には、プレイヤーたちはカルダグクを憎み、彼の倒れるところを見たいと思ってくれるだろう―彼らのPCはカルダグクの噂を聞いたことすらなくとも。

カットシーン

 ゲーム中にキャラクター間のやりとりのシーンを加えるには、カットシーンを用いるとよい。カットシーンというのは、DMがプレイヤーたちのために特別にこしらえたシーンで、プレイヤーたちはそこで劇的な状況に対応することになる。


カットシーンの種類

 カットシーンが物語の中で果す役割は複数ある。


第三者視点での予告編

 これはつまり、プレイヤーが操るNPCたちが、自分たちのPCにこれから起きるできごとを予告するというシーンである。“第三者視点での予告編”を使えば、普通ならPCたちが酒場で集まるところから始まるはずのセッションに、より刺激的なスタートを提供できる。


君のプレイヤー達は何を求めているのか?

 プレイヤー達が何をゲームで楽しんでいるか、いったんそれを知ってしまえば君のプレイヤー達が喜ぶ冒険や遭遇を作るのは簡単になるだろう。プレイグループの喜ぶものを完璧に備えたセッションを行なえるなら、プレイヤー達はきっと楽しめる。さらに君はゲームの準備をより着実に、不測の事態の起こる率が少ないようにできる。なぜなら、君はプレイヤー達が心惹かれる要素が何であるか、そして彼らが避ける“引き”や遭遇がいかなるものであるかを熟知しているから、その分セッションの準備をより早くより簡単にできるのである。
 何が嫌いで何が好きかを知るために、プレイグループのメンバーに尋ねてみよう。プレイヤーとキャラクターへアンケートを行なうことで情報が得られるハズだ。君は、プレイヤー達のゲーム的嗜好について何が知りたいだろう? リストを書き出してみよう。君のグループの好みが都市や野外、都会、そのどれかを好むとして、それは君のキャンペーン計画に影響するだろうか? 彼らの好むゲームの見せ場、戦闘、遭遇の導入についてはどうだろう? その情報がわかれば、将来のセッションで彼らを大興奮させるすごいアイデアを思いつくかも知れない。
 いったん君がプレイグループについて知りたいことを詳しく記したリストを書き上げたなら、それぞれを質疑に変えて調査に出そう。調査の際には、キャラクター達の望むこと、夢、更にはそのキャラクターの最終目標に関係したこと何でも使おう。各プレイヤーにはこれらの問いについて、そのキャラクターの視点から解答して貰おう。彼らの対応がよりおもしろくなるよう、DMである君がロールプレイをしてみるのもいい。さもなくばプレイヤー達はこのアンケートを雑用と考えるかも知れないからだ。プレイヤーの好みや経験についての質問は、別にプレイヤー用調査として行なおう。