本書の特徴として、まずPCやNPCの動機設定の部分がていねいであり、PCとNPC、PCとPCを結びつける方法が豊富です。戦争体験の共有、それに基づく帰属意識などです。特に軍事組織、新聞社、大学、諜報機関といった組織をパーティ・パトロン(冒険者パーティ全体の後援者)にするルールはパーティに「生存と宝探し以外の目的」を与え、プレイヤーに社会の存在を意識付けて近代っぽい感じを出せます。付属アドベンチャーでも最初に依頼主とPCとの関係を設定することになっています。
次に、本書にはエベロン世界の多くの組織や場所についてDMにアイデアを提供するための表が収められています。そしてこれらの表はアドベンチャー作成時/進行中のどちらにも役に立ちます。たとえば『謎の旅客』表はライトニング・レイルの立往生から始まるアドベンチャーを組むのにも役立ちますし、アドベンチャー中にPCたちがライトニング・レイルに乗りこんだ時の味付けにも使えます。
総じて「かめばかむほど味が出る」つくりになっている気がします。
文:桂令夫